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業務マニュアルと業務プロセス⑤災害時マニュアルその1 [7-マネジメント]

9月は防災を考える月ですね。店頭などにも、防災グッズが並んでいたり、事業所では防災訓練なども行われますよね。
それにしても、最近は豪雨による災害が全国至る所で起きています。
今、沖縄辺りでうろうろしている台風は、最大瞬間風速85mを超えると言われ、まさに、スーパー台風の一歩手前まで来ています。
多くに被災者が出ない事を祈るばかりです。
そして、すでに、被害に遭われた方にはお見舞い申し上げます。
一日も早く日常の暮らしに戻れる事をお祈りいたします。

私の住んでいるところも数年前に、川の堤防が決壊し床上浸水の被害が発生しました。
私がこの地へ移住する前のことですから、人伝いに聞く範囲なのですが、びわ湖の畔でありながら、長時間水が引かず、難儀された方も多かったようです。
琵琶湖の周囲の平地は、琵琶湖の水位が高かった昔は水面下にあり、特に、岸から近いところは沼地も多く、住宅地にする際に埋め立てられたところも少なくありません。
大型の排水設備はありますが、被害を防止することはできなかったようです。最近のニュースを見ながら、他人事ではないのだと思い、防災の備えを点検しています。

さて、本題に入ります。

今、業務マニュアルの整備の一環で、「防災マニュアル」に着手しています。

「防災マニュアル」。実は、・・・ちょっとこの言葉に馴染めません。
「防災とは何か」を突き詰めて考えると、ちょっと違和感があるのです。日本語的には、防災とは、災いを防ぐということです。という事は、災害が発生した時はすでに「防災」ではない段階にあるという事になります。まあ、政府機関で「防災マニュアル」という言葉を使い、「防災とは」という説明書きまで付けられてしまっては無駄な抵抗になりますが、本来の言葉なら「防災マニュアル」は、災害を防ぐための手順書であって、例えば、訓練をするとか、インフラや建物の災害防止のために日ごろ行う作業を定めたものに該当するはずです。
水害や地震が発生(あるいは発生の恐れ)があった時になすべき手順というのは「災害発生時のマニュアル」というべきだと思います。
しかし、殆んどのところで「防災マニュアル」という名称で、災害発生時の対応手順が定められているように思います。(ひねくれた考え方でしょうか?)

それはさておき・・・

現在、「風水害や迫ってくるときに何をすべきか」「大規模地震が発生したとき何をすべきか」を「災害時マニュアル」という名称で整備しています。従来からもあったのですが、余りにも稚拙で、有効性が低かったので改善提案をしているところです。

「災害時のBCP」も定められていますが、こちらも、余りに不整合が多く、経営者の認識不足を痛感しているところです。(これについてはすでにブログ発信しています)

さて、「災害時マニュアル」を作成する時、「なにを基本にすべきか」から考えましょう。
基本は、①職員の安全配慮 ②自助力 ③明確な優先順位だと考えます。
以前の職場で、「お客様優先に誘導を」とか「職員は是認職場に集合」などという表現がありました。ちょっと待ってください。まずは、自らの命、家族の命優先でしょ。その事を組織は明確に示しておく義務があるはずです。何を置いても・・というのは通用しません。職員が安全に災害に対応できる事こそ最も重視すべきことです。

そして、自分たちの実力を知る事。
言い換えれば、「自助力」です。
例えば、古い建物を使用している事業所で、震度6強の地震が来てしまった時、崩壊して使えないという事は容易に想像できます。
電力や水道等のインフラも十分ではないはずです。
自分たちの蓄えの中で使用可能なものがどれほどあるか。
それらの状況を把握し、すぐにできる効果的な方法に注力する判断ができるかどうか。それで初めて、災害へ対応する力が見えてくるはずです。

そして、何が優先かを考える事。
人の命より重要なものはありません。
組織として守るべき命を明確に捉えておくこと。何を捨てるかを明確にして、災害時には注力すべきものが判る事が大事です。

