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「組合員活動領域」に関する監査② [5-監査事例]

組合員活動に関する監査事例の続きです。

 

2年目の監査では、また、新たな問題が発見されました。

一つは、サークル活動の中で講師を招いて学習会を開催した際、「講師料の支払い」に関して不適切な処理がされていたものです。講師料に関しては、所得税法上「源泉処理(支払い側の納税処理)」が必要です。生協内部で行う講演会などの講師の場合は、機関運営部から経理部を介して、源泉処理が行われていましたが、組合員活動(今回はサークル活動の中)では、そうしたルールは理解されておらず、未処理のままだったのです。組合員活動といえども、経理上は生協からの支出には変わりありません。法令違反の状態にあると言ってもいいものでした。

この問題の本質は、こうした「講師を招く」活動は、広く組合員活動・サークル活動では見られるにもかかわらず、講師料の取り扱いに関して、組合員活動支援部に知識がなく、組合員活動のルールブックに適切な記載がなかったことでした。改めて、講師料の取り扱いに関して、ルールと書式を定める様、是正指摘を行いました。申請の仕方も含めて、翌年度にはかなり改善が見られました。

 

もう一つは、生協施設(組合員ホール)を使用した「講演会」の開催で、有料(チケット販売)とし、さらに、芸能プロモーターを介して「芸人」の手配などを行っているものでした。これは、組合員活動といっても立派な「興行」とみなされるものでした。さらに、その「芸人」への出演料支払いも、簡易的な「領収書」1枚だけというお粗末極まりないものだったのです。

さらに、この取り組みに関して、生協主催という表記がポスターやチラシにも記載されているのです。もちろん、理事会主催ではありませんし、承認も受けていませんでした。地域の組合員委員会の主催なのですが、こうした取り組みに関して、事務局側も関知しておらず、結果報告で初めて判ったというお粗末なものでした。危惧したのは、こうした事例はこれだけではないのではないかという事でした。過去にも行っているはずですし、年度の活動計画(組合員の委員会やサークルから提出)にその記載はあるはずですので、しっかりと計画書に目を通しておけば、事前に相談・調整できたはずです。

組合員の自主的な活動を事務局が誘導したり統制したりすることは、間違っていると思いますが、法令順守(この場合、興行としての手続きの瑕疵や所得税法・源泉処理への対応)のチェックや、ポスター・チラシなどの事前点検(誤謬防止・名称などの不正使用防止など)、そして、収益事業そのものが組合員活動のルールでは認められていないという事の認識作りといった、活動・運動の在り方については事務局からの支援・点検が入るべきだと思います。

そのために、年次で活動計画書や予算書を組合員から提出いただいているはずですし、不備があれば確認する事は事務局として当然の作業だと思います。

 

こうした問題が発生する真因として、事務局の育成が脆弱になっているという点を加えておきたいと思います。

私のいた生協は、合併により「県行政区全域」が活動エリアになりました。数十万人の組合員組織が県内の広いエリアで活動を展開します。20年位前までは、一つの配送センターや店舗が地域の拠点(組合員の集う場所)になっていて、センター長や店長、地域担当が組合員と一体となって活動を進めていました。この段階では、事務局(センター長や店長・地域担当)が組合員活動を把握でき、ちょっとした相談事もリアルタイムで行い、組合員との距離感も近かったため、大きな問題に発展することも少なかったはずです。(もちろん、この頃は、今と違って、配達が終わってから夜の時間で組合員へ訪問して相談したり、休日も活動参加と称して動いていたわけですから、労務管理面ではかなり問題もありましたが・・。)

しかし、今の時点では、分業化が進み、宅配センターや店舗は事業活動に特化し、組合員活動に関与する職員はかなり限定的になっています。私のいた生協で言えば、組合員活動支援部とブロック運営部(県内をいくつかのブロックに分割して運営する仕組み)の職員が主になっていて、若い担当者は日常的には余り組合員活動には接することがなくなっています。

こうなると、組合員活動や地域の活動に対する見識や経験を持つ職員は育ちにくくなります。支援部に配属されて初めて、組合員活動の支援業務を行うことになり、長年活動をしている組合員から見れば「頼りない事務局」という事になるわけです。だからといって、事務局になった職員が、特別な教育訓練を受ける機会はどうでしょうか?少なくとも、私のいた生協では、そうした事務局としての教育訓練制度や仕組みはありませんでした。先に述べたような、問題が発生しても、何が問題なのかすら判らないというレベルにとどまっているわけです。

ちょっと古臭いかもしれませんが、生協は「事業と運動の両輪」で発展すべきものだと若い頃に教えられてきました。また、当時の事業も、単なく供給事業(販売事業)ではなく、生活物資の共同購入運動だとも言われていた時代もあったわけです。若い世代の職員に、こうした生協運動論が通じるのかどうか、少し不安なところはありますが、だからこそ、将来に向けて、必要な知識と経験を積むことを組織として制度化・整備していくことが重要だと思います。

 

ちょっと脇道にそれたようですが、組合員活動領域における監査では、組合員活動を支える事務局業務の監査が対象領域であると考え、PDCAサイクルを持ったマネジメントがされているかを中心に監査をする事は有効だと考えます。

そして、組合員活動領域だからこそ、「法令順守」「経理処理」「内部規程に沿った処理」など、事業と同じレベルで事務局機能がなされているかを厳しく見る事が重要です。事務局が誤った判断をし、トラブルや不備を起こした場合、直接的な迷惑をこうむるのは組合員です。そしてそれは、当然、生協職員・組織への不信へと発展しかねません。

組合員に信頼される組織であることは、「経営に資する」ための最も重要はファクターです。という事は、組合員活動領域の監査は、事業部門監査以上に、重要なものであるといえるわけです。


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