SSブログ

様々な監査手法①定期監視活動(20180501) [5-監査事例]

「個別監査(業務監査)」は、最も一般的な監査手法です。事業所を対象として、年間計画に基づき、スケジュール化し、段取りを踏んで丁寧に行う事で、高い監査結果を得られます。しかし、監査リスクを考慮した包括的監査になりがちで、労力と時間の負担も大きくなります。

しかし、経営トップ(代表理事)からは、日々動いている組織・事業に対して、内部監査からタイムリーでより効果的な改善提案を期待される場面もあります。計画的な業務監査は「静態」監査(監査日の状態に限定される)であり、トップの期待に応えられないこともあります。

そこで、監査の限界とトップの期待に応えるため、監査の対象や深度を考慮した、様々な監査手法を「監査フレーム」に組み入れる必要があります。

様々な生協で、自組織にフィットした手法で監査は実施されていると思いますが、何かのヒントになればと、これまで実施した特徴的な手法を紹介いたします。

 

(1)定点観測監査(定期監視活動)

「往査」では、「静態」(往査日における状態)での監査結果に留まるために、監査リスクが生じる側面があります。毎日の業務の積み上げによる成果や日次・週次・月次の変化、季節変動など、推移変化を捉えることで、対象や領域が抱える問題点を炙り出す事ができます。

 

方法としては、人事部門や経理・管理部門が管理しているデータを入手し、推移をまとめ、傾向分析を行う事でした。数か月のスパンで動向を把握することが必要な作業です。あるいは、前年・前前年の同時期の比較も行う事もあります。

 

私がこの手法で行ったのは、未収金管理・レジ誤差管理・労働時間管理等でした。

 

①「宅配事業の供給未収金管理」

供給未収金額が著しい状態(億単位)にある事を総代会で指摘されたことが発端でしたが、構造を調べてみると、日常的な監視システムがほとんど機能していないことが判りました。数値の把握は経理部で行っているものの、削減に向けた対策は未着手の状態でした。

 

宅配センターごとの月次の未収金発生件数と金額、督促移行件数と金額を追っていくと、特定のセンターで平均値より高い発生率にあることや、特定の期間で未収金が大幅に増加する事等、特異な実態が浮かび上がってきます。

こうした事態を発見した際に、発生センターへ「原因と対策・改善に関する質問票」を送付し、回答を得る事に取り組みました。

中には、センター長はこうした事態に全く気付いていないケースがあり、センター内部の管理体制が脆弱であることが判ることがありました。

また、本部部署に対しても、注意喚起を行うとともに、未収金発生のメカニズムの解明と対策強化を要請する事とし、生協全体として供給未収金の管理システムが順次構築されることになりました。

 

最終的には、月次の未収金発生件数は3000件レベル(17万件請求に対して)にとどめることができ、督促期限切れ(いわゆる回収不能に近い状態)は100件レベルとなり、監視当初の3分の1以下まで減少できました。結果だけでなく、月次の発生を監視する部署も設置され、未収金発生の初期対応が強まった事と督促移行前の対応が進んだことなどの仕組みが強化され、年度決算における「貸倒引当金」も当初の3分の1以下まで縮減され、経営上の効果も見られました。

 

②店舗レジ管理(レジ誤差)

レジ誤差に関しても同様に、毎月のレジ記録(集計システム)を抜き出し、レジ番号ごとの推移を分析することを続けました。異常値が発見された場合、前述と同様に、発生店舗・店長宛てに「原因と対策・改善に関する質問票」を送付し、回答を得る事に取り組みました。

当初は「現金授受の段階のヒューマンエラー」が主要因であるとしていた店長や本部も、特定の店舗で発生率が高い事や、特定曜日・期間に多い事などの実態を把握し、状況を提供することで、発生要因の深堀が進み、現場における「誤差への注意喚起」も強まりました。

特に、新人アルバイト採用の多い春先の誤差発生率が高い事から、チェッカー教育の仕組みの見直しが進みました。また、ヒューマンエラーの要因分析が進められ、現金授受の手順の見直しも行われました。最終的に、自動釣札レジの導入へ繋がりましたし、セミセルフレジの導入にも進みました。

恥ずかしい話ですが、監視を始めて、レジアルバイトによる不正も発見されてしまいました。発生率や発生傾向(曜日・時間)を丹念に見ていくことで、異常な動きを察知することは重要です。

「犯罪者を作らない」組織作りも社会的な要請です。内部監査も貢献出来ることはあります。

 

「福祉事業未収金管理」

福祉事業は保険請求制度を基本にしており、請求・審査・入金の段階があり、概ね2ヶ月程度の「未収金」が計上されることになります。

国保連・個人・行政他の3種類の未収金が計上されており、その管理は福祉事業現場と経理部門とで常に点検しておくことが必要です。

福祉事業部門の監査でも触れましたが、この管理に関して、不具合がある事を会計監査で指摘されたため、プロセスの整理と再構築に関しては、内部監査もアドバイザリーとして関与しました。

それ以降、プロセスが問題なく運用されているかを点検するために、経理部門と福祉事業部門から、毎月の事業高計上と未収金残高データを入手し、事業所・行政単位で推移分析を行い、異常値を発見するという作業を行いました。

また、新たに、個人未収金の回収不能という事態が浮かび上がってきました。高齢者世帯の経済力の問題、「パラサイト世帯」の高齢化などの社会問題が背景にあり、宅配未収金とは別の問題が存在していて、事業所単位ではなかなか解決できない事態がある事も判ってきました。

 

本来、こうした取り組みは、事業本部や管理部門が2次防衛ラインとして機能すべきでしょう。ですが、そういう指摘や要請をしても、なかなかすぐには変わらない。それならば、具体的な事象をもって迫ることで、システム改善を促すことも内部監査の役割ではないかと思います。

 

現状を把握し、推移・動向を分析し、表面上では見えない真因に辿り着くこと。そして、具体的な改善策を提案し、執行部門へのアドバイスへつなげる事。内部監査にしかできない重要なプロセスではないでしょうか?

