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宅配事業の業務監査ポイント(20180406) [4-監査実施のポイント]

事業毎の監査のポイントを整理しておきましょう。
共通事項は、以下の4点でした。
 ①方針・計画の確認  ②事業進捗の確認  ③コンプライアンス点検  ④リスク認識の確認
この4項目で、かなり、監査対象との目線合わせは出来るはずです。おそらく、その後の監査重点も明確になってくると思います。

では、まず初めは、宅配事業です。
宅配事業の特性からポイントは3点です。

1)システム化された業務だからこそのポイント
*殆どの生協で、宅配事業はシステム化され、細目までルール・手順が整備され、供給管理もデータ化されていると思います。
*配達担当者は、標準化された作業を求められますから、ミスやトラブルは発見されやすいのが特徴です。
*だからこそ、ミスやトラブルの是正と再発防止を図るには、ルールや手順・システムの変更が必要になります。PDCA サイクルの「チェックと改善」が機能しているかを監査する事が重要です。

*担当者の業務日報から、問題事象を発見し、是正・改善が有効になっているかを管理者が日常監視できているかを詳細に把握する必要があります。
*業務日報や管理者の報告書などを点検し、一つ一つの問題事象にどう対処しているか、疑問が生じた場合、ヒアリングを通じて確認する事です。

2)見えない「配達現場」を把握する。
*配達担当者が出発して帰着するまでの間の、配達現場の状況は、同行しない限り判りません。また、同行したとしても、限られた範囲しか判りません。これは管理者も監査も同様です。
*合理的で効率的かつ正確な配達、組合員(利用者)が満足する配達が行われているかは、配達記録や業務日報などを丹念に読み解くことが重要です。また、組合員からの申し出(意見・要望・クレーム)も重要な情報源となります。

3)配達を支える物流(倉庫)業務や事務業務の監査
*宅配事業の業務プロセスは、大まかに、受注(注文受付)・商品セット・コース仕訳(出庫)・配達・請求という流れです。また、新規登録(加入)や休止・脱退等の組合員動態、未収金管理、電話対応等といった事務業務もあります。
*これら、事務や物流業務が適正に連携することで宅配事業は成り立っています。したがって、事務業務や物流業務のプロセスにも焦点を当てて監査する事が
必要です。
*現場点検では、物流(倉庫)作業を見る事。全体の流れ、個々の作業員の動き、ドーリーやシッパー(マテハン)の管理状況、導線、作業スペース等を丁寧に確認します。労災事故の多くが倉庫内で発生していますし、商品事故の要因にもつながります。
*事務作業では、おそらく多くの生協でパソコン・イントラネットの活用が広がっていると思います。また、事務作業は多岐にわたっていますので一つ一つを点検するのは難しいと思います。リスク(事業リスク)の大きい作業に絞って点検することが必要となります。


〇私は、センター監査の重点項目に、安全運転管理と商品管理にかなり時間をかけていました。
*安全運転に関しては、長年の取り組みにも拘らず、事故や違反は絶えず発生しており、特に、近年は、パート配送比率が増加し事故発生が増加していたからです。違反も増加しています。交通事情は、昔の様に「路上駐車」が許されなくなってきましたし、サービス過剰で狭い路地まで入り込むような危険運転も一向に減らない現状があります。また、最近の新規採用者の中には、日常的に運転はほとんどしたことがないというケースもあり、予想外のトラブルが増えています。

*また、商品管理では、イレギュラー発注(電話などによる追加や返品・交換)と、良品返品処理に注意をしてきました。システム化が進む中で商品管理に関する意識も低下傾向も感じられます。不正の温床になりかねない事態も想定されます。担当と事務・管理者が相互の牽制意識をもっているかどうかも重要です。


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店舗事業の業務監査ポイント(20180409) [4-監査実施のポイント]

店舗の業務監査のポイントは4点です。

1)売り場は、業務結果を表す場所
*店舗の規模の大小にかかわらず、どの売り場も、店舗職員の業務が直接反映する場所であり、商品管理・品質管理・衛生管理・表示管理等行き届いているか判断できます。店舗の業務監査では、売場の点検は必須です。業務監査の時間だけ足りなければ、別途、点検日を設定すると良いでしょう。

〇私は、春と秋の2回、全店舗の売り場点検を行っていました。これは、隣の生協の内部監査担当に教わったやり方でした。すべての売り場の、温度管理・衛生管理・表示・期限管理などを丁寧に点検します。特に、日付(期限)については、まさかこんなものが期限切れになどと驚くことがありました。また、一定の売り場範囲で、表示や期限の管理がおろそかになっている事もわかり、結局、人の力に頼って、任せっきりというパターンも多い事もわかりました。一つ一つ不備を発見し是正・補正するのは容易ではありませんが、組合員(来店者)のサービス向上に重要なポイントだと思います。

