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能登半島地震とBCP② [7-マネジメント]

能登半島地震の全容がようやく把握され始め、緊急支援が始まった。

発災から1週間経っている段階。珠洲市や能登町、輪島市では、道路が寸断され孤立化が続いている地区が数多くある。海からの支援も進んでいるようだが、海岸が隆起して港が使えないという事態もある。こうした大きな被害は想定されていたとしても、救援活動はどこまで想定されていたのだろう。想定外のことが重なってこれ以上被害が拡大しないよう祈るばかりです。今後、私なりにできることを考えていきたいと思います。


さて、前回の続きです。

被害想定の甘さはBCPの有効性を欠くことはすでに述べました。

もう少し、細かい話をしていきたいと思います。


ある通所事業所の方に訊いた話では、大規模災害が発生したら、通所事業所は即時休止して、利用者は自宅へ一刻も早く帰す(送迎)という考え方で組み立てているそうです。

なるほど、だが、それで済む話なのでしょうか?

前述したように市内の被害状況を把握できるようになるのは、少なくとも24時間は必要なのではないか。

「即時自宅へ帰す」という行為はむしろ危険とは言えまいか。東日本大震災では、帰宅途中の幼稚園バスが津波に飲み込まれた痛ましい被害もあった。

琵琶湖では「大津波」はないとしても、液状化や家屋倒壊、橋梁落下などで安全に道路が走れる保証はない。まずは、周辺地域の状況把握に注力すべきではないか。

そのうえで、安全が確保できる状態であれば、ご家族に迎えに来てもらうという方向が正しいのではないかと考える。

、まずは、状況把握(安全確認)のための時間が必要になるし、その間、施設に留め置くことになるのではないか。もちろん、その事業所施設が安全を確保できている状況が前提であるが・・。

そして、一時的にでも留め置くことになるなら、その時間はどれほどに設定し、その間の生命維持に必要な物資(水と食料など)の備蓄も必要になるはずだ。一夜を明かす可能性だってある。

前述の施設では、自宅に戻すことになるから備蓄などはしないということだったが、それで本当に大丈夫なのかと改めて確認したい。


入所系事業所については、最大は、施設の安全性の確保になるはず。

新しい大規模施設であれば、ある程度の耐震性は持ち合わせているだろう。だが、一般住宅を改装しているところが多いグループホームには。築数十年というところもある。

こうしたところは、倒壊のリスクをどうとらえているのか。今回の能登地震の映像を見る限り、倒壊した建物は多く、倒壊を免れたとしても傾いたり亀裂が入ったり、瓦が落ちてしまったりと被害を受けている住宅がかなりある。

在宅居住が難しい方が入所しているグループホームが使えなくなった時、避難できる場所が確保できるのか。BCPの中ではこの点が一番悩ましいと言えるだろう。


さらに、職員についても考えさせられた。

就業時間中に災害が発生した場合を想定してBCPを作成しているところは多いはず。その場合、BCP対応体制に全員が入れるかどうかが問題になる。

私の職場では、正規職員は3名、あと6名はパート職員である。小学生のお子さんがいる方もあり、緊急時には学校への迎えが必須になると聞いている。

そのため、BCP対応体制では、最低必要人数を割り出しておく必要がある。それには、正規職員が当たることになるのだが、3名全員が在籍しているとは限らない。ごく少数でも対応できるようBCPにも工夫が必要になる。

今回の能登半島地震の報道でも、高齢者施設で職員が半数も集まっておらず、その日施設にいた職員で対応しており、さらに、施設内インフラが不能とあって通常以上に作業が多く疲弊している姿を見た。

そうした現実を目の当たりにして、BCP運用における人員体制・職員体制については再検討すべき重要なポイントになると考える。


また、職員みんなが帰宅困難になる可能性がある。

わが市は、国道(高架式)と湖岸道路の2本が主要幹線道路だが、それ以外の道路がほとんどない南北に長い地域でその間をいくつもの川が流れ、老朽化した橋も多い。おそらく、震度7クラスの地震になれば、ほとんどの道路が寸断され、公共交通機関も使用不能となり、孤立化するのは明白である。

復旧までの間、自宅へ戻れないということも十分に考えられる。職員の中には、市外から通っている者もいて、恐らくすぐに自宅には戻れないだろう。

そうした時、業務をこなしつつ、避難所へ行くということにもなる。避難所の多くは地域住民が最優先であり、我々のような事業所では、独自に避難生活を凄くことができる条件を作っておく必要がある。最低でも3日間は水と食料や毛布などが必要になるだろう。実は、こうしたことが、作成中のBCPには十分に盛り込まれていない。


何よりも厳しいと感じたのは、復旧・復興までの見通しが全く立たない状態が続くこと。

発災から1週間経った、能登地震被災地においては、救助活動が続いており、十分な物資が届いていない避難所も多く、避難所に入れないというところもあるようだ。電気もまだ回復できていないし、道路や水道の復旧にも多くの時間が掛かるだろう。

我が町の防災課が提示した被災想定では、電気の復旧は1週間で世帯9割回復となっている。水道は1か月必要とされている。だが、これは、これまでの過去の災害をモデルにした過ぎない。現に、能登半島地震では孤立集落への対応がまだまだ進んでいない。周辺の自治体も同様の状況にあれば、支援の手は足りない。より厳しく被害を想定し、その中でも、何とか生き延びる手立てを考え、その日に備えるほかない。


BCPは、想定に基づく仮説プランに過ぎない。

おそらく、完全に有効といえるものを作り上げるのは難しい。だからこそ、被害想定をできるだけ広げ、深刻に考える必要がある。

また、今回の能登地震は夕刻だった。地震がどういう時間帯で発生するかも計画に大きく影響するポイントである。

今、作成しているBCPは、昼間の就業時間を想定しただけである。

早朝、深夜、休日、夏季・冬季など様々な条件でシミュレーションし、少なくとも発災から72時間を想定した訓練(検証)を行っておくことも有効だろう。

そうした訓練(検証)を繰り返すことで、BCPの精度は高まっていくはずである。

そんなに手間をかけていられないと思う方もいらっしゃるだろう。


実は、私の事業所もBCPの検討・訓練は進んでいない。日常業務に忙殺され、なかなかそういう時間が作れないのが実情である。

だが、今回、能登半島地震をきっかけに、以前よりは自分事として考えられる下地はできているのではないか。

今だからこそ、BCPの作成と検証を進めていくことをお勧めする。

実は、私の事業所では、来週、そうした検討会を開催する予定だ。

今準備しているのは、二人一組になって、いくつかの場面を設定し、BCP並びに災害時対応マニュアルを見ながら、時間軸で何をすべきかを考えてもらうことにしている。そのうえで、不都合なことを発見し、改善提案をいただくことにしている。

その結果は、また、別の機会で報告させていただきたい。


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