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「小口現金管理」に関する監査 [5-監査事例]

もうひとつ、宅配センターの監査事例をご紹介しましょう。

 

皆さんの生協でも、「小口現金」の仕組みがあると思います。

名前の通り、小口で現金支払いが必要なケースへ対応するための仕組みです。

昔、この「小口現金」の管理に関わっては、管理者や事務担当者による不正使用の事件が発生しており、管理ルールは厳しく、取り扱う金額もより少なくしてきました。また、月1回の棚卸の際には、出納記録と現金精査の結果報告が定式化され、四半期に1回は、内部統制委員会による点検も実施されるようになりました。これにより、事件性のある様な不審な事案は防止できているはずです。

 

内部監査でも、内部統制委員会の定期点検が有効なものとなっているかを監査する為、現場監査では、小口現金管理も確認しています。

 

小口現金管理に関する領域は「事務管理業務」という区分にまとめ、主要な項目は以下の通りです。

 

1)

●規程・基準・手順
「経理規則」「小口現金管理規程」「請求書取扱基準」「領収書取扱基準」「自家消費処理手順」等の経理事務に関する規程・基準・手順は正しく理解されているか?

2)

●リスク評価
・経理処理(現金管理)に関する部署のリスクを認識しているか?(不正リスク-他の生協で重大事件発生)

3)

●管理体制と教育・訓練
・出納管理者・出納責任者(実務)は明確になっているか?
・経理事務を担う担当(職員・パート)へ、経理事務の教育訓練は行っているか?

4)

●運用(1)-小口現金管理・出納管理・金庫内管理
・小口現金管理規程に基づき、出納記録や現金精査は適切に行われているか?
・金庫内に、簿外となるような現金や現金同等物はないか?
・組合員への支払現金の受け渡し記録(領収書)は確実か?

5)

●運用(2)-備品購入・申請決裁・経費支払・自家消費
・消耗品や備品購入にあたって、確認・決済は行われているか?
・申請書(交通費も含む)は上長が確実に点検・承認しているか?
・自家消費(生協内購入)はルールに沿って処理しているか?

6)

●運用(3-未収金回収・請求事務・現金入金
・未収金の記録と管理はできているか?(個人記録化)
・出資金や利用料金などの現金入金は確実に管理できているか?
・領収書は「領収書取扱基準」に沿って適切に発行されているか?

7)

●監視・モニタリング
・経理事務が適切に運用されている事を定期的に監視しているか?(点検体制・報告等のルール)

8)

●不適合管理
・経理事務に関するミスや不整合を発見した場合や経理部から指摘があった場合、上長及び経理部長へ速やかに報告しているか?(報告書確認)

9)

●是正・改善:違反・問題発生後の是正・再発防止策の有効性
*報告書記載の「是正・改善」に具体性と有効性があるか?報告書に基づき適切に実施されているか?

10)

IT対応
*「経理DB」の活用はできているか?

 

この監査によって、現場の運用で問題が発見されました。

 

一つは、前述の「商品管理」でも触れたように、金庫内に小口現金とは別の「現金」が発見されたのです。いわゆる「簿外管理」とされている現金です。

 

商品の内販により発生した現金で、それ自体は副センター長が管理していましたが、その額が適切なものか証明する記録はありませんでした。ですから、「ちょっと借用」や「着服」もできます。正しく管理するにはどうすれば良いか、元はと言えば「商品の内販」自体が問題もあるのですが、少なくとも、「商品供給」をした場合は即日入金すべきですし、簿外化することに問題を感じる事が当然だといえるものです。

これはすぐに是正され、経理部からも「金庫内に簿外となる現金の保管を禁止する」という通達もだされました。しかし、残念なのは、内部統制委員会の定期点検で発見されているにも拘らず、点検者(内部統制委員:執行役員)が見逃していることでした。内部統制委員会による点検の有効性が疑われましたので、この点は、内部統制委員会へ報告し、点検項目と基準の再確認を行うよう要請しました。

 

もう一つは、出納記録の不備の発見です。

 

小口現金管理規程では、出納実務は、実務管理者と実務執行者を分けて配置する事とされていますが、あるセンターでは、事務パートの不足から副センター長が実務も点検も一人で行っており、出納事務を週に一度まとめて行うようになっていたのです。支払申請もかなりの数に上り、時間が掛かるようになるため、記録が後回しになり、現金出勤だけが先行するというような悪い習慣を産んだのです。点検者が居ませんから、問題を指摘する人もなく、監査当日には、現金が不整合となってしまいました。また、センター長はこの実態を把握できていませんでした。

管理体制の不備(監視・点検)が生んだ問題です。この問題は、不正発生の一歩手前ともいえるものです。この問題は、経理部へも報告しました。

管理の仕組みとして、小口現金の出納記録は経理部へは月に1回(締め日)提出となっていました。ですから、「面倒だからまとめてやればいい」というような運用が生まれたのだと考えられました。経理部としても、月次の締めで不整合がなければ良いわけですから、問題は表面化しません。

改めて、各事業所の「小口現金管理体制」を確認し、出納管理者と出納実務者の登録確認が行われ、経理部での点検(支払い記録の点検)も強化されました。しかし、膨大な点検作業で人員確保も難しい現実があり、システム導入の検討へと進みました。現在使用している経理管理システムの中で、小口現金管理(事業所による直接入力と経理部による点検)の仕組みを構築し、煩雑な作業の合理化へ進むことになりました。これで問題がすべて解決するわけではありませんが、少なくともヒューマンエラーや不正防止へと一歩進むと思われました。

 

現場では、人員不足が顕著です。ルールはあっても、それを支えるマンパワーが不足すれば、「手抜き」作業が生まれます。事務や経理という部分がそのしわ寄せを受けるケースは多く、結果としてミスが発生し対策でまた業務が増えるという悪循環が発生し、現場は苦しんでいるのです。

 

 だからこそ、内部監査が問題を発見し、その真因に迫り、現場が楽になるよう、経営者・管理部門へより具体的な提案を行う事が必要ではないでしょうか。

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