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福祉事業の監査の実際(20180411) [4-監査実施のポイント]

内部監査の交流会などでは、「福祉事業は専門職の領域で監査が難しい」という意見を数多く耳にしました。確かに、福祉事業(介護サービス)は、居宅介護支援専門員や介護福祉士などの資格を有する専門職が担う業務であり、専門用語も多く、簡単に監査できるものではありません。

しかし、それは、福祉事業に限った話ではなく、宅配事業や店舗などの事業も未経験者にとっては福祉事業同様に難しいはずです。

以下に、福祉事業監査を実施するにあたり、最低限理解しておくべきことをまとめました。
専門用語は多いですが、福祉事業の概要やフローなどを大まかにまとめましたので、参考にしていただければと思います。

1)生協の福祉事業
*「高齢者、障碍者などの福祉」は、国の社会保障制度の中で様々な施策があり、関連する法律も多数あります。また、事業・サービスは、行政・社会福祉法人・NPO・株式会社等、様々な形態で実施されています。
*現在、多くの生協では、「介護保険法(制度)」に基づくサービス・事業(これを「指定介護事業」という)と、「総合支援法」に基づくサービス事業とそれに付随する事業を実施しています。
*いずれも、法律に基づく事業であるため、行政への届け出・認可手続きが必要で、法令順守が不可欠です。

2)事業の種類
①介護保険制度に基づく主な事業
 *居宅介護支援事業
 *訪問介護事業
*通所介護事業
 *入所生活介護事業
 *福祉用具貸与事業
 *特定福祉用具販売事業
 *住宅改修事業
 *訪問看護事業
 *定期巡回・随時対応型訪問介護事業
 *認知症対応型通所介護事業
②障害者総合支援法に基づく主な事業
 *計画相談支援事業
 *居宅介護(ホームヘルプ)事業
 *重度訪問介護事業
 *同行援助
 *生活介護事業(入所・通所)
③その他の事業
 *地域井包括支援センター(受託)事業
 *福祉用具販売事業
 *生活支援事業(生活支援型訪問サービス事業)

細かい事業区分を入れるとさらに多くの区分になると思います。

3)法令遵守に関する事項
*法令基準を満たし、行政の認可を受け、事業を実施するには以下の書類が備わっていることが求められますので、内部監査でもしっかりと点検します。
①備付書類
 *届出(新規・変更申請)・認可書
 *運営規定、勤務体制表、資格証明書(全員)
 *契約書及び重要事項説明書・個人情報に関する同意書
 *個人情報保護に関する基本方針(掲示)

②法定記録類
 *利用者カルテ(ファイル)
  ・契約書・重要事項説明書(説明者と確認者)・個人情報の同意書
  ・介護認定証明記録
  ・アセスメントシート・主治医意見書
  ・サービス担当者会議記録
  ・ケアプラン・個別援助計画書・サービス手順書
  ・介護記録・モニタリング記録
 *サービス提供に関する「事故報告書」「苦情記録書」
 *事業所加算要件に関する記録類
  ・一定の条件を満たすことで介護報酬の算定加算がされる制度で、行政ごとで要件に違いがある。要件を確認し必要書類を点検。

4)注意すべき事項
*前述の法令基準に関する項目は、行政による実地指導で丁寧に検査される内容であり、専門的な知識が相当必要になります。実地指導と同レベルで監査を行う事は不可能なため、監査の際には、管理者に対して、重要なポイントを説明いただき、確認していくことが必要です。
*内部監査で重要なのは、管理者が自部署の業務プロセスを把握し、日常手金監視し、不具合を発見して速やかに是正・改善できているかを確認する事です。

①監査の初めは「事業所の運営規定(行政届出書類)」から
・運営規定には、事業所名・所在地から、管理者・体制・営業日や時間等細かく記載されている。まずは、運営規定に記載されている事項が確実かを確認する事から始める。

②次に、「重要事項説明書」が基準
 ・「重要事項説明書」は利用者に対して、具体的なサービスに関する取り決めが記載されており、事業所加算(利用料金に連動)も記載されている。記載事項を満たしているかを確認する。

③「利用者カルテ(ファイル)」は専門職の業務の結果(業務品質の評価)
・利用者カルテは、多数の様式の記録がファイリングされている。それぞれ、利用者ごとに、ケアマネ・サービス提供責任者・生活相談員が決まっており、利用者とのやり取りを見る事ができる。
・業務プロセスに応じて、記録を保存する事を法令で定めており、正確な業務が行われていれば、完備しているはず。
・書類の抜けや不備は、業務ミスと判断する。利用者サービスに直接影響する事項もあるため、厳しく指摘する必要がある。

④「苦情受付記録」と「事故報告」「ヒヤリハット」を活用する
・介護サービスにおける苦情や事故は、記録し重大なものは行政報告する事が法令で求められている。この間の記録を閲覧し、是正と再発防止策が有効かを点検する。介護事故(身体危害事故)の重要性は認識しやすいものの、再発防止策が不充分なケースが多く課題にもなっている。
・事故防止(リスク意識向上)の為、多くの福祉事業所では「ヒヤリハット」が定着している。中には事故と判断すべきものが混ざっている事があり、閲覧し確認する。

⑤是正・改善の決め手はコミュニケーション
・それぞれ、有資格者による専門業務であるため、管理者の指導・マネジメントは難しい側面がある。だからこそ、職場会議や事業ごとの会議や、報連相が充実している事が、改善の力になる。
・監査で発見された不適合指摘が改善に繋がるか、発生の原因(真因)を管理者とじっくり確認し、事業所内で検討できるよう、より具体的な改善提案にまとめる事が肝要。

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