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「宅配事業:商品管理」に関する監査② [5-監査事例]

センター監査における「商品管理」の監査では、倉庫内の目視点検とセンター事務作業は定番です。

 

今は、ほとんど、商品(供給品)は、事業連合等の集中物流センターで「個人別パック」の状態でセンターへ入荷しています。「発泡スチロールの箱」の山が整然と入荷し、コース番号や個人記号が貼付され、間違いないよう仕訳できる仕組みで運用されています。大型商品もコース別入荷が増えていて、ヒューマンエラー防止策は万全です。

だからこそ、倉庫内を点検すると、イレギュラーが発見しやすい状態です。配置場所以外ある「商品」や「パック品」は何らかの問題があるわけです。これを発見した場合、必ず、周囲にいる物流パートに確認します。即座に回答が返ってくれば、まだ、管理された状態と言えますが、「判らない」という事があれば、何らかの管理ルール上の問題があるはずです。これは、ヒアリングの中で確認する材料になりますので、写真で残します。

 

また、倉庫内には、「お誘い用のサンプル商品」や配達ミスや追加発注などの「預かり品」もあります。それぞれ、管理ルールがあるはずですので、担当者が居ればその場で確認します。

冷蔵庫・冷凍庫内も点検します。ほとんどは「個人別パック」で入荷していますので、商品が見える状態にはないはずですが、冷蔵庫や冷凍庫の隅に棚が設置されていて、商品が置かれているようであれば、イレギュラー発生の可能性がありますので理由を確認することになります。こうした実態を記録(写真)に残して置き、担当者や物流パートなどから聞いた事項も記録します。それは後で管理者ヒアリングの材料になるわけです。

 

事務所内の点検では、事務パートの業務が主要な対象となります。

 

今の配達業務では、センター事務の業務が大きくかかわってきます。

私のいた生協では、担当者のモバイル使用前から、注文の訂正や返金等は担当者からの報告(申請)に基づき事務パートが一括処理する仕組みで運用されていました。ですから、イレギュラーな対応は全て事務パートが把握することになります。そして、全ては「当日加減算票」「追加発注書」という記録に残ります。これを1か月分点検します。じっくり見ていくと、特定の担当者が著しく当日加減算票や追加発注が多かったり、特定の組合員からの返金要請が多かったり、不自然なものが目に付く等の特異点が発見されます。実は、これは事務パートが一番認識している事なのです。

ですから、書類点検前に少し事務パートからも話を聞きます。意外に皆さん正直に問題を教えてくれますし、中には、仕事の進め方に疑問を抱えていて相談されることもあります。本来であれは、副長や事務管理者が適切に対処すべき事項なのに、相談できない事情を抱えているケースがあります。これは、管理者ヒアリングの格好の材料になるわけです。

こうした、小さな点検を積み上げながら、センターのマネジメントの課題や商品管理に関する課題を抽出する作業が現場の監査でエネルギーを使うところになっていました。

 

こうした監査の中で、極めて重要で深刻な問題が発見されました。(ごめんなさい。不正発見の事例もありましたが、情報漏えいになりかねませんので、少し皆さんのところでも共有できるものにしています)

 

発見したのは「返品商品の管理」の問題です。

 

Aセンターでは、事務所入り口の長机の上に、ビール・お米・調味料・菓子類が並べられていました。その横に「組合員価格3割引きで処分。購入者はお金を箱に入れてください」の表記と紙の箱が置かれていました。その表記にはセンター長名が記載されているのです。紙箱を振ってみると、お金の音がしました。

Bセンターでは、同じように商品が置かれた場所の脇に、記録表が置かれて、商品名と購入金額と購入者氏名が記録されていました。価格は組合員価格(定価)でした。

Cセンターでは、そのようなものは発見されませんでしたが、休憩室に少量の「商品(飲料)」が積まれていて「処分品。ご自由にどうぞ」と書かれていました。

Dセンターでは、昼時間に冷蔵庫前に物流パート・アルバイトの皆さんが集まっていて、何をしているかを確認すると、冷蔵庫・冷凍庫にあった在庫商品(返品?)を副センター長が並べて、パートの皆さんへ分けているところでした。一応、代金は戴いているようでしたが、半額で設定しているとの事でした。

 

これはかなり深刻な問題です。

 

返品商品は、以前には考えられなかったことです。班共同購入が主流の頃は、例え注文ミスであっても、班の中で調整し買い取ってもらったり、他の班で引き売りしたりして、基本的に返品は受け付けないようになっていたからです。しかし、現在では、引き取り不能の商品は返品を受ける事が基本ルールになっていて、大型センターでは、その返品量は尋常ではありません。

そして、これら返品商品の処分について、残念ながら、共通のルールが存在していなかったのです。すべて、センター長の裁量の中で処分するというのが暗黙のルールになっていたのです。ですから、3割引や2割引や半額、中には経費処理して処分などと、さすがに着服するようなことはないように見えましたが、確証は得られませんでした。また、現金徴収も問題でした。処分による供給現金は本来、供給に計上され入金すべきですが、別管理し流用している事も発見されました。これは、あきらかに不正です。

 

不正や横領の温床になっている事を厳しく指摘せざるを得ない状況でした。

 

月例の監査報告で、「返品商品の管理において、センターごと独自ルールで運用され、実態として、横領や現金不正につながるリスクが高い状態にありました。一部ではすでに現金管理上の不正(流用)も見られました。」と専務理事へ報告しました。

専務理事も宅配センター長を経験されており、実態が依然と様変わりしている事に驚かれ、是正・改善の必要性について確認いただけました。その上で、事業本部長に対して、是正・改善の指示が出されました。

まずは、宅配事業本部が、統一のルール(返品商品管理ルール)の整備を進めました。返品商品の一覧化と処分記録の保存、買取りの際には現金ではなく加減算票による処理(引落)限定など、かなり細かい運用ルールが整備されました。価格設定も低下処分を基本にすることになりました。

しかし、これだけでは、大量の処分には耐えられない事態があり、事業連合への返品拡大や「セカンドハーベスト(フードバンク)」の活用拡大についても検討が進み、ドライ商品に関する管理はかなり前進しました。生鮮品に関しては、基本廃棄というルールとなりました。

これですべての問題が解決したわけではありませんが、不正(着服や横領)防止策としては一定の効果はあると考えられます。また、今回の監査指摘を通じ、組合員からの商品返品の在り方について、組織的な議論が進み、センター内でも問題の本質について協議も出来、全体として、返品量がやや減少したとの報告も聞きました。

 

商品管理については、この問題以外にも、サンプル商品(おさそい用)の管理、深夜早朝の無人入荷時の管理、追加発注や返金処理の管理、等について、年次で取り上げ指摘し是正改善を進めてきました。

システム化され、分業化が進む中で、想定されなかった問題は必ず生まれてきます。それが、それぞれのプロセスのはざまで発生した場合、容易に是正・改善できない事もあります。

また、この事例の様に、一つ一つの事業所では完結している事でも、本来共通・統一されているべきルールがバラバラになっていて、それが大きな問題であることに気付く人・部署がないケースもあります。こうしたことを繋ぎ、埋めていくのも、内部監査の重要な役割であり、より多くの部署・事業所の監査を計画し、効果的な監査に取り組むことが必要だと考えます。

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