情報管理リスク・続編 [6-雑感・いろいろ]
以前に記事にした「業務管理用のデータベース不能」に関する続編です。
過去3年分の業務記録が全くアクセスできない状態に陥り、管理を依頼していたSEとも連絡不能、SEと契約していた会社も不誠実な対応、さらに、そこを紹介したIT顧問も、全く役に立たない状態と・・本当にトホホな状態でした。
そんな時、救世主が現れました。
SNSで繋がっていた(名前を出してもいいのかな?)「ちょっとニュース」を出しているrinmonさんが、「一度見てみましょう」と申し出てくださったのです。
幸運なことに、rinmonさんとは、今の仕事でも少し繋がりもあり、実のところ、藁をもすがる思いでお願いしました。
個人情報が詰まったデータベースですので、作業に入る前に「個人情報保護に関する覚書」も交わしてから、見ていただきました。
すると、僅かの間に、アクセス不能だったデータベースに入ることは可能と判断していただき、早速作業をお願いしました。
翌日には、CSVとSQLのデータを作成していただき入手する事ができました。
ざっと、3万件以上の情報が手元に・・。正直、涙が出る思いでした。
それから、ざっと6時間掛けて、データの構造を読み込み(幾つかのデータがリンクされた状態だったのですが、入手したのは生データですので、数値や記号が並んでいるだけなので再構築が必要)事業所内の職員が閲覧できるよう、Googleスプレッドシートに変換し、細部を仕上げることができました。
rinmonさん、本当にありがとうございました。救世主と言わずして何と言えよう!皆さんも、何か困ったことがあったら、rinmonさんに問い合わせてみてはいかがでしょう。
さて、ここからは、「情報管理のリスク」の本題です。
前回、リスクマネジメントの在り様について述べましたので、今回は、「情報管理の重要性」について考えてみたいと思います。
ビジネスでは、ひと時代前には「人・金・モノ」の3大要素でマネジメントを組み立て、PDCAで改善、一層の発展を図るという考え方が主流でした。
しかし、PC普及に伴い、「人・金・モノ」に加えて「情報・時間」という要素も加わりました。さらに、DX化が進む現在、情報は、ビッグデータとなり、AIが進化する事で、ビジネスモデルも大きく変わろうとしています。
そんなことをつらつら考えている中で、自分の仕事(障がい者相談支援センター)で、情報はどういうものか考えてみました。
今の業務で、「情報(データ)」はどういうものなのか。
データベースが見れなくなって、まず思ったのは、行政に提出する報告書が作成できないということでした。報告書(実績)は、委託事業である限り、極めて重要なものです。委託費に見合った仕事をしているかを証明する唯一の手掛かりだからです。「情報」は、事業の存続(経営)に直結する重要なエレメントであるわけです。
さらに、この数か月、現場で起きていた問題は、過去の記録が見れず、相談者からの信用が大きく損なわれた事でした。
相談者には担当が決められていますので、直近で相談している場合は、担当者の記憶とメモで対応可能でした。
しかし、障がい者の相談の現場では、かなり長いスパンで動きが生まれるケースが少なくありません。数年前に相談を受け、一定の支援ができたとしても、次第に次のニーズが生まれ、新たな支援が必要になるのです。こうした時、以前にどういう経緯だったのか、その時どう判断し、なにを支援したのか。これが具にわかることが、相談者の信頼にしっかり応える第一歩になるのです。
事業所の担当職員は、異動や退職で年単位で交代します。
長く居るからといって、職員の記憶を頼りにしていくことは極めて危険ですし、信頼を損ねるリスクも高くなります。
だからこそ、記録(データ)が必要なのです。それも、信頼できる情報が詰まったデータ。さらに、それが容易く見られる状態にあることが大事なのです。
数年前までの記録は、紙ベースで保存されています。
しかし、膨大な紙の束から、必要な情報を探し出すのは容易なことではありません。勿論、個人ごとにファイル管理はされていますが、記載項目が違ったり、手書きでとても読めない様なものも混ざっています。どこまでが正確なのか判断できないものも混在しています。
こうした、紙ベースの記録は、大切な「時間」を容易く奪っていきます。探し出すだけで労力を使い、読み込むにも苦労する。これはもはや、「情報」とは言えないのではないでしょうか?