 


nice!(1)  コメント(0) 

様々な監査手法②店舗点検活動(20180502) [5-監査事例]

もう少し、監査手法のバリエーションを紹介しましょう。

 

②店舗点検活動

 これは、店舗事業部門監査の予備調査に位置づけて既に説明しましたが、もともとは、内部監査交流会の中で、隣のG生協で「品質管理活動」として実践されていた内容を学ぶ機会がありました。

 内部監査の領域がどうか悩んだ部分はありますが、使い方によっては有効ではないかと考え、取り組むことにしたものです。

 

 「店舗の売り場は業務の結果が現れる場所」です。

 企画作り・売り場作りの計画をスタートとし、発注・仕入・加工・点検・陳列の工程で売り場が作られます。そして、日々の供給状況を監視・分析し、手直し・改善されていくことで、素晴らしい売り場が維持されます。

 

 いわゆる「PDCAサイクル」の結果が現れる場所であり、組合員・来店者へのサービス品質そのものであるわけです。と同時に、食品衛生法・表示法などの法令順守が具現化する場所でもあります。

 

 そう考えると、定期業務監査で、帳票点検や店長ヒアリングを行うよりも、売り場の実態をしっかり把握することの方が、有意義な業務監査結果を導けると言えます。

 

 最初に、私が取り組んだのは、年末迎春供給前の時期(12月初旬)でした。売場は大きく転換し、イレギュラーな品揃えが増加し、温度管理・品質管理に最も注意を払う必要がある時期だからです。

 

 点検に当たっては、「利用者目線」を大事にしました。

 

 自分自身は職員であるため、小さな不備があってもある程度理解しようと努力します。しかし、利用者(来店者)はそうではありません。ちょっとした判りにくさでも、購買意欲の低下につながります。不安要素があれば手が出ません。不愉快な思いをすれば、二度と来店されないかもしれません。そういう「来店者の目線」をもって、売り場点検を行う事にしました。

 

 点検したのは、POP・プライスカードをベースに、商品表示と日付でした。

 また、日配品や水産・冷食など温度管理を要する売り場では、温度管理状態(記録)も点検しました。

 衛生管理状態を見るため、売り場の隅々の清掃もチェックします。バックヤードや加工場も点検しました。

 

 すると、残念ながら、POPやプライスカードのミスや日付管理上のミス(期限切れ)、温度管理ミスなど、多数の問題が発見されました。

 

 これらは、全て、写真に収めるとともに、問題のある商品を売場から撤去、売り場管理者への問合せを行いました。また、結果は「点検報告書」にまとめ、翌日には店長へ提出しました。

 

 初めての点検結果は、店長や事業本部にとっては驚きだったと思います。

 日常業務では適切に実施しているはず、来店者から特に意見や苦情を聞いていない等、自分たちの業務を客観的にみることができない為、概ね良好と理解していたからです。しかし、結果は惨憺たるものでした。期限切れ商品の供給が発見されたり、プライスカードが明らかに間違ったものがあったり、法令基準温度を満たしていない冷蔵冷凍ケースがあったり、ほとんどの店舗で、正常な売り場管理ができているとはいいがたい状態だったのです。

 発見された問題事象は、すぐに是正(手直し)されましたが、残念ながら、根本原因には至らず、その後年2回(夏・冬)、同様の点検活動を行いましたが、店舗全体の指摘数は減少とはなりませんでした。

 

 ただし、店舗単位では大幅に改善したところもありました。

 そこでは、職員・パート・アルバイト全員で、売り場点検活動をルーチン化し、担当外の売り場を分担し、相互チェック体制で臨んでいました。

 また、他の店舗では、店長による定期点検評価(売り場担当評価)を行う活動を組み込み、常に緊張感をもって売場管理を行うように意識改革に取り組まれていました。

 また、バックヤード在庫の大幅削減に取り組むことで日付管理の改善に取り組んだ店舗もありました。

 

 一方で、指摘事項が増加した店舗もありました。

 因果関係としては、来店者数の予想以上の減少による不良在庫の増加やパート・アルバイトの離職による体制不足といったものが背因として考えられました。こうした店舗に対して事業本部からのマネジメント指導・支援が不十分な事も問題でした。

 

 「店舗の売り場は業務の結果が現れる場所」と考えると、「問題事象はマネジメント不全の結果」あり、是正(手直し)だけでは不十分です。

 

 なぜ、そうした問題事象が生まれたのか、どのプロセスに問題があるのか、監視・モニタリングは機能しているのか等、探っていかないと、再発します。

 当初は、売り場点検活動は単独で実施していましたが、後年は、点検活動の結果を定期業務監査の予備調査に位置づけ、問題事象が多い店舗は「リスク重点対策店舗」と位置づけ、定期業務監査も売場管理に重点を置くようにし、真因追及と有効な改善策の提案につなげるようにしたのです。

 


nice!(1)  コメント(0) 

様々な監査手法③内部統制自己評価を用いた監査(20180503) [5-監査事例]

「内部統制自己評価を用いた監査」は、特殊な事情で実施したものですが、アドバイザリー機能の一つとしてみた場合、ある程度有効だと思っておりますので、紹介しましょう。

 

大規模宅配センターが新設され、2つのセンターが統合され、新体制で運営が始まった段階で、トップから、新センターのマネジメント強化に関するアドバイザリーの指示がありました。

当該センターの定期業務監査は、半年後の予定でしたので、何か別の方法でと考えてみました。

まず、2つのセンターが統合されることで、どのような問題が発生するかを考えました。

当然、二人いたセンター長のうち、どちらかが長に残ります。副長も4人から二人へ減員されます。マネジメントラインが大きく変わることは明白です。マネジメントラインの変更は、運営手法やルールも含め、相容れない要素を多分に含むことになります。混乱や不満は当然高まるはずです。これは、不正の動機に繋がり、不正リスクが高まることが予測されます。

業務プロセスでは、それぞれのセンターの規模の違いで、職務分担の違いがあるために、統合により、抜け落ちや重複が発生することも予測されます。事故やミスの発生リスクは高まります。

また、配属される職員数も、センター全体では、100人を超え、委託配送業者を含めるとさらに大人数のセンターとなるために、日常コミュニケーションの欠如やハラスメントのリスクも高まることが予測されます。

何より重要なのは、センター長・副長・グループ長等の運営管理メンバーが、何処までリスク認識を持ってマネジメントに臨もうとしているかだと考えました。

そのための手法として、「CSA(コントロール・セルフ・アセスメント)」はどうかと考えました。

 いきなり、小難しい内容ではなく、運営管理メンバーが自らの問題と捉えて参加できるよう、できるだけ平易な内容にすべきだと考えました。

 以下が「進め方」として提示したものです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  1.  監査主旨説明(目的・進行・結果対応) 10

    「専務懸念事項」であること。-運営上の問題が起きていないか(可能性も含め)。旧センターの運営ルールとの違いから、「不平不満」が発生していないか。

    「不正のトライアングル」

l  動機(不平不満・自己利益・劣悪な労働環境・人間関係)

l  機会(管理不備・統制不備・監視不備・マネジメント不在)

l  正当化(自分だけじゃない・他にもやっている人がいる・上司が悪い)