以上を踏まえて、マニュアルを整備します。

ふと、東日本大震災の時の福島原発事故を思い出しました。
3つの基本的な視点はどうだったのか。現場にいる職員と、本部にいる職員の認識にずれはなかったか、そして、国(政府)高官とその視点は共有できていたのか。
今もまだ、復興とは程遠い現実を見るにつけ、「備える」ことは何よりも重要な事だと痛感します。あの、震災とそれに続く被災、原発事故。あの痛ましい現実を思い出して、防災マニュアルの整備に取り組んでいくことが何より大事だと思います。

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園児死亡事故(事件)から思う事 [7-マネジメント]

また、痛ましい事故が起きました。送迎バスの中に置き去られ、小さな命が奪われました。
親御さんの気持ちを考えると言葉になりません。
1年前にあれだけ大きく報道された同様の事故があったにもかかわらず、再び起きてしまうとは・・。
詳しい状況が徐々に解明されているようですが、昨年と今回、いずれも「園長」が直接関わっているというところが、事故に至る構造的な問題のように思えてなりません。

私の娘が昔通っていた幼稚園には、2台の送迎バスがあり、専門のスタッフが配置されていました。園長が送迎バスを運転するというのがちょっと信じられないことでした。
推測の範囲を超えませんが、園長が運転せざるを得ない状態にあるというのは、ひょっとしたら「コロナ」が関係しているのではないかと思うのです。
今、保育現場に限らず、「コロナ」拡大で、急に欠勤になるケースは多々あります。特に、施設系の事業所では、一定の職員体制がないと運営できないところも少なくないため、畔職員がコロナ感染・濃厚接触などで休まざるを得ない状態になると、急にシフトが変わったり、連続勤務で夜勤をしているとか、耳にします。
少人数で運営している、あるいは、日常的にギリギリの体制で運営しているところでは、特に役割を持たない「管理職」が現場に入るという事が起きているに違いありません。
今回の事故の背景には、そうした社会状況が大きく関係しているように思います。

だからと言って、こうした事故を容認するわけではなく、だからこそ、マネジメントをしっかり行う事が必要なのだと考えます。非常事態だからこそ、リスクが高くなっているという認識で、基本的な業務プロセスを維持する事こそ重要なのです。

今回の事故で言えば、
①「朝、バスが到着した時、なぜ、全座席のチェックができなかったのか」という疑問が生まれます。
・小さな園児が座席に座っていても見づらい中、例えば、眠ってしまって横になっていたら、なかなか気づけない。いったん、園児を降ろした時、全席をチェックするというのは基本的なプロセスのはずです。なぜ、おろそかになったか。例えば、送迎後にバスの中のチェックを行い報告するというプロセスはなかったのか?
・そういうチェックプロセスがマニュアルとなっていて、管理者が確認する手順で機能していれば確実に事故は防止できたはずです。

・多くのところでは「ヒヤリハット」危険予知と取り組みはしているはずです。こうしたことがおろそかになるというのは、やはりマネジメント不全が起きているという事だと考えます。


②「来たはずの園児が居ない事になぜ気付かなかったのか」
・仮に、降りていない園児が居た場合、担当するクラスの保育士は何故疑問に思わなかったか。欠席であれば、家族に連絡する(連絡を確認する)のは当たり前のはずです。少なくとも、数時間も放置されることはなかったはずです。それに気づけないということが信じられない点です。
・園児の出欠というのはどのように管理されているのか。4歳児以上では30人に一人の保育士配置の基準があります。受け持ちの園児の姿がない事を何故疑問に思わなかったか。仮に、通常の担当保育士が休みで、代わりの保育士が見ていたとすれば、ひとりひとり名前を確認しなければ適正な保育はできないはずです。


全て、推測の範囲を超えませんのでこれ以上は止めておきますが、これだけの重大なリスクが発生し、今後、園の存続すら危うくなっているに違いありません。事故解明まではおそらく休園になっているに違いなく、ほかの子どもたちの保育に問題が広がるはずです。

