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「店舗事業の供給管理」に関する監査 [5-監査事例]

店舗の規模の大小にかかわらず、「売り場」は、店舗職員の業務が直接反映する場所であり、商品管理・品質管理・衛生管理・表示管理等行き届いているか点検する重要な場所です。

店舗の業務監査では、売場の点検は必須です。業務監査の日程・時間が十分に確保できる状況ならば、帳票点検やヒアリングと一つのセットにして取り組むと、良いでしょう。(以前に、店舗点検活動というタイトルでご紹介した内容と重複している部分もありますのでご容赦ください)

 

私の場合、一人監査の限界があり、売り場点検は、別日程で組みました。いわゆる「予備調査」の一つとして組み込んだわけです。当初は、年末供給前に実施していましたが、店舗側にとって、点検結果を有効に活用する為、春(梅雨時期)と秋(年末供給前)の2回、全店舗の売り場点検を行っていました。

これは、隣のG生協の内部監査担当の方が、「品質管理担当」業務として実施していたことを交流会で報告いただき、詳細を教わり、少しアレンジした形で実施しました。

 

具体的には、すべての売り場の温度管理・衛生管理・表示・期限管理などを丁寧に点検します。

棚は必ず全アイテム2品抜き出し、日付と表示を目視し、プライスカードと照合します。特に、日付(期限)については、まさかこんなものが期限切れになどと驚くことがありました。また、一定の売り場範囲で、表示や期限の管理がおろそかになっている事もわかり、結局、人の力に頼って、任せっきりというパターンも多い事もわかりました。一つ一つ不備を発見し是正・補正するのは容易ではありませんが、組合員(来店者)のサービス向上に重要なポイントだと思います。

 

商品分野によっても重点を変化させます。

青果分野では、鮮度維持の視点や産地表示等を徹底的にチェックします。鮮度管理では、温度はもちろん、湿度(水分)保持も重要です。意外に、菌茸類の管理(温度管理)が杜撰でした。また、産地表示では、混在している例もたくさんありました。それと、日付管理。青果部門は「鮮度感」を重視していて、葉物野菜や果菜類、果物という順位でチェックの差があります。見落としがちなのが、「水煮野菜類」でした。長期保存可能という安心感からかチェックが甘く、期限切れも発見されています。

 

水産分野では、温度管理が第一でした。鮮魚類は冷蔵ショーケースで管理できていましたが、塩干類は不適切な温度帯(常温や冷凍)も少なくありませんでした。また、品名表示も独特で、売り場担当者の知識の範囲で名称が付けられていたり、生食・加熱の区分も不明瞭なところがあったり、考えられない事がいくつも発見されました。また、フローズンチルド商品の日付管理・温度帯変更表示なども不備が見られました。また、テナントによる鮮魚コーナー運営のパターンでは、生協内の基準・ルールが理解されておらず、温度記録や表示・陳列はかなり乱暴なところもあり、店長からの指導(要請)への対応姿勢も問題がある事もわかりました。

 

精肉分野では、関連陳列品(タレ・調味料類)の管理が盲点となっているケースが見られました。精肉パック商品は、ほぼ毎日入荷のため、値引き対応など日付管理は否応なしに確実に実施されます。しかし、関連陳列品は、ワンシーズン以上の陳列も少なくなく、結果的に期限切れもありました。

 

畜産加工分野では、表示問題が顕著でした。ハム・ソーセージメーカーは、頻繁に規格や価格変更を行います。外見はほとんど変わらないのに、グラム数が1割少なくなっているとか、肉の産地が変更されているとか、とにかく、プライスカードと現品の不一致が顕著なのです。見方を変えると、消費者を欺くようなパッケージが当たり前という業界なのかと疑いたくなります。そして、その変更が売場まで反映できていないという状態にありました。

 

ドライ商品分野では、回転の悪い商品の期限切れが発見されました。棚の最上段と最下段、調味料類の特殊な商品、飲料(豆乳や産直飲料等)、そして、ビール類の中でも「地ビール系」、製菓材料等はしっかり点検しておく必要があります。また、飲料でも冷蔵ショーケース内の点検も重要です。店舗規模が大きい所では、ショーケースも大型化していて、入れ替え作業で奥まで手が届かない等という実態もありました。菓子類でも「駄菓子コーナー」は要注意です。