    ハラスメント問題(パワハラ・セクハラ・いじめ等)

    業務の効率性・有効性-業務課題の適正分担・能力発揮・目的の明確化等が管理者によって為されているか(経営者のコミットメント)

  今回の監査では、「適正なセンター運営」が出来ているかどうか、アシュアランス(保証)とアドバイザリー(助言)を行うのが目的。

  不正摘発とか管理者評価を行うのが目的ではありません。‐専務懸念の払拭‐

   2.  直感テスト実施 5

  30問の直感テストを各自記入-一旦回収して、初期値として反映する。

  結果の公表-直感レベルでのセンターの運営課題の整理<重点リスク評価>

 

   3.  監査:実査 80

  直感テスト項目(30)に沿って実査

4.  まとめ 15

  監査結論を導き出すための振り返り・話し合い

   5.  監査所見と手続確認 10

  本日の監査結果を「所見」として整理。指摘事項について是正・改善報告書の提出を求めます。尚、監査結果は、月次の監査報告会で、専務へ報告し、必要に応じて事業部門統括へも報告します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

肝になっているのは「30問の直感テスト」です。

 

≪実際のテスト≫

 

区分

項目

設問

 
 

1

目標管理

方針・計画

全体方針は周知されていますか?

 

予算

予算達成に向けた実行計画は策定されていますか?

 

個別目標

チーム(エリア)ごとの目標や課題は明確に示されていますか?

 

個人目標

個人ごとの業務目標は示されていますか?(面談実施評価)

 

月・週単位

週次・月次の具体的な目標は示されていますか?

 

2

マネジメント

運営ルール

センターの運営に関して、明示されたルールがありますか?

 

職場会議

職場会議は定期開催され、積極的な参加で運営されていますか?

 

日報・週報

日次や週次の業務報告は、丁寧に作成され、上長に提出されていますか?

 

コミュニケーション

部下からの相談は積極的に受けていますか?

 

ケア

上長は部下に有効な指導・支援をしていますか?

 

3

管理業務

商品管理

お誘いサンプル・誤欠配品・追加発注品の管理は適切にできていますか?

 

現金管理

小口現金はルール通り管理・運用されていますか。(出納責任者と管理者の二重チェック)

 

鍵管理

施設・金庫・トラックの鍵類は毎日点検していますか?〈預かりの鍵も含めて)

 

施設管理

防犯防火対策はできていますか?(施設点検表による点検運用はどうか)

 

申請決済

ルールに沿って、申請・決済(押印)はされていますか?

 

4

労務管理

契約書類

定時職員全員の労働契約は期限内に結びましたか?(更新内容の適切さ)

 

タイムカード

出退勤時のカード運用は適切に行われていますか?(片打刻の有無)

 

残業時間

残業時間は申請と認定ルール、およびタイムカード打刻に即して運用していますか?

 

安全衛生

労働安全衛生委員会は定期開催し、施設・業務の改善策が取られていますか?

 

業務改善

時間短縮のための業務改善は取り組んでいますか?(成果もふくめ)

 

5

トラブルミス(不適合)発生改善

交通事故

事故発生時の処理と検討会、再発防止のための指導は適切にできていますか?

 

交通違反

交通違反撲滅のために安全運転教育をしっかり行っていますか?

 

業務ミス

業務上のミスは適切に報告され、処置と再発防止が取られていますか?

 

ハラスメント

セクハラ・パワハラ・いじめはありませんか?

 

労働災害

労災は適切に報告され、再発防止策は取られていますか?

 

6

センター固有の課題・項目

委託先

委託先との定期的な協議を実施し、目標達成のために共同体制はできていますか?

 

スタッフ

組合員活動や共済推進等、今年度新たに配属されたスタッフとの関係は良好ですか?

 

近隣

近隣住民からの苦情や申し出には適切に対処していますか?

 

他事業連携

店舗・福祉事業との連携は進んでいますか?

 

後方・連合

連合や事業本部・管理部門とは、必要な支援や情報提供が取れる関係にありますか?

 

 

8名の運営管理メンバーそれぞれに、03点満点の評価を入れてもらい、合計して平均値を算出して、点数の低い項目を重点にディスカッションを通じて、原因(真因)へ迫りました。そして、対策について議論し深め合いました。

実際の取り組みでは、予算管理と実行計画の問題、業務会議の開催内容の問題、労務管理の問題の3点が課題であると認識され、それぞれについて、改善方向を深めることができました。

監査終了後には、所見書と指摘事項を提示し、センター長から「是正・改善計画」も提出いただきました。是正改善計画はすぐに実行され、職場運営の改善が進んだと考えています。

監査評価(センター長からの評価)でも、「監査は心地よいものではありませんが、自センターの弱みや強みが改めて確認でき有意義なものでした。強みは伸ばし、弱みは改善し、適正なセンター運営に努力します。」との感想も出されました。

 なにより、この取り組みを通じ、グループリーダー(主任級)が運営に関して積極的に発言し、問題提起しており、いわゆるボトムアップ型のセンター運営を体感できたことは大きな成果だったと思います。当年度の予算は見事に超過達成し、労働時間短縮も進んでおり、運営改善・経営改善に一定寄与できたものと自負しております。

 

■「CSA」とは

CSAControl Self Assessment:統制自己評価とは、業務スタッフを監査手続に巻き込む手法。「効率のよい内部監査を行う」ことが可能となる。業務管理者と業務担当者に「ファシリテーション」を通じて特定の問題や業務プロセスについて議論し自己評価してもらう。

1995年にIIAInstitute of Internal Auditor:内部監査人協会) によって、「正式に文書化されたプロセスでビジネス機能に直接関与する経営者やワークチームが、稼働しているプロセスの有効性を判断し、そして、いくつかの(または全ての)ビジネス目的達成のチャンスがそれなりに保証されているかどうかを決定する。」というCSAの定義が与えられている。

■CSAの実施

CSAのファシリテーションは、議論のテーマと成果物を設定し、参加者の意見交換を成果物という目標に向かってまとめあげていく作業と言える。その、議論を目的の成果物へと集約させるまとめ役を「ファシリテータ」と言い、ファシリテータは、ファシリテーションを成功させる重要な役割を担ってる。

CSAでは、このファシリテーション以外にも業務担当者に幅広く自己評価の意見を聴取するチェックリスト(アンケート)もよく使用される。

Deloitte/デロイトトーマツHPより一部引用)


nice!(0)  コメント(0) 

内部監査 雑感(20180504) [6-雑感・いろいろ]

これまで掲載した記事の中で、皆さんが最も閲覧されたが「内部監査の立ち位置」の記事でした。

といっても、100にも満たない数ではありますが、それでも、継続してお読みいただいていることに感謝いたします。

 

内部監査部門の組織内の位置づけに変化はありましたでしょうか?

