小規模監査部門の品質評価②(20180509) [2-内部監査実施指針]
実際の品質評価の標準工程を整理してみました。
大枠では、内部監査の標準工程と同様に、PDCAサイクルで設計しています。
標準工程表と仕様書一覧 |
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フェーズ |
作業内容 |
仕様書 |
0 |
工程確認 |
・評価人の選定と主任評価人の選出 ・全体スケジュール策定 ・予備調査書の策定の通知 |
⓪品質評価プログラム実施計画書 |
1 |
予備調査 |
監査部門(評価対象)への理解を進めるための■評価人による資料読み込み ・組織概況 ・内部統制・マネジメントシステム・リスクマネジメント等の運用状況 ・前年度監査報告書 |
①予備調査書 |
2 |
手順策定 |
■評価人による協議 ・評価手続きの決定 ・評価重点ポイントの策定 ・評価シート内容の確認 ・閲覧準備書類の洗い出し |
②評価実施要領 ・スケジュール ・評価シート ・閲覧準備書類一覧 |
3 |
現場調査 |
■実施 ・評価シート項目に基づき、対象となる内部監査部門(内部監査人)へのヒアリングと関連帳票点検 ・不備事項の深堀(真因追及) |
③現地調査実施記録 ・評価シート ・重要事項証憑 |
4 |
評価 |
■評価人による協議 ・現地調査実施記録をもとに、評価調書の策定。 ・評価人の評価一致を図るためのディスカッション |
④評価調書 ⑤評価管理プログラム評価書 |
5 |
結果報告 |
評価調書から導かれる「評価書」をもとに、対象の内部監査部門への報告と合意形成。 |
⑥エグゼクティブサマリー |
〇評価シート(例)
評価に当たって使用する「評価シート」の例です。
内部監査基準の項目を基本に置いています。到達点(評価)は評価人に任せることとしました。単
なる点数評価ではなく、不備項目の発見に使用する事。重要なのは、不備項目に対して「真因追及」を行い、品質向上のための提案ができるようにくみ上げることです。
設 問 |
評価 |
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第1章 |
Q1.内部監査の本質を正しく理解しているか? |
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第2章 |
Q2.内部監査部門の独立性と客観性が保持されているか? |
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Q3.内部監査部門の組織上の位置づけは最高経営者直属で、監査報告の「ダブルレポーティングライン」は確保されているか? |
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Q4.内部監査規程は作成され、適時見直しされ、最高経営者での承認を受けているか? |
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第3章 |
Q5.内部監査人(部門担当)は必要な能力を有し、日常的に研鑽しているか? |
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Q6.内部監査人として「正当な注意」を払い、留意すべき9項目を理解しているか? |
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第4章 |
Q7.「品質管理プログラム」が策定され、保持できているか? |
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Q8.品質管理プログラムには、自己評価(年1回の定期自己評価と継続的モニタリング)と外部評価(組織体外5年に一度)が組み込まれているか? |
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Q9.品質管理プログラムによる評価結果は最高経営者と監事に報告されているか? |
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第5章 |
Q10.内部監査部門の中長期計画が策定されているか? |
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Q11.監査計画は、リスク評価に基づいて優先順位が決定されているか? |
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Q12.内部監査計画は最高経営者に報告され承認を受けているか? |
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Q13.監査計画を実施するために必要な人的資源・インフラ・資金は確保できているか? |
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Q14.監査計画策定に際して、監事・会計監査、その他の関連部署との調整はできているか? |
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Q15.監査結果は、最高責任者へ定期的に報告されているか? |
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第6章 |
Q16.監査対象範囲は、経営諸活動全般となっているか? |
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Q17.ガバナンス・プロセスの有効性を評価し、改善に貢献しているか? |
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Q18.リスク・マネジメントの妥当性及び有効性を評価し、その改善に貢献しているか? |
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Q19.コントロールの妥当性及び有効性を評価するとともに、業務諸活動の合法性と合理性を評価し、効果的なコントロール手段を維持するよう貢献しているか? |
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第6章の解釈 |
Q20.監査範囲は、監査対象部署の「目標・運営体制・リスクマネジメント・統制及び法令順守」を適切に含んだものとなっているか? |
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第7章 |
Q21.個別監査では、目標・範囲・時期・資源等を含む計画が策定され、部門長による承認がされているか? |
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Q22個別監査前に、予備調査を行っているか? |
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Q23.監査にあたって、十分かつ正確・適切な監査証拠の取得と、評価と結論をえているか? |
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Q24.監査結論に至る過程を正確に調書として記録し保存・管理しているか? |
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第8章 |
Q25.監査結果は、監査対処部署へ文書で報告し、指摘事項に関し適切な措置を講じる手続きが取られているか? |
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Q26.内部監査報告書の内容は実効性の高いものとなっているか? |
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Q27.監査によって得られた情報保護・秘匿事項は順守されているか? |
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Q28.アドバイザリー業務を行った場合、対象部署のニーズに応じたものとなっているか? |
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Q29.フォローアッププロセス(是正措置確認)は適切に実施されているか? |
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第9章 |
Q30.会計士・監事との連携(三様監査)はできているか? |
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(4)ピア・レビューの勧め
l 少人数の内部監査部門(1名~3名程度)では、監査員個人の専門性に依存するケースが多くまります。だからこそ、内部監査部門の品質評価は重要になるのですが、外部へ委託するにはコスト負担が大きすぎる問題があります。
l そこで、自己評価と独立した検証方式(SAIV:Self-Assessment with Independent Validation)を採用することが有効だと考えます。
l 全国の生協では、地域単位の交流会が広がっていますし、事業連合単位での組織的な連帯・連携も進んでいます。この単位で、お互いに評価者を提供し、ピア・レビューを実施することを推奨します。事業連合単位での相互評価を行う事は、単協固有の課題だけでなく、事業連合単位の課題を発見できるという副産物も得られるとともに、スキルの交流や向上にも寄与できるとおもいます。
l 初めから、品質評価と考えず、まずは、それぞれが取り組んでいる監査の実態を交流することを通じ、問題を共有する関係になる事から取り組みましょう。
l また、監査手順などもおそらく大きく違っている事も想定されるため、標準となる監査プログラムを持つ事が必要になるでしょう。私から提供している「内部監査指針」なども参考にしていただければ幸いです。
少し回りくどい記述も多いのですが、品質管理に関する概念やプロセスはご理解いただけるのではないでしょうか?特に、地域単位で交流会が広がる中、こうした品質管理の取り組みをキーワードにすることで、必然性が生まれ、切磋琢磨できる環境整備にもつながるはずです。
品質管理プログラムのご興味を持たれ、基本仕様書やチェック表等もご覧になりたい方がいらっしゃれば、原版をお送りいたしますので、メールいただければ幸いです。
メールアドレス:sadanobusirai@gmail.com
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