命を預かる現場では、こうした事故が再発しないよう、リスクマネジメントの視点で、業務プロセスの点検を行って、最大限の安全確保をお願いしたいと思います。
私の職場でも、「コロナ対策」で、健康管理チェックとか、事務所内の定期的な換気や衛生管理の徹底等、業務プロセスの負荷がかかっています。一方で、通常の業務では、リモートワーク・リモート会議の開催や、研修や訪問活動の制限なども生まれていて、日常業務にも支障が出ています。ついつい、基本的な手順を簡略化してしまう気持ちも湧いてきます。
しかし、こうした事態だからこそ、基本的な手順をしっかり行う事がリスクを最小限に留めることになるという認識で、管理職の皆さんがマネジメントしてもらえるよう願うばかりです。


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業務マニュアルと業務プロセス⑥災害対策マニュアルその2 [7-マネジメント]

さて、基本が定まったら、あとは、業務プロセスの組み立て方と同じです。

ヒト・モノ・カネ・情報のエレメントの配分です。

「人」とは組織・指揮命令系統を含めた人材・人的資源。

災害時の人的資源は、通常時とは異なります。

消防訓練などで「防火管理体制表」を作成しているケースがありますが、いかがでしょう?有効に機能すると思っていますか?隊長、通報係・消火班・誘導係とか現状の体制で割り振っているケースが、災害時に有効に機能するでしょうか?隊長役となっているのは、たいていが事業所の所長・管理職ですが、常に在席しているとは限りません。

災害時の組織体制・指揮命令系統となると更に難しいかもしれません。だからこそ、有効な組織体制と指揮命令系統を明確にし、全ての従業員が理解しておく必要があります。

例えば、「風水害」で考えると、準備期間(注意報発生から警報・避難指示)がある程度あるため、基本の組織体制・指揮命令系統を確認し、現状そこにいる人員で役割分担をするという方法が望ましいでしょう。「震災」だと、発生後に、事業所に集まれる人員を確認して、役割を割り振ることで対応する事を決めておくことでしょう。

重要なのは、少人数であっても、最低限の機能を発揮し目的を達成できる組織体制を確保する事だと思います。また、人的資源は「人数」ではなく、スキル(能力)も重要な指標となります。現状の対応力を評価し、訓練を繰り返す事で向上させることが可能です。

今、作成している「災害時対応マニュアル」では、「風水害」では、管理役・連絡役・情報収集役の3つを置きました。「震災」でも基本は同じだと考えています。


「モノ」とは、災害時マニュアルを実施するために必要なモノを明確にすることです。
「風水害時」では、災害発生前と発生後の段階で必要となるモノをまず指定します。

私の事業所は、「要支援者への避難連絡(勧奨)」が大きな役割になります。そのため、発生前には、「要支援者の名簿」「電話」「記録簿」等が重要なモノに当たります。

災害発生後には、事業継続のため、非常時使用可能なインフラや機器類。非常用電源とか、万一の時に喪失しないデータの保管場所、通信機器等があります。ただ、私の事業所は「要支援者への対応」も求められますので、移動手段(自動車・自転車やバイク等)は重要なモノになります。

近年は、「帰宅困難者」も想定して寝泊まりできる資材や場所なども含めるところもありますし、食料や水と言ったもののローリングストックは常識となっていますね。

こうしたものを、マニュアルとともに一覧表にまとめておくことが大事です。


「カネ」は資金力。いざという時に経営が持ちこたえられる資金力を確保しておくことが最優先ですが、事業所単位でも、重要です。先に示した「モノ」が潤沢にあれば良いですが、長期に及ぶ場合買い足しも必要になるでしょう。その場合の、現金の調達方法は明確にしておくと良いでしょう。


「情報」は、災害時ほど重要な事はありません。内部の情報も極めて重要ですが、それ以上に、どこでどのような災害が発生しているのか、救助や避難態勢はどうなっているのか、日常よりもさらに外部情報は重要になってきます。