 

以前にも書きましたが、私が着任当初、内部監査の位置づけはかなり低いものでした。ISO(品質・環境)が、別にISO内部監査事務局が置かれていた事もあり、いわゆる内部統制領域の監査については、組織内ではほとんど認識されていませんでした。ISO監査についても、外部審査を合格するために必要という価値観が強く、かなり形式的な運用となっていました。

 

全国の内部監査交流会で、他の生協の皆さんと意見交流していると、生協によってかなり違いがあることが判りました。交流会では、多分に「トップの意識・認識に差があること」が課題という声を聴きました。「トップが内部監査の役割や重要性を正しく認識していない」という愚痴めいた発言も多かったように思います。

もちろん、「トップの意識・認識」は大きな要素だと思います。組織の統治・統制に関する考え方は、組織風土であり、生協の歴史的経過にも大きく影響します。また、生活協同組合という組織の特殊性にも起因しているとも思います。

 

しかし、様々なプロセスを持つ組織体である以上、それが統合された状態で、適正に運用されることは重要です。組合員への最大の奉仕を行うために、効率よく合理的に業務を遂行し、永続的経営を実現する事が、理事()に求められる役割です。それを保証するために、法定監査として監事監査や会計監査が実施されます。

内部監査は、組織内部にあって、理事の手足となって組織内部を監査し、業務の合理性・有効性を保証し、経営改善に寄与する役割を果たします。

 

こうした、組織運営の基本、内部統制の基本について、トップは認識されているはずですが、実態としては不十分と感じる場面は少なくありません。

だからと言って、嘆いていても何の解決にもなりません。

 

私自身、着任当初、どうすれば良いか悩んでいました。だからこそ、近隣生協の同じ立場の皆さんと交流を強め、ヒントを得たいと努力しました。そんな中で、それぞれの生協の実践内容を知り、「使える」と思ったことを貪欲に試しました。

これまでご紹介してきた、内部監査のガイドライン(指針)では、そうした近隣生協の皆さんの実践を取り入れ、自ら試し、有効だと感じたものを整理したものです。決して独自に生み出したものではありません。

 

トップの意識改革についても、同様です。他の生協で、トップとどのような関係を構築しようとしているかは大変勉強になりました。報告の在り方やその後の課題解決へのプロセスについても、近隣生協の取り組みが大いに参考になりました。

 

そうして、日々実践を積み上げて行く中で、トップの意識も少しずつ変わっていきました。

私の上司である専務理事は、当初、内部統制事務局とMS事務局と内部監査の役割の違いについては正しく認識されていませんでした。それでも、毎月、監査報告書を提出し、報告会で示唆いただき、徐々に、内部監査の立ち位置や役割、そして有効性について理解を深めていただけました。

 

前の項目で掲載した「CSA監査」では、専務理事から「センター運営に不安があるから優先的に監査を行って貰いたい」との指示がありました。そして、運営改善に向けてアドバイス(アドバイザリ)を行うように要請されるまでになったのです。

 

着任当初の状況からは大きく変わったことを実感し、さらに有効な監査に努力したいと思うようになりました。

 

これまでブログ記事では、ある程度、理論的な整理を中心に進めてきました。おそらく、お読みいただいてこられた皆さまには退屈な、判り切った内容も多かったのではないかと思います。理由は明快です。内部監査は独立的立場にあり、公正・公平を基本に、客観的証拠に基づき、理論的な正当性をもって監査結果を報告する事が重要で、そこには、余計な感情を挟むことは好ましくないからです。しかし、取り組むのは人間です。上司の期待によって、力の発揮も違ってきます。成果を評価されれば、一層努力しようと頑張ります。理屈ではないところに原動力がある事もしばしばです。

 

このブログを通じ、厳しい立場に置かれている、生協内部監査の皆さんにとって、何かの支えになる事を願ってきました。先進生協では、内部監査室が設置され、数人体制が確保されている羨ましいところもあります。しかし、圧倒的多くの生協では、一人体制や監事会事務局などの兼務体制で取り組まれているところが多く、独立的な立場さえも確保できていないところが多いのが実情でしょう。そしてまた、内部監査であるが故、組織内でのコミュニケーションが取りづらく、孤独感を感じておられる方も多いと思います。

 

そのために、全国レベルや地域単位で、内部監査担当者交流会や研究会を旺盛に開催し、日ごろの監査活動の交流を行われることを呼びかけたいと思います。実践交流の中には数多くのヒントやエネルギーにつながる情報があります。

 

生協を退職した身分でおこがましいかもしれませんが、生協組織には、他の会社組織にない「協同・連帯」という素敵な力があります。その力を発揮して、内部監査の地位向上、役割向上を一歩ずつ進めていかれることを期待しています。

また、そうした交流会や研究会開催の際には、ぜひ、私にもお声を掛けていただけることをお願いいたします。生協の外部におりますが、だからこそ、より客観的に、より自由に、アドバイスさせていただけるものと考えております。


nice!(0)  コメント(0) 

内部監査の品質管理プログラム(20180507) [2-内部監査実施指針]

皆さんが実施されている内部監査は、組織や経営者にとって、充分な結果を提供できる、監査品質を保持できているでしょうか?また、年々、改善向上する仕組みを持っているでしょうか?

 

内部監査も一つに業務プロセス・システムです。

システムである以上、PDCAサイクルをもって、絶えず品質向上に取り組むことが肝要です。

 

この点について、日本内部監査協会の「内部監査基準」では、第4章「内部監査の品質管理」で以下の様に示されています。

 

 第4章 内部監査の品質管理

 

第1節 品質管理プログラムの作成と保持

 

4.1.1 内部監査部門長は、内部監査の品質を合理的に保証し、その品質を継続的に改善していくために、品質管理プログラムを作成、保持し、適時に見直さなければならない。

 

4.1.2 品質管理プログラムは、内部監査部門および内部監査人が当協会の定める「倫理綱要」および「内部監査基準」を遵守していることを評価できるものでなければならない。

 

第2節 品質管理プログラムによる評価の実施

 

4.2.1 内部監査部門長は、品質管理プログラムに内部監査活動の有効性および効率性を持続的に監視する品質評価を含めなければならない。品質評価は内部評価および外部評価から成る。

 

4.2.2 内部評価は、以下の事項から構成されなければならない。なお、②に掲げる評価は、少なくとも年に1回、実施されなければならない。

 ① 内部監査部門の日常的業務に組み込まれた継続的モニタリング

 ②  定期的自己評価、または組織体内の内部監査の実施について十分な知識を有する内部監査部門以外の者によって実施される定期的評価

 