DX化によって、より精度の高い正確な情報を入手し、しっかり、相談者に向き合う事に時間を費やす事こそ重要だと私は思います。
人を相手にするからこそ、DX化によって、有効な情報を手にしていくことが必要だと思います。
今回の事件で、そうしたことを思い知らされました。
ふと、私が社会人になった頃のことを思い出しました。今から40年前のことです。当時は、おもちゃの類にパソコンらしきものはありましたが、一般的ではありませんでした。仕事の記録は基本的に手書きでした。
プロジェクト等で、今は、パワーポイントを使ったり映像を使って魅力的に印象的にプレゼンすることは当然ですが、当時は、そんなものは普通の会社にはありません。とにかく、手書きが基本。だからこそ、要点をまとめたり、端的な言葉を使ったり、想像力を駆り立てるような表現のために、思考する時間こそが大事でした。一言一言に重みがありました。
今はそんなものは必要ありません。そこに使っていた時間をPCを使い、より合理的に進めれば良い。さらに付加価値の高い仕事に注力できる環境にあると思います。
だからこそ、情報(データ)は重要になります。
セキュリティと使い勝手を考えれば、「情報の入れ物」(データベース)はやはりしっかりしたものを用意すべきでした。
「安物買いの銭失い」という言葉がありますが、今回の事件の根本には、目先の出費を考え、安易に、開発をいい加減な会社と個人に依頼したことがあったのです。勿論、高価であれば良いというわけではありません。
ユーザーサイドに寄り添って開発と管理をしてくれて、いざという時、しっかりフォローしてくれる、そういう誠意と能力のある会社や個人を見極めることです。
それと、今回の件では、rinmonさんに大変お世話になりました。問題の解決のためには、広い視野で、力を貸していただける方を探すということも大事なことだという教訓を得ました。私自身も、ある程度、パソコンのスキルはあるほうだと思っていましたが、rinmonさんは別格でした。もっともっと勉強しなければと思います。ただ、それは、ユーザーサイドでいかにPCを業務に生かすかという視点で、頑張りたいと思っています。
ちょっと短い失敗談をひとつ [6-雑感・いろいろ]
先日、rinmonさんに救出いただいたデータを使って、行政に提出する報告書を作成していた時の失敗談を・・本当に、年は取りたくないものです。
CSVデータをエクセルに変換し、整えた後、閲覧可能なレベルまで辿り着きました。署長に報告したところ、「前のデータベースが使えなくなった時、未提出だった11月分の報告書を作成して」と指示を受けました。
11月分の報告書というのは、業務の数値データとともに1ヶ月分の記録全てを書面にして提出するものです。ざっと900件あります。
エクセルデータになっているのですから、ワードを使って差し込み印刷すればできます。つい先日、上半期分(7000件ほど)はすんなりできていましたから、ほんの数分の作業のはずでした。
しかし・・うまくいかない。差し込み文書を作成し、11月分のエクセルデータを接続すると、一部しか読み込まない(表示されない)のです。
ああ、そうでした。256文字の縛りがあることを忘れていたのです。そこから、何度か、読み込み方法を切りかえてみましたが、結果はやはり同じ。
もしかしたら、エクセルデータに問題があるのではと、今度はエクセルを総点検。しかし、特段の問題は発見できず、終に、力尽き、一旦作業を止めることにしました。
何かが足りない・・きっと、初歩的な何か・・忘れていることはないか・・そんなことが頭の中に繰り返され、一晩、ゆっくり考えることにしました。
賢明な方なら、不具合の解決策はすぐに浮かんでくるはずです。
「データファイル形式の選択間違い!OLE DBデータベースファイルではなく、Microsoft Excelワークシート DDE(*xls)を選択。これだけ。1番上のになってると出力が255文字あたりで途切れますよ。」
もしかしたら、上記のような事じゃないの?と考えている方、実は、そうじゃないんですよ。時々、上記のような解説を見かけますが、ちょっと違うんです。
もちろん、今回、上記の方法も試してみました(浅はかにも)。でも解決されなかったんです。
一晩、寝ながら考えました。(本当に夢の中で、PCと格闘しているんですね)
そしたら、夢の中でハッと気づいたんです。
