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価値のある「監査報告書」のために②(20180424) [3-内部監査参考情報]

 

続いて、内部監査報告書をパーツに分けて見てみましょう。

 

最初は、「総合所見」です。

 

l  監査報告書(エグゼクティブサマリー)の「総合所見」は、対象期間内の全ての監査を総括した意見ですので、一つずつの個別監査所見を読み込み、代表理事にアピールしたいポイントに絞ることが重要です。

 

l  構成は、3段階が望ましいでしょう。

 ①推奨すべき事項

  ・他の模範となる事象・取り組み、成果―水平展開が望ましいと考える事。

 

 ②留意すべき事項

  ・監査を通じて問題と考えた事。あとの「内部統制上の不備事項」と関連して。

 

 ③今後の期待

  ・さらなる改善により経営貢献が期待できると推察されたこと。

 

l  所見の結語は「消極的アシュアランス」(監査した範囲においての保証)を表明すること。その後、内部統制上の不備事項(改善提案)へつなげていくことになります。

 

≪記述例≫

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ○○年度に(あるいは、●月●日から●月○日に)実施した監査を通じて、以下のような所見を得ましたので報告します。

 

1.推奨すべき事項

 ●●事業では、○○が実施され、大幅に予算達成していました。また、○○の取り組みが始まり、・・・

 ○○のテーマ監査で、○○の管理は、○○のプロセスで監視の手順が改善され、有効性が高まっていました。

 

2.留意すべき事項

 ○○事業の○○の運用において、複数の事業所で不備が発見されており、運用改善が必要と判断しました。

 ○○事業で、○○の取り組みが予定通り進んでおらず、○○の問題が懸念されます。計画の見直し、あるいは、目標の再設定が必要と考えます。

 ○○管理では、○○規定が改定されておらず、○○のリスクが高くなっています。早急に、規程の整備が必要と考えます。

 

3.今後の期待

 ○○システムの○○プロセスに関して、手順の改善に取り組むことで、作業の合理化ができ、一層、○○の効果が期待されます。・・・

 

 監査した範囲において、事業損失に直結する重大な誤謬や不正は発見されませんでしたが、内部統制上改善が必要な事項がありますので、以下に項目を記します。なお、後段「4.内部統制上の不備事項」で詳細を記します。

 

 1.○○事業の○○管理の改善に関する事項

 2.○○事業の○○の管理に関する事項

 3.○○の○○規定の整備に関する事項

 4.・・・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

※代表理事が、総合所見だけを読まれても重要事項が伝わるように記載することに注力する事が大事です。

 

〇なぜ「消極的アシュアランス」なのか?

 

 内部監査には「アシュアランス(保証)」機能があります。

 平たく言えば、監査の結果、内部統制が有効であるという評価(保証)を行う事です。会計士監査が「決算書は適正に作成されている」と保証するのと同様に、ガバナンス、リスク・マネジメント・コントロールが適切に構築され、運用できている事を保証するものです。

 

 内部監査における「アシュアランス」については、藤井範明先生著「内部監査報告書の指摘事項と改善提案」(2部内部監査体制と監査計画グランドデザイン・第4章」に詳しく理論的に説明されていますので、一読されると良いと思います。

 

 私の理解としては、J-SOXの内部統制評価に求められる「合否判定」・「段階評価」を求めるものが「積極的アシュアランス」であり、それには、会計士監査の様な、相当な作業負担と高度な監査スキルが必要であるとともに、IPPFにある「アシュランスマップ」等を用いた総合的で多層な監査実施計画による「監査リスク」の低減が図られるものである必要があると考えます。

 しかし、組織体がそれを求めているかどうか、内部統制の成熟度合いを考えると、果たしてそこまでの「積極的アシュアランス」を内部監査が果たす必要があるとも思えません。

 むしろ、実施した監査内容を整理し、問題点を列記し、改善提案を行った上で、監査した範囲内においての評価を行う「消極的アシュアランス」で充分ではないかと考えます。実際、監査対象全てを細部にわたって業務監査する事は事実上無理ですし、見ていないところまで「大丈夫」と保証することはできません。監査した範囲において、内部統制は機能している事、そして、問題点や改善点がある事を経営者(代表理事)へ提言する、「コンサルティング(アドバイザリー)」機能の方が、より経営に貢献できると思います。


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