4.2.3 外部評価は、内部評価と比較して内部監査の品質をより客観的に評価する手段として有効であるため、組織体外部の適格かつ独立の者によって、少なくとも5年ごとに実施されなければならない。

 

第3節 品質管理プログラムによる評価結果の報告

 

4.3.1 内部監査部門長は、少なくとも年に1回、品質管理プログラムによる評価結果を最高経営者、取締役会および監査役(会)または監査委員会に報告しなければならない。

 

第4節 「基準に従って実施された」旨の記載

 

4.4.1 内部監査が、品質管理プログラムによる評価によって、「倫理綱要」および「内部監査基準」を遵守していると認められた場合には、内部監査に係る報告書において、「一般社団法人日本内部監査協会の定める『倫理綱要』および『内部監査基準』に従って内部監査が実施されている」旨を記載することができる。

 

第5節 基準から逸脱した場合の報告

 

4.5.1 内部監査部門長は、「倫理綱要」および「内部監査基準」から逸脱していると認められた事実が内部監査の監査範囲または監査結果に重要な影響を与える場合には、その逸脱事項とその影響および是正措置を最高経営者、取締役会および監査役(会)または監査委員会にすみやかに報告しなければならない。

 

 かなり、高度な事が要求されていますが、簡単に捉えれば、内部監査においても「PDCAサイクルを持った品質管理マネジメントを行う必要がある」という事です。

 

 内部監査室として、複数人以上の内部監査員を配置し、組織的な監査が実施されているところでは、内部監査室長(部門長)の主要な業務として成立できると思いますが、私の様に「一人体制」や「兼務体制」では、なかなか難しいものです。

 

 この点に関しては、内部監査協会の「品質評価ガイド」で以下の様な補足文章があります。

 

「品質評価ガイドP92-93抜粋」

 

第4章 小規模な内部監査部門の品質評価の推進

2008年のIIAの品質評価の進捗に関するグローバル調査に参加した内部監査部門のうち、日本では67%、その他の国でも53%が、内部監査要員5人以下の小規模な部門であった。小規模な内部監査部門にとっても、品質の維持・向上の推進は重要な課題であるが、内部監査要員1~2名の内部監査部門の品質は、内部監査人個人の専門性に依存するところが大きく、規模が多少大きくなり3~5人になっても、内部監査部門長や核になる内部監査人が異動・退職すれば、その内部監査部門の品質に重大な影響をもたらす場合が少なくない。

 

したがって小規模な内部監査部門の品質の維持・向上を推進するためには、まずは内部監査人の専門性をいかに向上させるかが鍵であることが多い。

(1)内部監査人の専門性

小規模な内部監査部門に限ったことではないが、内部監査人の専門性を向上させるには、まず、自己研鑽から始めることが肝要であり、日本内部監査協会ほかから多数発行されている書籍をその参考文献として使用することが推奨される。

また、OJT(On the Job Training)により、上司、先輩、同僚から訓練を受けることも、他の業務と同様に役立つ。更に内部監査部門の管理業務に、内部評価・継続的モニタリングを組み込むことにより、内部監査人の専門性を高める体系的な指導が可能になる。

しかし、小規模内部監査部門では、部内で内部監査に関する専門教育を行うことは、人材やノウハウが限定されるなどの理由から容易ではないと推測される。その対案として、日本内部監査協会の主催する内部監査の講習会・実務演習を活用することや、内部監査の専門資格取得にチャレンジすることが有効である。

また、協会の定例的な研究会に参加し、自ら積極的に内部監査人の友人・知人を作ることを推奨したい。同じ業種や規模の内部監査部門とネットワークを持っていればなお効果的である。もちろん内部監査人として秘密の保持に差し支えない範囲ではあるが、内部監査の進め方、テーマの選定方法、報告書のまとめ方、社長への説明方法などを相談できる相手ができれば、専門性を高めることにつながる。

こうした機会を活用しながら部門全体の内部監査人の専門性を維持・向上させることが大切である。

 

(2)品質評価の推進

専門性を備えた小規模な内部監査部門にとって品質評価への期待は大きい。

そこでまず、内部評価・定期的レビューに取り組むことが推奨される。内部評価・定期的レビューの評価者に選任された者は、評価の過程を通じて基準や実践要綱の理解が深まり、後に外部評価を受ける準備にもなる。

外部評価の費用については内部監査部門の規模にかかわらず関心があると思われるが、一般的に、規模が小さい内部監査部門ほど外部評価の費用の負担感は大きいと考える。

 

そこで品質評価で先行する北米でも外部評価の費用負担を勘案し、外部評価の簡易版である「自己評価と独立した検証」を選ぶ内部監査部門がある。2007年にIIA国際本部が実施した100件の外部評価のうち、約3分の1は、自己評価と独立した検証であった。

また、日本以外のその他の国では、外部評価を公認会計士事務所や内部監査のプロバイダーに依頼せずに、3つの独立した組織間でお互いに評価者を提供しピア・レビューを実施している例が約1割見られた。これは外部への支払費用を軽減するという意味で注目に値する。

日本ではフル外部評価の実施例は少なく、かつ自己評価と独立した検証の実施例も寡聞にして知らない。今後、小規模な内部監査部門の外部評価の推進には、自己評価と独立した検証やピア・レビューの取り組みを推進することが肝要である。

これらの様々な工夫により、コストを抑えた品質評価の選択肢が増えれば、小規模な内部監査部門での品質評価への取り組みが進むと考えられる。

 

少し長い文章ではありますが、要約すると、少人数監査部門では、内部評価と定期レビューに取り組むこと、そして、ピアレビュー(同業他社3社以上)の仕組みを導入し、監査品質の評価を受けることが有効だという事です。

 

私も、一人監査体制だったため、自分の実施している監査を評価し、問題点を発見し改善することはなかなか難しく、どうしても独りよがりになっているのではないかと考えがちでした。

 

克服のために、近隣生協との交流を通じ、監査結果の相互報告を通じ、所見や指摘事項・改善提案の内容に関して、意見を聞く機会を大事にしていました。そして、これをさらに発展させて、独自の品質評価プログラムを作成するところまで到達できましたので、次のところで具体的な内容をご紹介したいと思います。

 

補足になりますが、

ISO規格(品質・環境)認証では、外部審査機関によって、ISO内部監査については、ISO19011規格に基づき、監査プログラムの策定や実施管理、プログラム改善の取り組みについて評価を受けることになりますが、それも、ISO規格(品質と環境)の領域内に限定されるものです。

 