嘘みたいな話ですが、私はこういうことが良くあります。蛇足ながら、趣味で曲作りをしている時、どうしても気に入ったメロディが浮かんでこない時、寝ている時、急に新しいメロディが浮かんだり、気に入った言葉が見つかったりします。仕事に関してもこういうことで救われたことは数えきれないくらいあります。寝ている間に、もう一人に自分が考えてくれている、そういう感覚です。
話を本題に戻しますが、今回255文字辺りで切れてしまうことや、全くデータを認識できないところがあることから、ハッと気づいたのです。
ワードの差し込みの際、最初のデータをワードが読み込んだ時、それぞれのセルデータをそどういうものかを識別する機能があるのです。日付とか記号とか短い(256文字以下)テキストか、長文テキストか、そういう識別機能があることを忘れてしまっていたのです。
それが判れば話は早い。エクセルデータの一番上にあるデータで、長文になっている(256文字以上)セルに、長文をダミーで入れてやるのです。
問題はこれで解決しました。すべてのデータを何の問題もなく読み込み、900件のデータが綺麗にワード文書で印刷できました。
以前(5年以上前ですが)、全く同様の問題にぶち当たり、解決策を発見したはずなのにすっかり忘れてしまっていたのです。いやはや、年は取りたくないものです。
そして、眠っている間に施行を巡らせてくれたもう一人に自分に感謝です。
失敗談②差し込み印刷で・・ [6-雑感・いろいろ]
些細なことですが、前述の「短い失敗談」の続きです。
大量のデータをワード文書に差し込み印刷をしようとして、前述の失敗談では、「セル内のデータ形式の認識」に関して述べさせてもらいました。こんな事は、どこのマニュアルを見ても出ていませんでした。
更にもう一つ。
差し込み印刷で、フィールドの挿入を終えて、「結果のプレビュー」[→]完了と差し込みへと手順を進めることになります。
完成文書は、表の中にデータを埋め込むもので、例えば、「区分・項目・名称・内容」の4つのマスの中にデータが差し込まれるものを想定します。
表の挿入で、4つの項目が入る枠を設定し、データフィールドを挿入し、結果のプレビューを押すと、1番目のデータが挿入されます。形が整っていれば、「完了と差し込み」で、「個々の文書の編集」へと移ります。
さて、ここで驚くことが起きます。
5つの枠を持った表に1つのデータが挿入され、1ページができます。
次のデータは2ページ・・500ほどのデータだと、500ページの文書になるわけです。
「失敗した!セクションの削除を忘れていた!」
そう気づいた時、はてと困りました。
セクションの削除ってどうだったっけ?
簡単に書けば、「あいまい検索機能を使って、(^b)の文字列を探して削除する」というのが正論のようです(ググってみるとほとんどそういう回答でした)。
そういう方法があるのかと思ってやろうとしましたが、「いや、違う。以前にこんな手順は取らなかった。もっと単純だったぞ。」と自分の記憶をもう一度掘り起こしてみたのです。
事実、以前に作成した差し込み文書のひな形は、そんなことをやらなくても、ちゃんと、ページが変わることなく、続きでデータが出ているのです。
差し込み印刷固有の何か・・なんだったか・・・。偶然出来たというのもちょっと・・必ず理由(作業手順)があるはずなんです。PC作業では、理由もなくそういうことは起きません。
今一度、差し込み印刷の最初の手順に戻ってみました。
「ああ!そうだった!」
セクションの区切りが最初から入る場合と入らない場合の違い・・思い出しました。賢明な皆さんなら判っておられるかもしれません。そうなんです。差し込み印刷の最初「差し込み印刷の開始」のところで開くダイアログ。ここで、「名簿」を選択するのでした。それ以外を選択(封筒やラベルを選ぶ人はあまりないと思いますが)すると、セクション区切りが入るのです。ここは、かならず「名簿」を選択しておきます。
そうすると、データが差し込まれた表がセクション無しで作成できます。
実はこれ、差し込み文書を完了した後にできる文書にも適用できます。
もし、失敗して、セクションで区切られて、1ページに1件が延々と続くような文書ができたら試してみてください。
前述の「あいまい検索」を使う方法より、実際、サクサクと作業に入れますよ。
もしかしたら、これって裏技なんでしょうか?
役に立ったよという方、もっと別の方法があるよという方があれば、教えていただけると幸いです。まだまだ、知らないことばかりです。
実務に携わっていると、こうした小さな発見や躓きというのは多々あります。それで大幅なタイムロスになることもあるし、これが嫌でPC嫌いになる人もおられるでしょう。
まあ、ちょっとしたゲーム攻略のつもりで取り組むと、楽しめるんじゃないでしょうか?
