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研修会から思う事(虐待事例検討会にて) [6-雑感・いろいろ]

先日、「虐待事例」に関する研修会がありました。
詳細は出せませんが、虐待事例をもとに様々な視点で、考えようというものです。
原因や背景、対策について意見を交わしました。
その中でふと、内部監査を行っていた頃、何か似たような議論をしたような気になりました。他の人の意見を聞きながら、デジャブのような感覚が頭から離れなくなっていました。

そこで、ふと思いだしたのです。

例えば、福祉事業の場面で「虐待」を話題にする時、それは、起きてはならない事件・犯罪という出発点にあるという事なんですね。ですから、大きく言えば、業務中の不祥事・不正に間違いないわけです。

「不正」と言えば、内部監査部門に居る人なら確実に、例のトライアングルを思い浮かべるでしょう。

「動機」・「機会」・「正当性」の3条件が揃った時、不正発生の確率が高くなる。

虐待事案も、極めてその構図に近いのです。(福祉現場では、虐待を語る時、6層の欲求という考え方をしているようです。虐待は最下層にある「生理的欲求」が生み出すという事らしい。・・)

施設内で、障がい者(高齢施設なら入所高齢者)に対して虐待をしている状況は、圧倒的に「1対1」という状況。監視の目が届かない環境にあると聞きました。

そう、虐待の「機会」を作ってしまっている。

そして、その場面を見ると、虐待を受ける相手は日常的に問題行動を起こしていて、職員の大きなストレスになっているケースです。そう、「動機」を産みやすい人が対象となってしまう。

更に、「しつけ」とか「教育」とか「防衛」とかの言葉で、虐待を正当化する環境にあるのです。
見事に3条件が揃っていて、虐待が生まれてもおかしくないと客観的に捉えることができるわけです。
だからこそ、組織は、職員教育に力を入れるわけですが、その内容はどうでしょうか?

以前、不正に関する記述をしたことがありますが、もちろん、不正の大半は個人が起こすものです。おのず、教育では倫理面に力を入れることになり、一人一人の自覚を促す内容になりがちです。でも、それは、結局、不正防止を個人にゆだねている事であり、根本的に再発防止とはなりえません。
では、どういう教育が良いのか。
まず、不正(虐待行為)の3条件が揃っていないか、職場の環境を丁寧にチェックする事。構成員自ら、日常業務の中で、虐待を生み出しやすい状況を洗い出し、それを回避する策を考えることが近道だと思います。
ここでもやはり、リスクマネジメントの考え方が重要です。発生リスクの大きいものから一つづつ潰していく。

例えば、1対1になりやすい環境(トイレ介助・深夜帯の介護)を無くす対策。

日頃から職員にとってストレスになりがちな利用者を洗い出し、重点的に介護・介助の方法を統一しマニュアル化し訓練する。

「しつけ」「教育」「指導」等正当化する言葉を使用しない。

そして、これらのことが適切に運用されているか、管理者およびリスクマネジャーが監視・点検し、改善策を作る(PDCAサイクル)という仕組みを構築する事・・など。

ざっと考えてみても、これだけのプロセスがあります。

残念ながら、今回、私の職場ではそこまでの話し合いにはなりませんでした。旧来通り、一人一人が感想や意見を出し合い、ホワイトボードに意見をまとめ、整理するところで終わっています。

本当に、組織内から虐待を排除したいと考えているなら、より効率的効果的な研修方法を、管理者の皆さんは真剣に考えるべきです。


最後にひとつ。

こうした虐待事案が生まれると、その職場は委縮し、モチベーションは低下し、介護の質の低下へ繋がります。
そして、当該職員は、厳しい目に晒され、いずれは、退職を余儀なくされます。

それが教育を十分に受けていない若い職員なら、将来にわたって、福祉職から遠ざかることになり、人材不足に繋がるのです。

それを生み出したのは、そこにいる職員ではありません。ましてや、利用者ではありません。
そうした不正を生み出す環境を作ってしまった組織であり、経営者・管理者なのです。

そういう自覚を持ち、マネジメントにもっと力を入れて行ってもらいたいものだと思います。

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