私も、都合5回、外部審査を受けましたが、あくまで、ISO/マネジメントシステムの有効性と適合性を確認するために、マネジメントシステムに組み込まれた「モニタリング機能」の一つとして、内部監査が機能しているかの判断のための審査であり、内部監査の内容評価ではなく、プロセス評価に留まっているため、品質向上につながる内容としては、充分とは思えませんでした。(外部審査機関の力量の問題も大きいと思いますので、他の生協では有効なところもあるでしょうから、私見の範囲としてください。誤解のないよう、お願いします。)


nice!(1)  コメント(0) 

小規模監査部門の品質評価(20180508) [2-内部監査実施指針]

小規模監査部門(1人体制や兼務体制等)を前提にした、監査品質プログラムについて、近隣生協との交流会で提案した内容をそのまま掲載します。

 

実行に移すことはできませんでしたが、交流会の中で議論し、部分的に実施する中で、ある程度、有効だと確認できましたので、今後の参考にしていただければと思います。

 (少し量が多いので2回に分けて掲載します。)

 

(1)考え方

l  内部監査の品質向上のために、品質管理プログラムを策定し、実施する。その評価結果は、直属する代表理事へ報告する。

l  品質管理プログラムは、品質評価を基礎に、評価結果に基づき継続的改善ができるものにする。品質評価にあたっては、内部評価と外部評価を活用する。

l  内部評価は、自己評価となり、客観性が保証できないため、監査対象部署からの評価(個別監査評価)を基礎資料に加えることが必要である。

l  外部評価は、自組織が委託する「監査法人」や近隣生協の内部監査(ピアレビュー)を評価者とすることが妥当である。

 

品質管理プログラムとして、日本内部監査協会から「ガイドライン」が提示されている。これを参考として実施する事が望ましいが、かなり高度な内容であり、組織的監査(複数人以上の監査員配置)を前提としており、少人数あるいは一人体制での適用は難しい。内部監査基準をベースにした、品質評価シートを提供しており、これをベースに内部評価・外部評価を実施する事を推奨する。

 

 

品質管理プログラムの概念

(1)品質評価の必要性

内部監査は、独立性と客観性を持ち、リスク・マネジメント、コントロール(内部統制)、ガバナンスの各プロセスの有効性を評価し、組織体の目標達成に貢献することを目指しており、組織体の任意の活動ではあるが、自律的な行動を求められる。そのために、品質評価が内部監査部門の品質を高める動機付けとなり、結果として、組織体の目標達成への更なる貢献が可能になる。

(2)品質評価のフレームワーク

このプログラムは、内部監査部門の基準等への適合性の評価、内部監査部門の効率性と有効性の評価、そして改善の機会を明らかにすることが可能なように設計される。体系的には、内部評価・継続的モニタリング、内部評価・定期的レビュー、外部評価から構成されている。

(3)内部評価・継続的モニタリング

内部評価・継続的モニタリングとは、内部監査部門の管理業務にモニタリング機能を体系的に組み込み、継続的に品質評価を行い、改善活動を行うことである。

(4)内部評価・定期的レビュー

内部評価・定期的レビューとは、組織体内の評価者が、IIAの品質評価マニュアル(以下、品質評価マニュアル)と本ガイドに沿って、内部監査部門の基準等への適合状況を定期的に判定することである。

(5)外部評価

外部評価とは、組織体外の適格にしてかつ独立した評価者により行われる評価であり、最低でも5年に一度実施することが求められている。外部評価には、フル外部評価と、自己評価と独立した検証の2つの方法がある。

(6)品質評価基準

品質評価の基準は、構成要素の一部として基準に含まれ、内部監査部門が遵守すべき項目として定められており、①品質のアシュアランスと改善のプログラム、②評価の実施要件、③内部評価、④外部評価、⑤報告、⑥基準への適合の表現の使用、⑦不適合の開示、の7つの要素から構成されている。

■補足事項―少人数監査部門における外部評価方法-ピアレビュー

ピア・レビューは外部評価を受けようとする3つ以上の独立した組織が、お互いに評価者を提供するものである。ピア・レビューは外部評価の費用を低減する。

 

1.内部監査の品質管理プログラム()

(1)目的

内部監査の品質評価は、品質評価を行うこと自体が目的ではなく、内部監査の品質評価を通じて、内部監査部門の品質を維持・向上させることを目的としている。

(2)品質評価の体系

品質のアシュアランスと改善のプログラムは、次の3種類の品質評価から構成されており、すべてを実施する必要がある。

①内部評価・継続的モニタリング

内部監査部門の日常の管理業務に組み込み、内部監査部門の管理者が継続的に品質評価を実施する。

具体的には、個別監査実施後、監査計画・実施状況・監査報告のレビューと、監査対象部署からの監査に関するフィードバックの受領と分析、規程や手続きの遵守状況などを検証し、発見事項をまとめ、改善を行うこととする。

②内部評価・定期レビュー

内部監査部門長に任命された部門内の評価者が実施するか、または内部監査部門以外に内部監査の実務の十分な知識を持つ者が組織体内にいれば、その者に実施させてもよい。年一度の頻度で実施する。

具体的には、内部監査基準・倫理要綱(IIA基準)や内部監査規程への適合性水準を評価するものであり、年に一度、内部監査のあらゆる側面を対象に評価し、まとめる事とする。(年度レビュー報告)

③外部評価

外部の適格にしてかつ独立した評価者を選任し、最低でも5年に一度、定期的に実施する。

具体的には、「自己評価と独立した検証」の手法を用い、内部監査基準・倫理要綱(IIA基準)や内部監査規程への適合性の評価や、内部監査の有効性や効率性の評価、内部監査のベストプラクティスを適用する改善の機会を明らかにするものとする。

「自己評価」では、IIA基準を基に策定したチェック票を用いた「簡易評価方式」を採用とし、「定期的レビュー」も基礎資料に含めるものとする。

「独立した検証」は、ピアレビュー方式とし、近隣生協の内部監査部門を評価人に選定し、「標準工程表」と「標準仕様書」を用いて実施するものとする。

(4)品質評価の活用

品質評価の結果は、内部監査部門の品質の維持・向上へ活かすことが重要である。

継続的モニタリング・定期レビュー・外部評価の中での発見事項は、内部監査のベストプラクティスを適用する機会と捉え、確実に是正・改善につなげる。

また、品質評価結果は、最高経営者へ報告され、監査品質のアシュアランスと改善プログラムが承認されることを確実にする。

(5)プログラム関連文書

○標準工程表

○標準仕様書・・実施計画書・評価実施要領、予備調査書、ワークシート、評価調書、評価書

 