「仕事を愉しむ」・・ちょっと不謹慎な感じもしますが、目の前の業務に集中しているわけですから許されるんじゃないかと思います。
異動の春はピンチでチャンス [1-内部監査]
桜の便りがあちこちから聞かれるようになりました。
異動の内示がある会社も多いのではないでしょうか?(最近は、年度末だけでなく、半期異動という会社も増えて来たようですが)
内部監査に着任していた頃は、この「異動」というのはかなり大きなインパクトのある事で年間監査計画に大きな影響を与えてくれました。
特に、長年同じ部署の管理者(長や副長など)が異動となると、内部監査にとって、これほどのチャンスはありませんし、ピンチでもあります。
マネジメントシステムは、極論を言えば、人が動かすシステムです。
同じ管理者が長年居座った事業所は、元々作られていたマネジメントシステムが、大きく歪んでいることがあります。勿論、真面目に真摯にマネジメントしている管理者は、さほどシステムの歪みを生まないものですが、やはり人間ですから、自分の得意な方法を取り入れて修正していることが多いのです。もちろん、より合理的でリスク管理できる形で修正されているなら、推奨事例に挙げても良いのですが、大半は、自分の弱さを隠すために歪めていることがあります。行きすぎると、そこに不正や不祥事が生じます。
管理者が異動し、新しい管理者が着任した時、大半の管理者は戸惑います。
規則やルールに忠実になろうとすればするほど、現場の運用が違ってくる。部下もなかなか納得してくれない。小さな事業であれば、修正も可能ですが、部単位となると、部長が交代すると根底から変わってくる事があります。特に、決裁に罹る項目での運用修正はそのまま不正に直結する事態にもなりかねません。
内部監査は、そうした時、コンサルティング監査(アドバイザリー機能)の役割を担う必要があります。
通常の監査とは別に、管理者とともにマネジメントシステムの点検を行い、正常かつ合理的なシステム運用に軌道修正するための監査を組みます。
コンサルティング監査は、問題点を指摘し改善を要請するのではなく、一緒に問題点を発見し改善のための方法を考える監査です。
私は、通常の監査でも、コンサルティングの姿勢で臨んでいましたが、特に、コンサルティング監査の場合は、現場職員の立場を尊重するように留意していました。
現場職員は、日々の業務に精一杯取り組んでいます。(大よそ8割の職員は真面目に取り組んでいるはずです)そして、様々な業務システムのルールを理解し、適正にこなすために苦労しているのです。
コンサルティング監査では、そこに力点を置いて、現場職員がどんなことに困っているのかをしっかり把握することが重要です。その上で、管理者とともに、適正なシステム運用ができるよう知恵を絞るのです。
ちなみに、コンサルティング監査を、特に構えて行うことはありません。
年間の監査計画に基づいて、監査対象への予備調査を行う際に、コンサルティングを意識したヒアリング(現場視察・職員ヒアリングなど)を行うだけでも成果を生む事ができます。また、そういう姿勢を示す事で、本監査において、監査対象からの信頼に基づく監査協力が得られ、かなり正確かつ深度のある監査ができるはずです。
本論に戻りますが、異動のこの時期こそ、監査計画をしっかり作るチャンスです。
管理者が交代する事で、隠れていた問題が露見することはよく聞く話です。重大な不正や不祥事が露見してしまえば、組織的な損失は大きくなり、信用にも関わります。
そうなる前に、管理者の異動をベースに監査対象を絞るというのも、より効果的で合理的な監査につながると思います。
組織は生き物です。
それを統制し適切に業務させるのがマネジメントシステムです。
マネジメントシステムが歪んでしまっていたら、適切な業務はできません。現場の実態とシステムの両面をしっかり見て、何をどう変えていくか、事業所単位で見るのではなく、全社的な視点で見ていくこと。
これができるのは、経営者か内部監査しかないのですから。
初めに「チャンスであり、ピンチでもある」と書いた事の補足をしておきます。
チャンスは前述のとおり。コンサルティング(アドバイザリー)監査の姿勢を持つ事で、より良い監査ができるということです。
ピンチというのは、監査の前に、不正や不祥事が露見して、「内部監査は何をしていたんだ!」とお叱りを受けることになりかねないということです。
経営層が、内部監査への期待と信頼が高いところほど、こういう事が起こります。
問題が深刻化しないよう、常に目を光らせているというのが内部監査だという期待のあらわれでしょう。
しかし、不正や不祥事は、予期せぬところで起こるものです。
以前に「不正のトライアングル」として述べたように、「動機と機会と正当性」の3つが揃うところに不正や不祥事は生まれます。
長期間、管理者が同じ部署に留まり、マネジメントシステムを歪めてしまうと、この条件が揃いがちになります。そして、管理者が起こす不正や不祥事は、一般職員よりも巧妙で露見しづらく、部下が上司の不正を見つけてもなかなか告発しづらい環境になってしまいやすく、中には管理者自ら部下をも巻き込んだ大きな不正を起こすことも珍しくありません。ただ、こうしたことを、インターバルのある定期監査で見つけることは難しいでしょう。
現場組織との意思疎通を図る努力が重要です。
生協に居た頃は、できるだけ、現場職員に声をかけ、気軽に声をかけてもらえるように努力していました。それは、同期の職員仲間だけでなく、先輩も後輩も、パートやアルバイトの皆さんにも、積極的に挨拶もし、監査で赴いた時には、休憩室や喫煙所などで世間話をしたり、時には、現場視察(予備調査)で一緒に作業をしたりすることも心がけていました。
突き詰めてみると、監査は、知識やスキルだけでは成り立たないのではないか。極論を言えば、監査人の人間力が試されるように思います。