2)加工場・バックヤードは業務トラブルやミス発見の宝庫
*売場管理が行き届くと、バックヤードや加工場の隅には、不具合商品が集められているはずです。大量の廃棄品や不良在庫があれば、作業ミスが発生した証拠です。現場で、何が起きていたのかを確認することも必要でしょう。
しっかりとバックヤードや加工場を点検することが重要です。

3)伝票点検でイレギュラー発見
*仕入伝票は、今日的には殆どが電子決済となり、紙ベースの伝票は少なくなりました。帳票点検の際、「自店処理の伝票」があればじっくり点検します。
*自店処理するという事はイレギュラーが発生しているという事です。「赤伝」は何らかの不具合・ミスの証拠です。
*発生原因を確認することで、不適正な業務プロセスがあぶりだされます。また、システム上の欠陥という事もあります。

4)パート・アルバイト人数が多く、労務管理と業務管理は最重要項目
*早朝から深夜まで、店舗の業務時間は長く、数多くのパートやアルバイト等、ちょっとした規模の店舗でも100 名を超える雇用になります。
*勤務形態や時間設定も単純ではありません。店長や副店長・部門管理者等が全ての時間を監視できるわけもなく、様々な問題が生じやすいものです。
*個々の業務が日常的にどのように把握されているか、コミュニケーションはとれているか等、重要な監査ポイントです。


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福祉事業の業務監査ポイント(20180410) [4-監査実施のポイント]

私のいた生協は、福祉事業所(複合型)が25カ所あり、事業区分別では40カ所以上と、監査対象としては最もボリュームがある事業でした。
居宅介護支援事業・訪問介護事業・通所介護事業・福祉用具事業・小規模体機能型サービス事業・定期巡回随時対応型訪問介護事業・訪問看護事業・住宅改修事業・障害者総合支援法に対応した事業まで入れると多岐にわたる事業を実施していました。所属する職員・パート・ヘルパー等総勢1500人以上という規模にあり、なかなか大変な監査でした。

福祉事業の監査ポイントは3点です。
1)法令順守が最優先ポイント
*介護保険制度や総合支援法等の法令認可事業である事が最大のポイント。事業を実施する為には、有資格者の適正な配置が必須であり、業務内容も詳細に規定されています。監査では、こうした法令基準を満たしていることを保証する事が第一の課題とされます。
*運営規定・重要事項説明書・体制表・資格証明・事業所加算要件書類・利用者カルテ・介護記録類等の帳票点検が必須。

〇福祉事業所は、所管する行政による「実地指導」が定期的に実施されています。法令要件を満たしているかを細かくチェックされます。そのために、各事業所管理者は、指導日前日までに、様々な書類を整理し準備しています。それでも、厳しい指摘がされます。これと同等とまではいかなくても、重要な事項は確実に実施されているかどうか、内部監査がチェックすることは重要です。

2)専門職が多く、人事・労務管理も重要ポイント
*福祉事業は、専門職に支えられ、「長時間・重労働で過酷な現場」であり、女性の従事者が圧倒的に多く絶えず人手不足が発生しているというイメージがあります。また、職員も途中採用者が多い事や多様な勤務形態・雇用形態をもっています。そのために、人事・労務管理に関する監査は重要です。
*専門職(ケアマネジャー・訪問介護等のサービス提供責任者)は、専門性が高く、完結型の仕事が多いため、長時間勤務になっても、内部で協力・補完することが難しいと考えられています。ある種「丸投げ」状態にあるとも言えます。だからこそ、勤務実態をしっかり点検し、労働基準法が守られているかをしっかり評価しなければなりません。管理者によるマネジメントが難しいからといって放置することはできないのです。

3)会計処理・保険請求事務もポイント
*供給事業と違い、収入は保険請求が中心であり、保険収入の請求や利用者からの集金等の会計処理も複雑になっています。度重なる制度改定により、基本収入だけでなく、加算や補助等も多様にあり、しっかり対応しなければ、みすみす収入を手放している事もあります。しかし、福祉現場の職員は、有資格者とはいえ、会計処理までは習得できていない(研修では収入に関する教育はない)ため、詳細を理解していないケースも多いのです。会計処理・保険請求事務に関する監査も必須です。
*保険請求は、「国保連審査」を経て入金されます。国保連審査結果(返戻・保留)に着目すると、各事業の業務ミスが発見されるため、注意深く確認することが必要です。
*会計処理上では、保険請求も行政収入も個人収入も、すべてが一旦は「未収金」に計上され、2か月から3ヶ月後に入金され処理できます。経理部門でもこうした仕組みを適切に理解できていないケースもあります。決算の正確性にかかわる問題であり、福祉事業と経理部門との連携も考慮する必要があります。