 まず、第1段階として、品質管理プログラムの考え方や構造をまとめました。プロセス管理の基本である「PDCA」サイクルと、結果の報告のルールなどを定めています。

 できれば、内部監査規程の中に、品質管理に関する事項を記載しておくと確実でしょう。


 次のところで、具体的なやり方に関して、品質チェックシートなどを提示します。

 


nice!(1)  コメント(0) 

小規模監査部門の品質評価②(20180509) [2-内部監査実施指針]

 

 実際の品質評価の標準工程を整理してみました。

 大枠では、内部監査の標準工程と同様に、PDCAサイクルで設計しています。

 

標準工程表と仕様書一覧

 

フェーズ

作業内容

仕様書

0

工程確認

・評価人の選定と主任評価人の選出

・全体スケジュール策定

・予備調査書の策定の通知

⓪品質評価プログラム実施計画書

1

予備調査

監査部門(評価対象)への理解を進めるための■評価人による資料読み込み

・組織概況

・内部統制・マネジメントシステム・リスクマネジメント等の運用状況

・前年度監査報告書

①予備調査書

2

手順策定

■評価人による協議

・評価手続きの決定

・評価重点ポイントの策定

・評価シート内容の確認

・閲覧準備書類の洗い出し

②評価実施要領

・スケジュール

・評価シート

・閲覧準備書類一覧

3

現場調査

■実施

・評価シート項目に基づき、対象となる内部監査部門(内部監査人)へのヒアリングと関連帳票点検

・不備事項の深堀(真因追及)

③現地調査実施記録

・評価シート

・重要事項証憑

4

評価

■評価人による協議

・現地調査実施記録をもとに、評価調書の策定。

・評価人の評価一致を図るためのディスカッション

④評価調書

⑤評価管理プログラム評価書

5

結果報告

評価調書から導かれる「評価書」をもとに、対象の内部監査部門への報告と合意形成。

⑥エグゼクティブサマリー

 

〇評価シート()

評価に当たって使用する「評価シート」の例です。

内部監査基準の項目を基本に置いています。到達点(評価)は評価人に任せることとしました。単

なる点数評価ではなく、不備項目の発見に使用する事。重要なのは、不備項目に対して「真因追及」を行い、品質向上のための提案ができるようにくみ上げることです。

 

項目

設       問

評価

1章 
内部監査の本質 

Q1.内部監査の本質を正しく理解しているか?

 

2章 
独立性と
組織上の
位置づけ 

Q2.内部監査部門の独立性と客観性が保持されているか?

 

Q3.内部監査部門の組織上の位置づけは最高経営者直属で、監査報告の「ダブルレポーティングライン」は確保されているか?

 

Q4.内部監査規程は作成され、適時見直しされ、最高経営者での承認を受けているか?

 

3章 
内部監査人の
能力及び
正当な注意

5.内部監査人(部門担当)は必要な能力を有し、日常的に研鑽しているか?

 

6.内部監査人として「正当な注意」を払い、留意すべき9項目を理解しているか?

 

4章 
品質管理

7.「品質管理プログラム」が策定され、保持できているか?

 

8.品質管理プログラムには、自己評価(年1回の定期自己評価と継続的モニタリング)と外部評価(組織体外5年に一度)が組み込まれているか?

 

9.品質管理プログラムによる評価結果は最高経営者と監事に報告されているか?

 

5章 
内部監査
部門の運営

10.内部監査部門の中長期計画が策定されているか?

 

11.監査計画は、リスク評価に基づいて優先順位が決定されているか?

 

12.内部監査計画は最高経営者に報告され承認を受けているか?

 

13.監査計画を実施するために必要な人的資源・インフラ・資金は確保できているか?

 

14.監査計画策定に際して、監事・会計監査、その他の関連部署との調整はできているか?

 

Q15.監査結果は、最高責任者へ定期的に報告されているか?

 

6章 
内部監査の
対象の範囲

16.監査対象範囲は、経営諸活動全般となっているか?

 

17.ガバナンス・プロセスの有効性を評価し、改善に貢献しているか?

 

18.リスク・マネジメントの妥当性及び有効性を評価し、その改善に貢献しているか?

 

19.コントロールの妥当性及び有効性を評価するとともに、業務諸活動の合法性と合理性を評価し、効果的なコントロール手段を維持するよう貢献しているか?

 

第6章の解釈

20.監査範囲は、監査対象部署の「目標・運営体制・リスクマネジメント・統制及び法令順守」を適切に含んだものとなっているか?

 

7章 
個別の内部監査の
計画と実施

21.個別監査では、目標・範囲・時期・資源等を含む計画が策定され、部門長による承認がされているか?

 

22個別監査前に、予備調査を行っているか?
(経営情報・チェックリスト・ワークシート等作成、事前調書を作成)

 

23.監査にあたって、十分かつ正確・適切な監査証拠の取得と、評価と結論をえているか?

 

24.監査結論に至る過程を正確に調書として記録し保存・管理しているか?

 

8章 
内部監査の
報告と
フォローアップ

25.監査結果は、監査対処部署へ文書で報告し、指摘事項に関し適切な措置を講じる手続きが取られているか?

 

26.内部監査報告書の内容は実効性の高いものとなっているか?

 

27.監査によって得られた情報保護・秘匿事項は順守されているか?

 

28.アドバイザリー業務を行った場合、対象部署のニーズに応じたものとなっているか?

 

29.フォローアッププロセス(是正措置確認)は適切に実施されているか?

 

9章 
内部監査と
法定監査との関係

30.会計士・監事との連携(三様監査)はできているか?

 

 

(4)ピア・レビューの勧め

l  少人数の内部監査部門(1名~3名程度)では、監査員個人の専門性に依存するケースが多くまります。だからこそ、内部監査部門の品質評価は重要になるのですが、外部へ委託するにはコスト負担が大きすぎる問題があります。

l  そこで、自己評価と独立した検証方式SAIVSelf-Assessment with Independent Validationを採用することが有効だと考えます。

l  全国の生協では、地域単位の交流会が広がっていますし、事業連合単位での組織的な連帯・連携も進んでいます。この単位で、お互いに評価者を提供し、ピア・レビューを実施することを推奨します。事業連合単位での相互評価を行う事は、単協固有の課題だけでなく、事業連合単位の課題を発見できるという副産物も得られるとともに、スキルの交流や向上にも寄与できるとおもいます。

l  初めから、品質評価と考えず、まずは、それぞれが取り組んでいる監査の実態を交流することを通じ、問題を共有する関係になる事から取り組みましょう。

l  また、監査手順などもおそらく大きく違っている事も想定されるため、標準となる監査プログラムを持つ事が必要になるでしょう。私から提供している「内部監査指針」なども参考にしていただければ幸いです。

 

少し回りくどい記述も多いのですが、品質管理に関する概念やプロセスはご理解いただけるのではないでしょうか?特に、地域単位で交流会が広がる中、こうした品質管理の取り組みをキーワードにすることで、必然性が生まれ、切磋琢磨できる環境整備にもつながるはずです。

 

品質管理プログラムのご興味を持たれ、基本仕様書やチェック表等もご覧になりたい方がいらっしゃれば、原版をお送りいたしますので、メールいただければ幸いです。

メールアドレス:sadanobusirai@gmail.com

 


 


nice!(0)  コメント(0) 

内部監査 雑感(20180510) [6-雑感・いろいろ]

 221日から、生協内部監査について、ひとつの「指針」となるべく、記事を掲載してきました。

 お付き合いいただいた皆様にとっては、いかがだったでしょうか?