東日本大震災では、発生後に「津波情報」を正しく入手できなかったケースで人的被害が大きくなった例があります。また、情報が錯そうし、避難場所すら見つけられない状態に陥ったと聞きました。そういった情報の入手方法と共有方法を明確にしておくことは極めて重要です。これに付随して、先に示した「モノ」の項目には、「情報入手のためのインフラ・機器」を定めておく必要があります。


ただ、災害時マニュアルで最も重要なのは、タイムラインです。

風水害であれば、災害が発生する前の時間(例えば、注意報や警報の段階)からスタートし、準備を確実に行う時間を確保し、減災を進めるマニュアルにしておくことが大事です。

私の事業所は、先ほども書いたように「要支援者への状況把握と避難勧奨」が大きな役割として求められています。したがって、一つ前に行動を起こすことが求められます。

例えば、大雨注意報や洪水注意報が出た時、準備態勢を整えておくこと。警報に変わったらすぐにアクションを起こせるようにしておく必要があります。そして、大雨警報・洪水警報(高齢者等避難)が出たらすぐに対象者へ連絡する。

大地震であれば、発生からの経過時間を軸に、何をすべきかを整理すること。とくに発生から72時間が大きなポイントになるはずです。そこからは、避難所開設やインフラの回復段階という形で順に作成します。


さて、そう考えて、自分の働く事務所の「災害対策マニュアル」を作り始めています。

まずは2種のマニュアルです。風水害と地震は必須です。

実際のところ、この地域では「原発事故」も想定しなければなりませんが、福島の現実を目の当たりにすると、おいそれとは着手できません。心理的抵抗感が強く、作っても無用なものになりかねませんから。


さて、風水害の災害対策マニュアルの特徴は、フェーズ設定している点です。

「注意報」段階、「大雨警報・洪水警報(高齢者等避難)」段階、「土砂災害発生警報(避難指示)」段階、「緊急安全確保」と、それぞれのステージでのプロセスを定めることになります。

最も注視しているのが「注意報」「警報」段階です。最近では、「大雨洪水警報」「土砂災害警報」が頻繁に発令されるようになりました。それ程の豪雨がたびたび発生している現実を見ると、まず、その段階で「次の段階を想定する作業」こそ重要だと言えます。例え空振りに終わっても、良しとする気構えで、予備段階のプロセスに力を入れるという事が肝だと考えています。


地震災害については、発災時からのプロセスを発生直後3時間、72時間、1週間、それ以降と4段階に分けました。発生直後にはまず、安全の確保が最優先です。その上で、次の段階へ移れるという構図です。72時間は生命の維持可能限界の一つの指標です。それを過ぎれば、とりあえず生き延びたという事で、復旧、復興への動きと考えました。もっと細かくしても良いでしょうが、これくらいが精神的な限界ではないかと考えました。


ただ、これを作成していく中で最も困ったことがありました。

それは、自分の事務所の使命(ミッション)が明文化されていないという事でした。

ここは、介護サービスの現場ではなく、「相談業務」主体の事務所です。利用者(障がい者当人)とのつながりも、例えば、計画相談事業所ほど強くありません。福祉サービスと繋がっていない、利用されていない方々が相談される場所なのです。


当初は、「利用者の安否確認や避難支援の役割を担う」というミッションを想定していましたが、対象者は誰なのかが今一つ鮮明になっていない。だが、それぞれの担当者には、日ごろから対応している人が居て、災害時に何らかの支援が必要だと考えているわけです。


マニュアル整備の前に、自らの事業所・事務所のミッション(使命)を明文化しなければなりません。そして、それを職員全員が理解し、そのために何をすべきかを議論しなければいけない。そこからはじめて、必要な業務プロセスが浮かんでくるはずです。そういう議論を重ねて、マニュアルを整備していかないと、絵に描いた餅になってしまいますから。

 

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