 

きりがないので、ここらにしておきますが、こんなふうに、分野特性を理解して売り場を点検する事で、それぞれの分野担当が緊張感をもって業務を遂行しているかを把握することができるわけです。

 

点検の結果は、全て写真に撮り、異常品は現品を撤去して、可能な限り、その場で是正できるようにしました。当初は、担当者からは怪訝な表情で見られていました。しかし、確たる証拠を突きつけていますので、反論の余地はありません。そして、なぜこのようなミスが起きるのかをヒアリングするようにします。

 

こうした結果を、「店舗点検報告書」にまとめ、翌日には店長宛てに報告を送付し、是正改善を要請しました。また、全店実施後には、「店舗点検結果報告書」として冊子化し、店舗事業部長と管掌役員へ送付しました。初めて実施した際には、店舗管掌役員から理不尽なお叱りを受ける事(役員の了解のない点検活動は認められない:暗に内部監査への介入ですが)もありましたが、専務理事報告後には、店舗管掌役員が、店舗事業部長に対して、点検結果をもとにシステム・プロセス改善するようにとの指示を出していました。

 

それ以降、年2回の点検は、店長や売り場担当者にとって、日ごろの業務の評価と是正改善のチャンスという受け止めが広がり、かなり好意的に受け入れていただけるようになりました。

 

ただ、よく考えてみると、「内部監査の点検結果を業務改善に活かす」というのはかなりレベルが低いのではないかと思います。わざわざ内部監査が出向いて点検しなくても、お客様(組合員)の目こそ、最も厳しいはずです。日常的に、お客様の購買状況やご意見をしっかり把握し、常に最善の売り場作りを目指し、日々、是正・改善を進める事こそ、店舗職員のあるべき姿だと思います。店舗によっては、店舗委員会(組合員組織)で、定期的に売場チェック(モニター)しているところもあるはずです。生協ならではの組合員組織との協同によって、売り場をさらに良くする事は出来るはずです。そういう視点こそ、生協らしいと思います。

 

もう一つ、店舗点検を始めてから、生まれた成果があります。

 

私のいた生協もご多聞に漏れず、店舗事業は赤字でした。そのため、リニューアルは計画通りには進んで居らず、冷蔵・冷凍設備やバックヤード・加工場の老朽化が著しい所も見られました。店長としては、売り場・設備の更新リニューアルに取り組み、来店者の増加・供給高増加を進めたいところなのですが、修繕費用が捻出できない、赤字拡大になってしまうために、じっと我慢しているという実態がありました。

 

売場点検を行うと、例えば、冷蔵ショーケースの温度記録を点検すると「異常値」が発見されます。原因を確認すると、外気温が上昇するとパワー不足になるとか、出入口付近の風防室の建付けが悪く外気が吹き込んで温度が上昇するとか、いくつか設備の欠陥に行きつくわけです。

 

もちろん、食品衛生法の観点から適温管理が求められるわけで、こういう事態を点検結果で厳しく指摘したため、店舗事業本部と管財部が動いて、設備点検が大々的に実施され、年次計画化(予算化)まで進みました。こうなると、次は、計画に基づき修繕が予定通り行われているかを監査すれば良く、「設備・施設管理プロセス」のテーマ監査への連動させることができるのです。

 

現場で起きている事が必ずしも経営層(役員)まで届いているとは限りません。むしろ、マイナスな情報はなかなか届かないのが実態ではないでしょうか?それで、現場は苦労しているわけです。

 

内部監査は、経営に資することが最終目標ですが、現場で起きている問題がどうしたら是正改善できるかを、監査対象に指摘事項として提示するだけでなく、事業本部や経営層に報告し、組織的に解決する道筋を見つける事も重要だと考えます。そして、現場の職員にとって、内部監査は「味方」であるべきだと、私は考え、取り組んできました。


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