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業務マニュアルと業務プロセス⑥災害対策マニュアルその2 [7-マネジメント]

さて、基本が定まったら、あとは、業務プロセスの組み立て方と同じです。

ヒト・モノ・カネ・情報のエレメントの配分です。

「人」とは組織・指揮命令系統を含めた人材・人的資源。

災害時の人的資源は、通常時とは異なります。

消防訓練などで「防火管理体制表」を作成しているケースがありますが、いかがでしょう?有効に機能すると思っていますか?隊長、通報係・消火班・誘導係とか現状の体制で割り振っているケースが、災害時に有効に機能するでしょうか?隊長役となっているのは、たいていが事業所の所長・管理職ですが、常に在席しているとは限りません。

災害時の組織体制・指揮命令系統となると更に難しいかもしれません。だからこそ、有効な組織体制と指揮命令系統を明確にし、全ての従業員が理解しておく必要があります。

例えば、「風水害」で考えると、準備期間(注意報発生から警報・避難指示)がある程度あるため、基本の組織体制・指揮命令系統を確認し、現状そこにいる人員で役割分担をするという方法が望ましいでしょう。「震災」だと、発生後に、事業所に集まれる人員を確認して、役割を割り振ることで対応する事を決めておくことでしょう。

重要なのは、少人数であっても、最低限の機能を発揮し目的を達成できる組織体制を確保する事だと思います。また、人的資源は「人数」ではなく、スキル(能力)も重要な指標となります。現状の対応力を評価し、訓練を繰り返す事で向上させることが可能です。

今、作成している「災害時対応マニュアル」では、「風水害」では、管理役・連絡役・情報収集役の3つを置きました。「震災」でも基本は同じだと考えています。


「モノ」とは、災害時マニュアルを実施するために必要なモノを明確にすることです。
「風水害時」では、災害発生前と発生後の段階で必要となるモノをまず指定します。

私の事業所は、「要支援者への避難連絡(勧奨)」が大きな役割になります。そのため、発生前には、「要支援者の名簿」「電話」「記録簿」等が重要なモノに当たります。

災害発生後には、事業継続のため、非常時使用可能なインフラや機器類。非常用電源とか、万一の時に喪失しないデータの保管場所、通信機器等があります。ただ、私の事業所は「要支援者への対応」も求められますので、移動手段(自動車・自転車やバイク等)は重要なモノになります。

近年は、「帰宅困難者」も想定して寝泊まりできる資材や場所なども含めるところもありますし、食料や水と言ったもののローリングストックは常識となっていますね。

こうしたものを、マニュアルとともに一覧表にまとめておくことが大事です。


「カネ」は資金力。いざという時に経営が持ちこたえられる資金力を確保しておくことが最優先ですが、事業所単位でも、重要です。先に示した「モノ」が潤沢にあれば良いですが、長期に及ぶ場合買い足しも必要になるでしょう。その場合の、現金の調達方法は明確にしておくと良いでしょう。


「情報」は、災害時ほど重要な事はありません。内部の情報も極めて重要ですが、それ以上に、どこでどのような災害が発生しているのか、救助や避難態勢はどうなっているのか、日常よりもさらに外部情報は重要になってきます。

東日本大震災では、発生後に「津波情報」を正しく入手できなかったケースで人的被害が大きくなった例があります。また、情報が錯そうし、避難場所すら見つけられない状態に陥ったと聞きました。そういった情報の入手方法と共有方法を明確にしておくことは極めて重要です。これに付随して、先に示した「モノ」の項目には、「情報入手のためのインフラ・機器」を定めておく必要があります。


ただ、災害時マニュアルで最も重要なのは、タイムラインです。

風水害であれば、災害が発生する前の時間(例えば、注意報や警報の段階)からスタートし、準備を確実に行う時間を確保し、減災を進めるマニュアルにしておくことが大事です。

私の事業所は、先ほども書いたように「要支援者への状況把握と避難勧奨」が大きな役割として求められています。したがって、一つ前に行動を起こすことが求められます。

例えば、大雨注意報や洪水注意報が出た時、準備態勢を整えておくこと。警報に変わったらすぐにアクションを起こせるようにしておく必要があります。そして、大雨警報・洪水警報(高齢者等避難)が出たらすぐに対象者へ連絡する。

大地震であれば、発生からの経過時間を軸に、何をすべきかを整理すること。とくに発生から72時間が大きなポイントになるはずです。そこからは、避難所開設やインフラの回復段階という形で順に作成します。


さて、そう考えて、自分の働く事務所の「災害対策マニュアル」を作り始めています。

まずは2種のマニュアルです。風水害と地震は必須です。

実際のところ、この地域では「原発事故」も想定しなければなりませんが、福島の現実を目の当たりにすると、おいそれとは着手できません。心理的抵抗感が強く、作っても無用なものになりかねませんから。


さて、風水害の災害対策マニュアルの特徴は、フェーズ設定している点です。

「注意報」段階、「大雨警報・洪水警報(高齢者等避難)」段階、「土砂災害発生警報(避難指示)」段階、「緊急安全確保」と、それぞれのステージでのプロセスを定めることになります。

最も注視しているのが「注意報」「警報」段階です。最近では、「大雨洪水警報」「土砂災害警報」が頻繁に発令されるようになりました。それ程の豪雨がたびたび発生している現実を見ると、まず、その段階で「次の段階を想定する作業」こそ重要だと言えます。例え空振りに終わっても、良しとする気構えで、予備段階のプロセスに力を入れるという事が肝だと考えています。


地震災害については、発災時からのプロセスを発生直後3時間、72時間、1週間、それ以降と4段階に分けました。発生直後にはまず、安全の確保が最優先です。その上で、次の段階へ移れるという構図です。72時間は生命の維持可能限界の一つの指標です。それを過ぎれば、とりあえず生き延びたという事で、復旧、復興への動きと考えました。もっと細かくしても良いでしょうが、これくらいが精神的な限界ではないかと考えました。


ただ、これを作成していく中で最も困ったことがありました。

それは、自分の事務所の使命(ミッション)が明文化されていないという事でした。

ここは、介護サービスの現場ではなく、「相談業務」主体の事務所です。利用者(障がい者当人)とのつながりも、例えば、計画相談事業所ほど強くありません。福祉サービスと繋がっていない、利用されていない方々が相談される場所なのです。


当初は、「利用者の安否確認や避難支援の役割を担う」というミッションを想定していましたが、対象者は誰なのかが今一つ鮮明になっていない。だが、それぞれの担当者には、日ごろから対応している人が居て、災害時に何らかの支援が必要だと考えているわけです。


マニュアル整備の前に、自らの事業所・事務所のミッション(使命)を明文化しなければなりません。そして、それを職員全員が理解し、そのために何をすべきかを議論しなければいけない。そこからはじめて、必要な業務プロセスが浮かんでくるはずです。そういう議論を重ねて、マニュアルを整備していかないと、絵に描いた餅になってしまいますから。

 

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