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様々な監査手法①定期監視活動(20180501) [5-監査事例]

「個別監査(業務監査)」は、最も一般的な監査手法です。事業所を対象として、年間計画に基づき、スケジュール化し、段取りを踏んで丁寧に行う事で、高い監査結果を得られます。しかし、監査リスクを考慮した包括的監査になりがちで、労力と時間の負担も大きくなります。

しかし、経営トップ(代表理事)からは、日々動いている組織・事業に対して、内部監査からタイムリーでより効果的な改善提案を期待される場面もあります。計画的な業務監査は「静態」監査(監査日の状態に限定される)であり、トップの期待に応えられないこともあります。

そこで、監査の限界とトップの期待に応えるため、監査の対象や深度を考慮した、様々な監査手法を「監査フレーム」に組み入れる必要があります。

様々な生協で、自組織にフィットした手法で監査は実施されていると思いますが、何かのヒントになればと、これまで実施した特徴的な手法を紹介いたします。

 

(1)定点観測監査(定期監視活動)

「往査」では、「静態」(往査日における状態)での監査結果に留まるために、監査リスクが生じる側面があります。毎日の業務の積み上げによる成果や日次・週次・月次の変化、季節変動など、推移変化を捉えることで、対象や領域が抱える問題点を炙り出す事ができます。

 

方法としては、人事部門や経理・管理部門が管理しているデータを入手し、推移をまとめ、傾向分析を行う事でした。数か月のスパンで動向を把握することが必要な作業です。あるいは、前年・前前年の同時期の比較も行う事もあります。

 

私がこの手法で行ったのは、未収金管理・レジ誤差管理・労働時間管理等でした。

 

①「宅配事業の供給未収金管理」

供給未収金額が著しい状態(億単位)にある事を総代会で指摘されたことが発端でしたが、構造を調べてみると、日常的な監視システムがほとんど機能していないことが判りました。数値の把握は経理部で行っているものの、削減に向けた対策は未着手の状態でした。

 

宅配センターごとの月次の未収金発生件数と金額、督促移行件数と金額を追っていくと、特定のセンターで平均値より高い発生率にあることや、特定の期間で未収金が大幅に増加する事等、特異な実態が浮かび上がってきます。

こうした事態を発見した際に、発生センターへ「原因と対策・改善に関する質問票」を送付し、回答を得る事に取り組みました。

中には、センター長はこうした事態に全く気付いていないケースがあり、センター内部の管理体制が脆弱であることが判ることがありました。

また、本部部署に対しても、注意喚起を行うとともに、未収金発生のメカニズムの解明と対策強化を要請する事とし、生協全体として供給未収金の管理システムが順次構築されることになりました。

 

最終的には、月次の未収金発生件数は3000件レベル(17万件請求に対して)にとどめることができ、督促期限切れ(いわゆる回収不能に近い状態)は100件レベルとなり、監視当初の3分の1以下まで減少できました。結果だけでなく、月次の発生を監視する部署も設置され、未収金発生の初期対応が強まった事と督促移行前の対応が進んだことなどの仕組みが強化され、年度決算における「貸倒引当金」も当初の3分の1以下まで縮減され、経営上の効果も見られました。

 

②店舗レジ管理(レジ誤差)

レジ誤差に関しても同様に、毎月のレジ記録(集計システム)を抜き出し、レジ番号ごとの推移を分析することを続けました。異常値が発見された場合、前述と同様に、発生店舗・店長宛てに「原因と対策・改善に関する質問票」を送付し、回答を得る事に取り組みました。

当初は「現金授受の段階のヒューマンエラー」が主要因であるとしていた店長や本部も、特定の店舗で発生率が高い事や、特定曜日・期間に多い事などの実態を把握し、状況を提供することで、発生要因の深堀が進み、現場における「誤差への注意喚起」も強まりました。

特に、新人アルバイト採用の多い春先の誤差発生率が高い事から、チェッカー教育の仕組みの見直しが進みました。また、ヒューマンエラーの要因分析が進められ、現金授受の手順の見直しも行われました。最終的に、自動釣札レジの導入へ繋がりましたし、セミセルフレジの導入にも進みました。

恥ずかしい話ですが、監視を始めて、レジアルバイトによる不正も発見されてしまいました。発生率や発生傾向(曜日・時間)を丹念に見ていくことで、異常な動きを察知することは重要です。

「犯罪者を作らない」組織作りも社会的な要請です。内部監査も貢献出来ることはあります。

 

「福祉事業未収金管理」

福祉事業は保険請求制度を基本にしており、請求・審査・入金の段階があり、概ね2ヶ月程度の「未収金」が計上されることになります。

国保連・個人・行政他の3種類の未収金が計上されており、その管理は福祉事業現場と経理部門とで常に点検しておくことが必要です。

福祉事業部門の監査でも触れましたが、この管理に関して、不具合がある事を会計監査で指摘されたため、プロセスの整理と再構築に関しては、内部監査もアドバイザリーとして関与しました。

それ以降、プロセスが問題なく運用されているかを点検するために、経理部門と福祉事業部門から、毎月の事業高計上と未収金残高データを入手し、事業所・行政単位で推移分析を行い、異常値を発見するという作業を行いました。

また、新たに、個人未収金の回収不能という事態が浮かび上がってきました。高齢者世帯の経済力の問題、「パラサイト世帯」の高齢化などの社会問題が背景にあり、宅配未収金とは別の問題が存在していて、事業所単位ではなかなか解決できない事態がある事も判ってきました。

 

本来、こうした取り組みは、事業本部や管理部門が2次防衛ラインとして機能すべきでしょう。ですが、そういう指摘や要請をしても、なかなかすぐには変わらない。それならば、具体的な事象をもって迫ることで、システム改善を促すことも内部監査の役割ではないかと思います。

 

現状を把握し、推移・動向を分析し、表面上では見えない真因に辿り着くこと。そして、具体的な改善策を提案し、執行部門へのアドバイスへつなげる事。内部監査にしかできない重要なプロセスではないでしょうか?

 


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