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異動の春はピンチでチャンス [1-内部監査]

桜の便りがあちこちから聞かれるようになりました。

異動の内示がある会社も多いのではないでしょうか?(最近は、年度末だけでなく、半期異動という会社も増えて来たようですが)

内部監査に着任していた頃は、この「異動」というのはかなり大きなインパクトのある事で年間監査計画に大きな影響を与えてくれました。

特に、長年同じ部署の管理者(長や副長など)が異動となると、内部監査にとって、これほどのチャンスはありませんし、ピンチでもあります。


マネジメントシステムは、極論を言えば、人が動かすシステムです。

同じ管理者が長年居座った事業所は、元々作られていたマネジメントシステムが、大きく歪んでいることがあります。勿論、真面目に真摯にマネジメントしている管理者は、さほどシステムの歪みを生まないものですが、やはり人間ですから、自分の得意な方法を取り入れて修正していることが多いのです。もちろん、より合理的でリスク管理できる形で修正されているなら、推奨事例に挙げても良いのですが、大半は、自分の弱さを隠すために歪めていることがあります。行きすぎると、そこに不正や不祥事が生じます。

管理者が異動し、新しい管理者が着任した時、大半の管理者は戸惑います。

規則やルールに忠実になろうとすればするほど、現場の運用が違ってくる。部下もなかなか納得してくれない。小さな事業であれば、修正も可能ですが、部単位となると、部長が交代すると根底から変わってくる事があります。特に、決裁に罹る項目での運用修正はそのまま不正に直結する事態にもなりかねません。


内部監査は、そうした時、コンサルティング監査(アドバイザリー機能)の役割を担う必要があります。

通常の監査とは別に、管理者とともにマネジメントシステムの点検を行い、正常かつ合理的なシステム運用に軌道修正するための監査を組みます。

コンサルティング監査は、問題点を指摘し改善を要請するのではなく、一緒に問題点を発見し改善のための方法を考える監査です。

私は、通常の監査でも、コンサルティングの姿勢で臨んでいましたが、特に、コンサルティング監査の場合は、現場職員の立場を尊重するように留意していました。

現場職員は、日々の業務に精一杯取り組んでいます。(大よそ8割の職員は真面目に取り組んでいるはずです)そして、様々な業務システムのルールを理解し、適正にこなすために苦労しているのです。

コンサルティング監査では、そこに力点を置いて、現場職員がどんなことに困っているのかをしっかり把握することが重要です。その上で、管理者とともに、適正なシステム運用ができるよう知恵を絞るのです。

ちなみに、コンサルティング監査を、特に構えて行うことはありません。

年間の監査計画に基づいて、監査対象への予備調査を行う際に、コンサルティングを意識したヒアリング(現場視察・職員ヒアリングなど)を行うだけでも成果を生む事ができます。また、そういう姿勢を示す事で、本監査において、監査対象からの信頼に基づく監査協力が得られ、かなり正確かつ深度のある監査ができるはずです。


本論に戻りますが、異動のこの時期こそ、監査計画をしっかり作るチャンスです。

管理者が交代する事で、隠れていた問題が露見することはよく聞く話です。重大な不正や不祥事が露見してしまえば、組織的な損失は大きくなり、信用にも関わります。

そうなる前に、管理者の異動をベースに監査対象を絞るというのも、より効果的で合理的な監査につながると思います。


組織は生き物です。

それを統制し適切に業務させるのがマネジメントシステムです。

マネジメントシステムが歪んでしまっていたら、適切な業務はできません。現場の実態とシステムの両面をしっかり見て、何をどう変えていくか、事業所単位で見るのではなく、全社的な視点で見ていくこと。

これができるのは、経営者か内部監査しかないのですから。


初めに「チャンスであり、ピンチでもある」と書いた事の補足をしておきます。

チャンスは前述のとおり。コンサルティング(アドバイザリー)監査の姿勢を持つ事で、より良い監査ができるということです。

ピンチというのは、監査の前に、不正や不祥事が露見して、「内部監査は何をしていたんだ!」とお叱りを受けることになりかねないということです。

経営層が、内部監査への期待と信頼が高いところほど、こういう事が起こります。

問題が深刻化しないよう、常に目を光らせているというのが内部監査だという期待のあらわれでしょう。

しかし、不正や不祥事は、予期せぬところで起こるものです。

以前に「不正のトライアングル」として述べたように、「動機と機会と正当性」の3つが揃うところに不正や不祥事は生まれます。

長期間、管理者が同じ部署に留まり、マネジメントシステムを歪めてしまうと、この条件が揃いがちになります。そして、管理者が起こす不正や不祥事は、一般職員よりも巧妙で露見しづらく、部下が上司の不正を見つけてもなかなか告発しづらい環境になってしまいやすく、中には管理者自ら部下をも巻き込んだ大きな不正を起こすことも珍しくありません。ただ、こうしたことを、インターバルのある定期監査で見つけることは難しいでしょう。

現場組織との意思疎通を図る努力が重要です。

生協に居た頃は、できるだけ、現場職員に声をかけ、気軽に声をかけてもらえるように努力していました。それは、同期の職員仲間だけでなく、先輩も後輩も、パートやアルバイトの皆さんにも、積極的に挨拶もし、監査で赴いた時には、休憩室や喫煙所などで世間話をしたり、時には、現場視察(予備調査)で一緒に作業をしたりすることも心がけていました。


突き詰めてみると、監査は、知識やスキルだけでは成り立たないのではないか。極論を言えば、監査人の人間力が試されるように思います。

 

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