SDGsと内部監査③ [3-内部監査参考情報]
少し、具体的にイメージしていきましょう。
1)監査計画
l 監査名:SDGsに関する経営監査(テーマ監査)
l 監査目的
当生協における「SDGsの取り組み」に関するマネジメントシステム(内部統制)の有効性を評価し、CSR向上及びSDGs目標へのさらなる貢献を図るための提案を行い、経営に資することを目的とする。
l 監査対象:CSR推進部(機関運営部・経営管理部・・)
l 予備調査(例)
Ø SDGsの理解度(周知度)調査―組織内アンケートの実施
Ø 事業所・部署責任者を対象としたSDGs目標進捗調査(業務監査を含む)
Ø 前年度CSR報告書の検証―掲載内容の検証(関連部署の実地調査)
Ø 今年度の目標進捗状況(書面監査)-中間まとめ
l 手続き
Ø 予備調査結果の分析から導き出される実態整理
Ø CSR推進部ヒアリング
l ワークシート(例)
IC視点 |
監査項目 |
確認すべき内容・証憑 |
統制環境 |
lSDGsの意義や重要性について理論的に展開され、組織内への周知が進んでいるか? (Compass:1-SDGsを理解) |
*中長期計画や年度方針・ビジョンなどへの提示 *トップ(理事会)のコミットメント |
リスク対応 |
lSDGs17目標を考慮したリスクマネジメントプロセスとなっているか?(プロセス評価) (Compass:2-優先課題を決定) |
*リスクアセスメントプロセス (事業連合や日生協までのバリューチェーンでのリスク評価プロセスかどうか) |
統制活動 |
l 方針・計画で、SDGs目標が明示されているか?(経営目標と一体化されたものか) (Compass:3-目標の設定) l 17目標と関連する活動や業務(運用プロセス)は明確になっているか? l 個々の活動や業務における目標(数値や到達点)は明確にされているか? l 必要な人材やインフラが確保できるよう予算組みできているか? l 個々の活動や業務は滞りなく運用されているか? (Compass:4-経営への統合) |
*年度方針・計画の重点課題とSDGsの検証
*業務監査結果(予備調査対象領域)
*目標・個々の活動・業務の進捗確認
*予算書・決算書の分析―予算との乖離点発見 |
情報と伝達 |
lSDGs目標の進捗管理をする機関会議はあるか? l機関会議からの情報伝達はされているか? l「CSR報告書」は正確に作成され、組織内で討議されたものとなっているか? (Compass:5-報告とコミュニケーション) |
*CSR推進体制の検証 ―主管と連携・運用部署が明示- *CSR報告書の検証(作成プロセス重視) |
監視活動 |
l組織全体の進捗管理(モニタリング)を行う部署は明確になっていて、機能しているか? lモニタリング結果は有効か? l計画の見直しなどに取り組んでいるか?(改善) (Compass:5-報告とコミュニケーション) |
*管理部署=監査対象部署の運用状況(体制・日常管理・関連部署との連携) *モニタリング報告書の検証 |
l 監査結果
Ø 監査結果は、監査報告書に取りまとめ、経営トップ並びに監事へ報告する。
いかがでしょうか?
少し監査計画書の形で表してみましたが、なかなか大変な監査になりそうですね。
SDGsだけを取り出して監査する事は、かなり大きな労力がかかるわりには、監査の成果物(指摘や改善提案)はあまり期待できないとも言えます。
トップが、「SDGsへの取り組みを強化したいが、どのように進めるべきか考えたい。」とか、「CSRに関する改善課題はないか?」等というような、懸念を持たれている状況にあれば、この監査は極めて有意義なものになると言えます。言い換えると、経営トップの関心度に大きく左右されるテーマであるという事です。
ただ、トップの認識の如何に拘わらず、これからは、SDGsがCSRの中で最も重要なインパクトになるのは確かです。同時に、Compassで示されているように「経営目標とSDGsが統合された状態(経営目標を立てる場合、17の目標達成の視点で整合性のある経営目標を持つ事)」になれば、内部統制の4つの目的(コンプライアンス・業務の有効性合理性・決算の正確性・資産保全)にもう一つ、「SDGsへの貢献」が加えて構築することになるはずですから、内部統制のモニタリング機能としての内部監査の役割から見ても、避けて通れない領域になることは間違いありません。
初めは、大きな成果を期待せず、予備調査を通じて、組織内のSDGs認識の向上に貢献するところから着手することになるでしょう。そして、目標管理・マネジメントシステム・プロセス管理といった視点からアプローチする事で、より高い目標達成力を持つことになるはずです。その段階で初めて、「経営に資する監査」に到達することができると思いますし、長期的視点(内部監査の中長期計画)を持って臨むことが肝要だと思います。
蛇足になりますが、初めに述べたように、SDGs17目標は、協同組合セクターが先駆けて取り組んできたものに他ならず、先進的な取り組み事例もたくさんあるはずです。私のいた生協でも、数多くの成果やや水平展開すべき事例はあるはずなのですが、残念ながら、PDCAサイクルを持ったマネジメントシステム構築が進んでいなかったり、特定の職員の能力に依存したため継続的取り組みになっていなかったりして、長く取り組んでいるものの、広く行政や市民の参加といった大きな成果につながっていない実態もあります。
内部監査がこの領域にも監査を広げ、内部統制・マネジメントの視点で「目標達成」のシステムを構築することへ貢献することは極めて重要だと改めて感じています。
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