〇福祉事業の監査に関しては、もう少し、詳細に解説する必要がありますので、別途掲載します。

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福祉事業の監査の実際(20180411) [4-監査実施のポイント]

内部監査の交流会などでは、「福祉事業は専門職の領域で監査が難しい」という意見を数多く耳にしました。確かに、福祉事業(介護サービス)は、居宅介護支援専門員や介護福祉士などの資格を有する専門職が担う業務であり、専門用語も多く、簡単に監査できるものではありません。

しかし、それは、福祉事業に限った話ではなく、宅配事業や店舗などの事業も未経験者にとっては福祉事業同様に難しいはずです。

以下に、福祉事業監査を実施するにあたり、最低限理解しておくべきことをまとめました。
専門用語は多いですが、福祉事業の概要やフローなどを大まかにまとめましたので、参考にしていただければと思います。

1)生協の福祉事業
*「高齢者、障碍者などの福祉」は、国の社会保障制度の中で様々な施策があり、関連する法律も多数あります。また、事業・サービスは、行政・社会福祉法人・NPO・株式会社等、様々な形態で実施されています。
*現在、多くの生協では、「介護保険法(制度)」に基づくサービス・事業(これを「指定介護事業」という)と、「総合支援法」に基づくサービス事業とそれに付随する事業を実施しています。
*いずれも、法律に基づく事業であるため、行政への届け出・認可手続きが必要で、法令順守が不可欠です。

2)事業の種類
①介護保険制度に基づく主な事業
 *居宅介護支援事業
 *訪問介護事業
*通所介護事業
 *入所生活介護事業
 *福祉用具貸与事業
 *特定福祉用具販売事業
 *住宅改修事業
 *訪問看護事業
 *定期巡回・随時対応型訪問介護事業
 *認知症対応型通所介護事業
②障害者総合支援法に基づく主な事業
 *計画相談支援事業
 *居宅介護(ホームヘルプ)事業
 *重度訪問介護事業
 *同行援助
 *生活介護事業(入所・通所)
③その他の事業
 *地域井包括支援センター(受託)事業
 *福祉用具販売事業
 *生活支援事業(生活支援型訪問サービス事業)

細かい事業区分を入れるとさらに多くの区分になると思います。

3)法令遵守に関する事項
*法令基準を満たし、行政の認可を受け、事業を実施するには以下の書類が備わっていることが求められますので、内部監査でもしっかりと点検します。
①備付書類
 *届出(新規・変更申請)・認可書
 *運営規定、勤務体制表、資格証明書(全員)
 *契約書及び重要事項説明書・個人情報に関する同意書
 *個人情報保護に関する基本方針(掲示)

②法定記録類
 *利用者カルテ(ファイル)
  ・契約書・重要事項説明書(説明者と確認者)・個人情報の同意書
  ・介護認定証明記録
  ・アセスメントシート・主治医意見書
  ・サービス担当者会議記録
  ・ケアプラン・個別援助計画書・サービス手順書
  ・介護記録・モニタリング記録
 *サービス提供に関する「事故報告書」「苦情記録書」
 *事業所加算要件に関する記録類
  ・一定の条件を満たすことで介護報酬の算定加算がされる制度で、行政ごとで要件に違いがある。要件を確認し必要書類を点検。

4)注意すべき事項
*前述の法令基準に関する項目は、行政による実地指導で丁寧に検査される内容であり、専門的な知識が相当必要になります。実地指導と同レベルで監査を行う事は不可能なため、監査の際には、管理者に対して、重要なポイントを説明いただき、確認していくことが必要です。
*内部監査で重要なのは、管理者が自部署の業務プロセスを把握し、日常手金監視し、不具合を発見して速やかに是正・改善できているかを確認する事です。

①監査の初めは「事業所の運営規定(行政届出書類)」から
・運営規定には、事業所名・所在地から、管理者・体制・営業日や時間等細かく記載されている。まずは、運営規定に記載されている事項が確実かを確認する事から始める。

②次に、「重要事項説明書」が基準
 ・「重要事項説明書」は利用者に対して、具体的なサービスに関する取り決めが記載されており、事業所加算(利用料金に連動)も記載されている。記載事項を満たしているかを確認する。

