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SDGsと内部監査② [3-内部監査参考情報]

さて、では、この「SDGsの取り組み」について、内部監査としてはどのような関わりを持つべきなのでしょうか?SDGsの取り組みを「監査テーマ」に掲げて、監査を行う事が有効なのでしょうか?あるいは、まったく関わりのない領域なのでしょうか?

 

一つの答えが「SDG Compass」にありました。

SDGs Compass」とは、企業がいかにしてSDGsを経営戦略と整合させ、SDGsへの貢献を測定して管理していくかに関し、指針となるものです。

指針には、5つのステップが示されています。

1.SDGsを理解する 

2.優先課題を決める 

3.目標を設定する 

4.経営へ統合する

5.報告とコミュニケーションを行う

 

懸命な皆さまなら、これを見た時、気づかれたはずです。

この指針の5つのステップは、マネジメントのPDCAサイクルに他なりませんし、COSO内部統制キューブで示された「構成要素」と共通するものだという事です。

なおかつ、「経営戦略と整合」させることが指針の目的であることから、内部監査としても、経営領域の監査で、経営戦略(中長期計画や方針)が「SDGs」の視点と整合性を持っているかを切り口にするべきであるという事です。

 

私のいた生協では、在任中にはまだ、「SDGs」が組織認知されていない状況でした。

CSR推進事務局は、内容の理解と組織内への浸透をどう進めるかを検討していましたが、経営層(理事会)の協議・学習に取り組んでいる段階で、具体的な目標設定や取り組みまでには至っていませんでした。

今年度発行の「2017年度CSR報告」で初めてSDGsの記載がされていました。

記載内容は、前年度と比較し、整理はされているものの、個々の取り組みを、SDGsの目標と関連づけた(紐づけした)表現に留まっていて、まだまだ、これからというところだとおもわれました。今後、組織内議論が深まり、目標の理解度が高まる事でさらに良くなっていくと期待しています。

 

したがって、私自身、「SDGs」の視点で監査を行った経験はありません。ですが、これから内部監査をさらに向上させる為には、「SDGs」は監査視点にしっかりと入れていくことが重要だと考えています。

 

では、どのような監査が想定されうるか、仮に自分がこれから監査に取り掛かる事として、考えていきたいと思います。

 

 手がかりとしては、前述した「CSR報告書」があります。そして、おそらく、多くの生協では、機関運営部門や経営管理部門が情報を収集し、原案を作成し、組織討議を経て発行されていると思います。

 したがって、監査対象部署は、直接的には「CSR報告書作成部署」が妥当だと考えます。そして、間接的には、事業部門や支所・現場の監査に際して、「SDGsへの認識と取り組み評価」を監査項目に立て、ヒアリングや帳票点検などを通じて、実査することも重要でしょう。ISO14001認証生協では、当然、重要な監査項目になってくるはずです。

内部監査ガイドラインで示した「監査フレーム」が構築されているとすれば、経営監査(テーマ監査)として個別に実施するか、総合監査に仕立てて取り組むことが妥当でしょう。

 

次に、CSR報告書作成部署を対象とした「監査手続き」を考えてみます。

もともと、CSR報告書は、「生協の社会的貢献・社会的責任」について、どのように取り組んでいるかを広く知らせるものですので、その内容は、ほとんどの場合、年間の取り組み結果(エポックや数値報告など)を取りまとめたものとなっています。

幾つかの生協や日本生協連がだされているCSR報告書(社会的貢献に関する報告)を見て、ほぼ共通していると思われる事は、これまで継続的に進めてきた様々な活動や事業を、SDG17目標に関連づけているという事です。

フードバンクやユニバーサル就労の取り組み、森林資源を守る活動、産直事業における「環境保全や水資源保全」などの環境活動、施設の自然エネルギー活用・太陽光発電などの取り組み、子育て支援・子ども食堂などの取り組み・・等々、これまで長年培ってきた組合員に依拠した活動や運動、宅配事業や店舗などの商品事業を通じての取り組みなどが、SDGsの中でどの目標と関連しているのかを明示しているのです。

 

ある意味、報告書自体が、活動の検証結果であるわけで、それをもとに監査を行っても、事実の追認に留まり、余り高い成果は得られないでしょう。

 

では、生協の事業や活動に散りばめられている「SDGs」の目標への取り組み進捗を内部監査として、どのような視点で監査することが有効なのでしょうか?

重要なのは、「SDGs Compass」で示されている「5つのステップ」に沿って、導入・展開できているかを検証することだと思います。

 

1SDGsを理解する

 *「SDGs」が正しく理解されているか

 *理論的根拠が明示されているか

  視点:生協組織がSDGsの意義や重要性について理論的に展開できているか

 

2.優先課題を決定する

 *SDGsマッピングの手法による課題抽出プロセスの有効性

  視点

:内部統制やISOにおける「リスクマネジメント」と一体化した形となっているか

  :単協でなく、事業連合や日本生協連とのチェーンを想定した検証は不可欠

 

3.目標の設定

 *中長期や前年までの到達点を踏まえた目標設定

  視点

  :具体的な数値目標が示されているか

  :主体的な目標となっているか

 

4.経営へ統合

 *経営目標(事業予算・経費予算など)とSDGs目標の統合

  視点

  :目標を達成するための予算措置(事業数値・経費数値)がされているか

  :目標管理の仕組み(プロセス)が構築されているか

 

5.報告とコミュニケーション

 *SDGs目標の進捗に関するモニタリング・報告のプロセス

  視点

  :目標達成状況を組織内で共有するプロセスがあるか?

  :事業所・部署単位で達成目標の検証がモニタリングされているか?

 

以上の5つのステップを「PDCAサイクルの視点」で深め、SDGs目標への取り組みプロセスを評価することはできないでしょうか。

重要なのは、SDGsを切り口にしたマネジメントシステムの監査という思考だと思います。一つ一つの目標の取り組み状況を評価するのは、CSR推進部署であるべきで、内部監査はその仕組みが有効かを評価する事だと考えます。

 


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