 何か、お役に立つことはあったでしょうか?

 

 退職して実質3ヶ月ほどが経過し、徐々に、生協職員だった記憶も薄れつつある中、それでも、内部監査について考える事ばかりです。おそらく、それは、もはや「体質」になっているのかもしれません。

 

 エピソードを一つ。

 

 先日、ある電気通信会社の契約変更手続きを行いました。フリーダイヤルで、オペレーターと1時間近くやり取りし、完了しました。それから数日経って、契約更改書面が送付されてきました。

 内容を確認すると、肝心な部分、契約コースの変更欄が、旧来コースの名称がそのまま記載されていました。明らかなミスです。そして、基本契約料なども旧来コースのまま記載されており、変更後かなり高額になるはずなのに、低料金のまま記載されているのです。

 すぐに、フリーダイヤルで連絡し、記載事項のミスを確認しました。

 その場では、受け付けたオペレーターは要領を得ず、結局、「後日、責任者から連絡を入れます」との返答となりました。

 そして、翌日、責任者からの電話連絡が入りました。

 手元にある契約更改書類を見ながら、今一度、説明を行ったのですが、どうも、責任者の手元には同様の書類がない様子で、こちらの言っている事を正しく理解できないようでした。

 結局、再確認して電話をしますとの事で、一旦保留となり、4時間後にまた電話がありました。

そこでようやく事態が判明したようで、お詫びと正しい契約書の再発行を行うとの結果となりました。ただ、その責任者は、幾度も「契約書発行システムのエラーですので、契約は正しくなっています」を繰り返しており、「システムエラーの修正は親会社に要請するほかない」と言い訳じみたことを言っているのが気になりました。

 ちょっと長くなりましたが、何が言いたいかというと、通信会社としての業務管理のシステムへ大いに不信感を持ったという事です。

 

 ヒューマンエラーは避けられない事です。しかし、その防止策として、発行する「契約更改書類」について点検する体制が取られていない問題が指摘されます。ISOで言えば「リリース前の点検」という項目にあたりますが、契約書は顧客との極めて重要な書類です。これに誤りがあれば、重大な事業損失につながりかねません。まず、この点が指摘事項でしょう。

 

 そして、その後の顧客対応におけるミスです。

 顧客からの苦情に対して「責任者が対応」という点は評価できますが、苦情に関する事実確認は充分に行われておらず、結果的に「苦情を軽く見ている」と受け止められても仕方ない状態にしている事です。いわゆる2次クレーム発生の状態です。苦情処理に関する業務プロセスが整備されていないのではないかと考えられます。

 

 それと、契約書発行のシステムエラーへの対処の問題です。

 この会社は、かなり大手通信会社で、おそらく、営業部門やオペレーター(顧客対応)部門は、委託か子会社化しているのではないかと思います。システム本体は親会社が構築し、委託先や営業部門などで運用していると思われますが、システムエラーを改善する手立てが構築できていないことは、深刻な問題です。

こうしたトラブルは親会社本体の信用問題につながるものであり、内部統制システムにおける「グループ管理体制」が問題と考えられるわけです。

 

実は、こうした遣り取りを、電話口で先方の「責任者」と1時間以上にわたって行ってしまいました。別に、相手を遣り込めるつもりはありませんし、決して「悪質なクレーマー」になるつもりもありませんが、「責任者」からは、受付時のヒューマンエラーの防止策の強化とクレーム対応における業務プロセスの見直しについて別途報告するとの返答を取り付けることになってしまい、電話を切ってから、かなり自己嫌悪に陥りました。

こんなふうに、日常生活においても、つい、内部監査的なものの見方をしてしまいがちで、自分でも、本当に、嫌になることがあります。

 

3月に、転居のため、生協脱退に付随して共済解約手続きについて、担当センターに妻が電話をしていましたが、まったく同じようなことが起きてしまったのです。

 

電話では、共済解約の連絡を行っていたのに、送付されてきた書類は、生協脱退書だけでした。

 

 再度電話すると、解約手続きは部署が違うから。共済部署から連絡を入れるとの事。それから、当日には連絡は入らず、翌日午後になってようやく連絡があり、解約書類を送付するとの事でした。ただ、解約手続書類が31日までに届かないと翌月分も引き落としになるとの事。こちらが最初に連絡したのは22日、共済部局から連絡が来たのは25日、書類が届いたのは29日でした。すぐに投函しないと届かないことになってしまいました。こんなことがあって良いのかと、妻は憤慨していました。

内部の連絡ミス、共済解約に関する案内不足(現場の理解ミス)等、プロセス管理上の問題が浮かんできます。前述の通信会社で起きている事に似た事象だと思いました。

余談ですが、妻は、「共済加入の時は親切すぎるくらいにいろいろと説明に来るし、書類作成の時も一つずつ丁寧な説明があったのに、解約となると結構冷たいのね。生協ってそんなところなの?」と嫌味を言われてしまいました。

共済目標達成のために営業努力で奮闘している現場を見ているだけに、妻の言葉は、心に突き刺さりました。契約件数やポイントといった目標達成に特化しすぎて、本来、「助け合い精神」を出発点にしてきた共済事業が、少して間違った方向へ向かっていないかと、考えてしまいました。


nice!(0)  コメント(0) 

お詫び [0-御挨拶]

転居に伴い、ネット環境の整備が遅れており、記事アップが当面の間できない状態になりました。


内部監査に関する考え方や手順など一通り掲載させていただきましたので、一旦、ここでブログの更新はやめさせていただきます。


3ヶ月近く、ご覧いただき、誠にありがとうございました。


生協の内部監査部門で奮闘されている皆さんにとって、何かの力になれたのであれば幸いです。


ありがとうございました。

nice!(0)  コメント(0)