③「利用者カルテ(ファイル)」は専門職の業務の結果(業務品質の評価)
・利用者カルテは、多数の様式の記録がファイリングされている。それぞれ、利用者ごとに、ケアマネ・サービス提供責任者・生活相談員が決まっており、利用者とのやり取りを見る事ができる。
・業務プロセスに応じて、記録を保存する事を法令で定めており、正確な業務が行われていれば、完備しているはず。
・書類の抜けや不備は、業務ミスと判断する。利用者サービスに直接影響する事項もあるため、厳しく指摘する必要がある。

④「苦情受付記録」と「事故報告」「ヒヤリハット」を活用する
・介護サービスにおける苦情や事故は、記録し重大なものは行政報告する事が法令で求められている。この間の記録を閲覧し、是正と再発防止策が有効かを点検する。介護事故(身体危害事故)の重要性は認識しやすいものの、再発防止策が不充分なケースが多く課題にもなっている。
・事故防止(リスク意識向上)の為、多くの福祉事業所では「ヒヤリハット」が定着している。中には事故と判断すべきものが混ざっている事があり、閲覧し確認する。

⑤是正・改善の決め手はコミュニケーション
・それぞれ、有資格者による専門業務であるため、管理者の指導・マネジメントは難しい側面がある。だからこそ、職場会議や事業ごとの会議や、報連相が充実している事が、改善の力になる。
・監査で発見された不適合指摘が改善に繋がるか、発生の原因(真因)を管理者とじっくり確認し、事業所内で検討できるよう、より具体的な改善提案にまとめる事が肝要。

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受託共済事業の監査ポイント(20180412) [4-監査実施のポイント]

共済事業は、保険法・保険業法(準用)・金融商品販売法などの法規制があり、共済事業を受託した生協は「代理店」として要件を満たしておくことが重要です。

〇受託共済事業の監査のポイントは3つです。
1)コープ共済連による「共済業務点検」結果の重視
共済連は、「共済業務点検マニュアル」に基づく訪問点検を行っています。
点検が行われた場合、その結果を確認することが必要です。
共済連による訪問点検では、「代理店の委託・届出」を始めとして、募集人管理態勢・個人情報管理態勢・苦情等対処態勢の全般を点検され、内部監査の結果同様、是正や改善の指摘が示されています。
内部監査に当たっては、まず、その結果はどうだったのか、指摘事項の座性や改善は進んでいるかを点検することから始まります。

2)内部監査では「適正な共済業務」となっているかが重点。
「適正な共済業務」のポイントは、①共済募集管理態勢、②個人情報管理態勢、③苦情等対処態勢の3 点。(詳細は以下の設定参照)
 事業連合・共済連合会などへ、共済の事務処理など業務を委託している場合、共済部局において、委託業務が明示され、適宜点検する体制があるかも項目に加えます。
3)会計処理もポイント
受託共済収入には多種の細目があり、共済連からの通知をもとに、経理処理において、適正に計上されているか検証する必要があります。
収入を現場事業所へ振り分けている場合、適正な根拠(加入件数や共済金収入の実態)があるかを検証します。
私は、月次の収入計上データを共済部局から提出を受け、計上額の検証を行っており、定期業務監査では割愛していましたが、年度替わりの月は、組織体制の変更や管理者交代などで事務処理の理解に間違いが起きやすく、注意が必要でした。

◆監査項目の設定事例
1)共済募集人管理態勢
 ①「共済推進ガイドブック」などの基準書の配置
 ②募集を行う職員の研修の記録
 ③コンプライアンス研修の実施記録
 ④不適切募集行為の原因分析と再発防止策の策定
 ⑤広報宣伝の運用管理

2)個人場管理態勢
 ①安全管理態勢-個人情報管理台帳・持ち出し記録等の運用
 ②パソコン管理態勢(データ暗号化・アクセス制限・事業所とのやり取り)
 ③外部委託先の管理(DM等の作成委託先)

3)苦情等対処態勢
 ①苦情処理の記録と報告のルールと運用
 ②役員への報告手順と実施
 ③苦情・事故の分析
 ④再発防止策の有効性

〇受託共済事業をどのような組織体制で行っているかは、各生協で異なると思いますが、基本的に、組織全体の事業を取りまとめる部署はあると思います。共済加入の目標・計画策定や実績管理、共済連からの収入管理等、現場との連携がどうなっているかが、実際には重要な要素です。共済管理部署が、如何に募集人管理や個人情報管理・苦情処理態勢を強化しても、組合員に接する各事業所(宅配センターや店舗等)が、適切な運用を行わない限り、コンプライアンス上のリスクや、事業リスクは低減できません。

