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「組合員活動領域」に関する監査① [5-監査事例]

組合員活動の領域について、皆さんのところではどのような監査がなされているでしょうか?

事業分野の監査はかなり丁寧に行われているにも拘らず、組合員活動や運動分野に関する監査はなかなか難しいというのが実感ではないでしょうか。

私も着任当時には、組合員活動の分野は、内部監査の対象領域外という認識でした。理由は、組合員の活動や、平和や環境などの地域の運動(古い言葉で言えば、大衆運動)の領域は、内部統制システムの外にあり、監査の基準や規程というものが馴染まないと考えていたからです。

特に、私のいた生協は、組織合併に伴い、組合員活動の考え方や歴史的経過の違いを埋めるために、組合員活動のルール・政策整備に向けた話し合いが進められ、難航していて、なかなか考え方やルールの統一が進まない状況にあったのです。

紆余曲折を経て、ようやく、組合員活動の考え方やルールが纏まり、組合員活動領域に対する監査について検討を始めた頃に、別の監査を通じて、問題事象が発見されました。

それは、予算管理に関する監査(経理部・経営管理部対象)のなかで、決算書点検作業中に、「組合員活動費の処理ミス」が発見されたものでした。端的に言えば、年度末決算に際して本来320日で全ての費用を締め、年度支出額を確定するべきところが、組合員活動に関する費用計上が提出期限を過ぎても未提出だったり、計上ミスがあったりして不正確な状態にもかかわらず、判明している範囲で経理部へ報告され、経理処理され決算計上されていたものでした。

原因調査を進めるため、組合員活動支援部における組合員活動費の処理プロセスの点検を、特別監査として実施しました。

その結果、組合員活動を支える事務局では、年度末処理という認識が甘く、組合員から提出されてきた書類(活動報告と費用計算書)を点検しているものの、担当者一人で実施し、集計表を作り、支援部長による提出書類の点検もなく、経理部へ提出するというお粗末な手順で処理していたことが判りました。そのために、未提出があったり計算間違いがあったりしても発見されず、受け取った経理部も点検すべき書類がなく、一覧表の数値を鵜呑みにして計上していたのです。

 

組合員活動そのものは自主的な活動であり、組合員自身が自由な発想で取り組むべきものであり、事務局(職員)による指導や統制を行うものではありません。しかし、そこには法令順守や不正な使用を防止するような一定のルールが存在しており、それをもとに事務局は、監視・点検する必要があります。言い換えれば、事務局機能は内部統制システムの枠の中で、マネジメントされるものだという事です。

そう考えると、組合員活動領域に関しても、事務局を対象とした内部監査が必要といえるわけです。したがって、宅配事業や店舗事業と同様の切り口で、PDCAサイクルの有効性評価を行う事、内部統制構成要素に照らして監査項目を立て、実査を行う事ができると考えました。

 監査項目は大きく分けると以下の通りです。

1.組合員活動(支援部)の計画・方針の確認

2.年度実績(委員会・サークルの登録数や予算申請)

3.事務局における業務分掌、

4.各プロセスの手順と運用の確認

5.業務の監視(モニタリング)状況

6.問題事象の報告と是正・改善状況

 

 第1回目の業務監査(定期監査)を終えた率直な感想として、組合員活動に関わる事務局は、事業分野と比べ、かなり大雑把であるということでした。内部統制システムの認識・考え方が理解されていないのに等しい状況にあるという事でした。

組合員活動に関しては、明確なルールが示されているにも関わらず、当の事務局は、担当者の「勝手な判断」でルールが蔑ろにされているのです。おそらく、これは、事務局(職員)だけの問題ではなく、組合員からの無理難題にも応えざるを得ない関係(露骨に言えば、委員会やサークルの代表に元理事の関与が多く、有無を言わせぬような場面がある)が生まれてきている事にも要因があると考えられます。もちろん、官公庁のような「杓子定規な対応」が良いという事ではありませんが、ルール違反に対してストップをかけるのも事務局の役割であるはずで、その姿勢が貫かれていないわけです。

 この問題について、支援部長とはかなり話し込みました。その上で、改めて、「組合員活動ルールの周知の仕方の見直しと、事務局の役割・あるべき姿の再確認」を重点に改善を図るよう指摘しました。

それまで、「組合員活動の手引き(ルールブック)」を発行し、活動に参加する組合員や総代・地域委員などへ配布していましたが、その取扱いは充分とは言えない実態でした。「配布したので読んで下さい」程度だったわけです。これを改めることが必要でした。改善策として、年度初めに、説明会を地域ごとに開催し、年度初めや期中や期末に提出する書類も明確にし、未提出や記載事項に不備があれば差し戻すようなルールの厳密化を図りました。当然、これまで活動されてきた組合員の方にとっては、抵抗感もあったわけですから、何度も相談せざるを得ないケースもありました。こうしたことを通じて、事務局の役割も強めることに取り組みました。この点に関しては、フォロー監査も実施し、翌年1月段階で次年度の説明会の開催に向けた準備状況や配布する帳票類も点検し、不十分な点を補強するよう改善要請を行いました。結局、支援部内でのPDCAはまだまだ不十分な状態でした。

 

 また、活動費に関する処理の問題を皮切りに、事務局(職員)には、予算管理や会計処理に関する知識が極めて乏しい事も判りました。先の「決算計上ミスの問題」のように、組合員活動支援部には、月次や年度の決算という認識がありません。春に組合員からの登録・予算申請を受けた後は、年度末の報告まで余り関与していない事も判りました。さらに、経理部や経営管理部も、組合員活動分野に関して余り立ち入らない姿勢も見られました。

こうした実態から、内部監査としては、組合員活動費の経理処理や予算管理に関して、経理部・経営管理部・組合員活動支援部の協議の場を持つ事、定期的な報告(月次報告)を行うプロセスを確立することを申し入れました。

私のいた生協は、管理部門と組織運営部門は同じ建屋(本部棟)にいます。日常的に、顔を合わせる環境にあるはずですが、それぞれ、自分たちの業務に追われ、部門間で話し合いを持つ事など皆無に等しい状態でした。特に、管掌役員が違うと、部門を超えた調整会議というのは持ちにくいようです。そこには、内部監査部門が仲介役となって、「風通しを良くする」こともできるのではないかと思います。そのことで、双方の業務が改善され、プロセスが正常化するのであれば、かなりの組織貢献になるのではないでしょうか。


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