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内部監査の役割を考える(20180320) [6-雑感・いろいろ]

 実地監査に入るとき、監査対象の協力は欠かせません。


 予備調査で監査対象をいかに理解しても、実地監査で必要な帳票が開示されなかったり、ヒアリングの質問に誠実に答えてもらえなければ、満足な監査結果は得られません。


 着任2年目、初めて一人監査体制になった年。いろいろ考えた末に、監査計画をまとめ、個別監査計画や予備調査を行ったにもかかわらず、実地監査では満足のいく結果が出ませんでした。 特に、福祉事業部門では苦労しました。センターや店舗とは比べ物にならないくらい、難解でしたし、管理者の受け止め方も厳しいものでした。監査評価(監査後に監査対象からの評価を貰う)も散々なものでした。

 

 翌年、その理由が判りました。 福祉事業所は、監督行政による「実地指導」を受けます。市役所や県庁の福祉部や介護保険部の指導課による立ち入り調査です。 制度・実施要領に照らして、様々な書類を検証し、不備を洗い出して厳しく指導、是正報告を要求されるものです。言葉は悪いですが、重箱の隅をつついて、小さなミスをほじくり出すような指導ケースもあるようです。 もちろん、まともな実地指導の方が多いはずですが、それでも、管理者は出来るだけぼろを出さないよう、実地指導前日には深夜まで(?)指導準備を行っています。


 この「実地指導」と「内部監査」の違いが正しく理解されていなかった事から、同じように周到な準備をし、必要以外に口を開かない様な頑なな態度を取っていたようでした。指摘事項に関してもかなり抵抗する態度もありました。 これを知って、もしかしたら、センターや店舗でも同じように受け止めているかもしれないと思いました。外部の指導はほとんどないのですが、消防署や保健所の立ち入り調査と同様に思っていたのかもしれません。


 もちろん、内部監査でも、不備や誤謬を発見し、是正・改善要請は行います。その点では、行政による実地指導・立ち入り調査と同じに見えます。


 では、何が違うのか??


 その一つは、監査対象(現場)の「ためになる役に立つ」監査をするということです。

 

 業務時間を割いてもらう以上、監査を受ける側にプラスになる事を作る事が必要でしょう。


 例えば、福祉事業では、行政指導が数年単位で入ります。その時、単純なミスや不備を必要以上に指摘されないよう、内部監査が事前に点検し、是正・改善点を発見しておくことで、行政の評価は向上するはずです。実際、そういう事業所が何カ所か出てきましたし、その成果は、他の福祉事業所へも報告され、内部監査をしっかり受ける事が重要だという認識が広がりました。その結果、近年は、「問題点はないでしょうか?実地指導は大丈夫でしょうか?」そんな質問を受けるようにもなりました。


 また、センターでも、内部監査で施設管理の問題(消防設備の不備等)を指摘し是正したことで、消防署の立ち入り調査で高い評価を得たなどという事もありました。 内部監査の役割は組織を守る事です。それは、法令順守とか行政対応とか、そういう場面でははっきりとした成果が見られると思います。


 もう一つ、監査対象(現場)の「ためになる」監査の例を紹介します。


 宅配事業センターの監査で、供給品の返品処理に苦慮している点が問題としてあがりました。 統一的なルールが存在していない為に、センターごとばらばらに運用され、中には、職員が買い取り現金が金庫内にプールされているケースさえ見つかりました。これは、本来、マネジメントラインで解決すべき問題ですが、センター間で問題が共有されていなかったため、課題にされていませんでした。これを内部監査が指摘し、部門課題として、事業本部へ改善要請を行い、統一ルールが作られ、運用が始まりました。他にも、細かい業務プロセス上の矛盾や無駄を発見して、手順やルールの見直しを提案することで、業務改善につながった事例はいくつも生まれています。


 監査を通じ、現場が抱えている悩みを解決へ導くことができるという認識が広がる中で、センターの対応は大きく変わりました。そのうち、監査前のオープニングの場面で、センター長から悩みを相談したいとの申し出をうけるようになりました。


 内部監査基準では、「アシュアランスとアドバイザリー」機能を発揮して、組織の目標達成に貢献することが本質としています。 おそらく、経営者の視点で言えばそうなのでしょう。


 しかし、監査を受ける立場からはどうでしょう? 忙しい業務の時間を割いて、内部監査に対応する事は大きな負担です。しかし、それ自体は事業数値を伸ばしたり、大きな利益を生み出す作業ではありません。できれば、内部監査を受けたくない(そんな時間を割きたくない)というのが本音ではないでしょうか。


 だからこそ、「監査を受けてよかった。事業所の問題点が発見でき、解決する方法が見つかった」という実感が持てるような監査を組み立てていくことが重要だと考えます。


 しかし、内部監査は万能ではありません。

 発見した問題への解決策をすべて持っているわけではありません。だからこそ、ヒアリングの中で、問題について話し合う事。原因は何か、真因はどこにあるか、是正・改善するにはどうすれば良いか、一緒に考える姿勢こそ重要でしょう。現場にこそ有効な解決策はあるはずですから。


 それでも解決できない問題は、「内部統制上の不備(システム改善)」の課題として、代表理事へ報告し、組織的に検討・解決するよう提言すればよいと考えます。


 内部監査は、現場での是正・改善、システム上の是正・改善を通じて、組織を守る役割、経営に資する役割が果たせるものと考えています。

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