SSブログ

テーマ監査③不祥事・事故などからの設定事例(20180418) [5-監査事例]

 

外部指摘や不祥事・事故などからの「テーマ監査」として、会計士監査の指摘をもとにした例を紹介しましょう

 

①監査目的

l  会計士による経理部点検の際、講師料などの報酬計上プロセスで、源泉徴収額の誤謬が発見され、改善指摘を受けた。会計処理ミスの要因特定と再発防止のために、経営管理部同席にて監査する。

 

②実施要領

l  会計士指摘事項の追加確認(不適切処理の具体的事象の確認)を行った後、講師料など報酬支払いが発生する部署(組合員活動にかかわる部署・機関運営にかかわる部署)で、講師料決定にかかわる文書と支払申請手順、作成記録を検証。

調査結果をもとに、経理部の処理データと突合。経理処理手順の確認。その上で、経理部と経営管理部合同で、手順の再整備の協議を行い、再発防止策を確定する。(内部監査はアドバイザリーとして関与)

 

③監査結果

l  追加確認では、当年4月から9月までの半年間の、経理処理帳票を点検し、5件で源泉徴収額が計上されていない事が判り、修正申告を行ったことを確認した。

l  発生部署から、該当の5件に関する支払決定文書と支払申請書を取り寄せ、内容を確認したところ、源泉徴収に関する記載が抜けており、報酬額において、源泉額を引いた形での支払いを合意したものがなかったことが判明した。

l  それぞれの申請者へヒアリングしたところ、いずれも、源泉徴収に関する知識を持ち合わせておらず、講師からの請求額をそのまま支払資申請書に記載したことも判明した。

l  経理部及び発生部署それぞれに、講師料などの報酬支払いに関する手順書を確認したが、手順書や規程類は存在していないことが判った。

l  申請及び支払い処理については、熟練の経理担当者の作業内で進められており、今回の5件は、同一パートによる処理作業であり、点検作業は、個別ではなく、一括処理(表紙作成)となっている事も問題と判明した。

 

④結果から導き出せるもの(所見)

   講師料など報酬支払いに関する規程・手順が未整備である事が第一の問題である。結果、属人的業務となっており、現状では同様のミスが防止できない。(Pの問題)

   申請決裁及び支払い処理は、他の申請と同様の手順が適用されるが、個別決済ではなく、日次分のとりまとめ決済処理となっており、個別申請の承認決済は、発生部署(管理者)の承認のみとなっており、現場での決済ミスを発見できる手順が実施されていないことも問題であった。(Cの問題)

 

⑤指摘すべき事項として

   講師など源泉徴収を必要とする支払に関する手順を策定し、発生部署及び経理部内に周知する事が必要である。手順に関しては、職務権限規程及び経理規則との整合性を図るため、経理部及び経営管理部合同で、検討し策定を進める事。

   今回の件では、経理部内の業務分担において、作業者と点検者が不明確で、点検不備が発生しており、他の経理処理においても、ミス防止策が不完全と言える。経理作業全体において、作業と点検・承認の役割の正常化が必要。

 

⑥トップへの提言

   経理部における経理作業のPDCAが未確立な部分が発見されました。経理作業は、税法などの法律への対応も多岐にわたっており、専門知識を必要とする領域も広いため、高度なスキル・知識習得は欠かせません。一方、事務作業はパート職員が多くを担っており、職員による監視点検も重要となっています。経理を担う職員の育成に注力いただきたいと考えます。

 

〇このような事例はレアなものかもしれません。ただ、トップへの提言でも述べたように、経理は、かなり高度な専門知識を必要とする業務です。熟練の職員によって担われるところも少なくありません。そのために、手順整備がおろそかになっている事象はきっとあるはずです。

 

〇内部監査では、そうした専門領域への監査には限界があるため、事例の様に、経営管理部等の専門職との合同での監査(ピアオーディット)が有効です。時には、会計士の力もお借りするのも必要かもしれません。あとの項目で述べるつもりですが、法定監査との連携(監事・会計士)は、ただ、監査情報の交換に留まらず、連携して監査することも視野に入れて進めることが今後さらに必要となると思います。


nice!(0)  コメント(0)