〇コープ共済連の業務点検は、ほとんどの場合、生協全体の管理部署が対象となっており、現場の運用にまでは入っていません。したがって、センターや店舗の業務監査において、共済事業に関する業務管理は重要なポイントとして織り込んでおくことです。そして、センターや店舗の業務監査の結果を「共済事業」に絞って再評価し、管理部署(共済事業部署)の監査の基礎資料とする必要があります。

〇共済事業を推進する現場の実態とそれを統括・管理する共済管理部署の両方をしっかり監査することは、内部監査にしかできない役割であり、経営に資する監査として有用なものと言えます。

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「テーマ監査(経営監査)」のポイント(20180413) [4-監査実施のポイント]

 事業所や管理部署を対象とし、マネジメント全般を包括的に監査することを「業務監査」(「拠点監査」「事業所監査」など)と呼びます。
 一方、ある一定の管理領域・プロセス(テーマ)に絞って組織横断的に実施する監査を「テーマ監査」あるいは「経営監査」と呼びます。

 業務監査が如何に「包括的監査」であったとしても、監査における指摘・改善提案は、「部分最適」になりがちです。それに対して、「テーマ監査」は、組織横断的に実施することで「全体最適」を志向する指摘・改善提案を導き出すことができます。

 テーマ監査は、「点検対象及び項目を絞って行う限定的調査であるため、監査リスクを孕んでおり、正当な監査(包括的監査)ではない」とする否定的な意見(日本内部監査協会・川村眞一氏著:現在の実践的内部監査参照)もあります。
 しかし、近年、監査法人のHOWTO 本や最近の研究著作を見ると、「組織横断型の監査は経営監査(経営領域監査)として有用」という意見が多くなってきています。
 
 それは、組織体の構造がピラミッド構造からネットワーク構造へ変化し、IT 化の進展で業務プロセスが場所に特定されない実態が増加してきたことで、従来の「現地監査」「往査」に頼る「包括的監査」だけでは不充分と考え、新しい監査の在り方を求められるようになったことの表れと考えます。

〇テーマ監査を実施する際のポイント
1)重点リスク(組織全体の共通重点リスク)をテーマ候補にする。
リスク・マネジメントを実施しているところでは、各部署・部門からリスクの洗い出しを行い、影響度×発生頻度から重点リスクを抽出し、内部統制の強化課題とし、年次進捗管理(四半期や半期で評価し改善する)する形を取られていると考えます。
テーマ監査は、重点リスクへの対応(統制強化)の評価を行う手法として有効であり、現業部門と管理部門の両方への実査を行い、各プロセスの連携性や有効性を評価する事で、問題の真因を特定することができます。

2)業務監査(事業所監査)からの展開
・業務監査によって、特定の部門・部署ではなく「共通する問題事象」と推察される事象が発見された場合、その問題事象に限定して、他の部門や管理部門に対象を広げて、真因特定と対策検討を進めるために、監査します。

3)不正・不祥事・事故からの展開(特別監査・特命監査の重複する)
・内部統制・リスク・マネジメントなど組織防衛の仕組みを強化しても、残念ながら、不正や不祥事・事故を完全に防止することは難しい。重要なのは、原因が特定され有効な再発防止策が取られ、一定の機能を果たしているかです。
・定期的に実施する業務監査でも、過去の問題への対処は重要な監査項目となりますが、特に重要な事項をテーマに設定し監査することで牽制機能が高まります。


〇テーマ監査の難しさは、幾つもの部署に対して、同じ深度で監査を行い、問題事象を類型化して、原因・真因を統制システムの欠陥につなげるという思考を持ち続ける事にあります。ともすれば、結果ありき(想定シナリオに有効な事象のみを採用し、客観性を損ねる事)になりがちという問題を孕み、内部監査の独善的な結果を導き出してしまうことになりかねません。

〇現場監査に問題事象を発見した時、部門全体あるいは組織全体に潜んでいるかどうか、対象を広げ、さらに調べていく必要があるかを判断する能力が求められます。そうした懸念がある場合、私は、代表理事に相談することにしていました。テーマ監査として、経営層として重視すべき問題なのかを相談することが、内部監査の先走り・独善を防止すると考えています。

〇テーマ監査の結果は、かなり重いものです。内部統制システムや個別システム・プロセスの大幅な変更、あるいは、組織構造をも変えざるを得ないような結果を導き出す事もあります。そういう点をしっかり踏まえ、慎重かつ大胆に取り組むことが必要だと思います。

(この後の項目で少し事例紹介していきましょう。・・あくまで想定事例ですので若干無理はあると思いますが、リアルなものは「秘匿義務」がありますのでご了解ください)

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