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内部統制とISOの内部監査① [3-内部監査参考情報]

ISO規格(品質・環境)の認証を取得している生協では、ISO19011(マネジメントシステム監査の指針)に沿って、内部監査を実施しているところが多いと思います。

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●ISO規格では、内部監査を以下のように定義しています。

監査基準が満たされている程度を判定する為に、監査証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で独立し、文書化されたプロセスである。

そして、その結果を通じ、規格への適合性と有効性の向上に貢献することを目的としている。

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ISO監査は、マネジメントシステムが規格(品質・環境等)基準を満たしているかどうかを判定する(適合性)ことと、マネジメントシステムが規格の目標(品質向上・環境への貢献等)達成のために有効に働いているかを確認する事に重点を置いているという事です。

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一方、内部監査基準(内部監査協会)では、「組織体の経営目標の効果的な達成に役立つこと」を目的として、「合法性と合理性の観点から公正かつ独立の立場」で、「経営諸活動の遂行状況を評価」し、「助言・勧告を行うアシュアランス業務」、および「経営諸活動の支援を行うアドバイザリー業務」であるとしていました。

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いかがでしょうか?

監査の目的、監査の基準、監査対象領域、監査の機能(評価+助言勧告+支援)など、大きく異なるものであることがお判りいただけるでしょうか?

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もちろん、業務の品質の向上・改善や、環境保全への貢献は、組織にとって重要なテーマですし、今日的には、社会的にも強く求められるものです。その点において、ISO規格を取得し、効果的に運用する事を否定するものではありません。事実、私のいた生協では、「ISOに基づくマネジメントシステムを全ての業務管理の基本に据える」と経営トップが宣言し、かなりの費用と時間をかけて取り組んでいました。私自身も、MS内部監査の主任監査員として、監査の進捗管理を行っていました。そのために、外部研修に、幾度も参加し、その都度、内部監査基準との矛盾点に悩みながら、なんとか進めてきました。

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私の知る限り、全国の生協の中でもISO規格に基づく内部監査を主体にされているところが、関東・関西・九州等であるとようですし、日本生協連でも、ISO監査を組織的に展開されていると承知しております。

私のいた生協では、当初、「MS内部監査事務局」が置かれていて、「MS推進事務局」と密接に連携を取り、MSの構築と運用、そして監視(監査)が一体のものとして取り組まれていました。

私自身も、MS内部監査員の一人として部分的に関わっていましたが、実態としては、少し残念なものと言わざるを得ませんでした。

その一つが、監査の方法でした。

規格への適合性判定のために、網羅性を重視した「規格項番対応型のチェックシート」を用い、「〇[×]評価」を行う形で、監査の結果、[×]評価項目は指摘事項となり、是正・改善要求に基づき改善を進めるというものでした。真因追及や改善提案へつなげるようなディスカッションは少なく、「浅い監査」と言わざるを得ない状態でした。

ただ、これは、ISOの問題ではなく、MS監査事務局の力量の無さ、規格の理解不足、監査員の育成・研修の不十分さによるものだと思います。

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また、そうなる真因の一つは「ISO監査(19011規格)」自体にもあります。

極論になりますが、監査の目的を「ISO規格への適合性を目的にしているため」としているからなのです。運用しているマネジメントシステムが、規格要求事項を満たしているかを判定するためには、網羅性重視の監査手法が要求されます。そして、判定のためには、評価基準を設ける必要があります。いわば、監査の深度は期待せず。できるだけ広範囲に、システムの運用と構築が妥当かどうかをはっきりさせることに力点が置かれてしまうためだと言えるのです。

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また、もう一つの原因には、外部審査機関の問題があると思います。

私のいた生協が受けた認証機関による審査では、内部監査がどのようなチェックシートを用いているか、それは、網羅性が高く、客観性が確保された基準を持っているか、規格項番を適切に示すことができているかといった点を重視した評価をしていました。審査員の中には、指摘事項に対して、規格項番の選定に問題がある様な評価をされる方もいますし、システム全体より細部における文書整備に力点を置いた審査講評を述べる方もいました。結果として、認証を得るために、認証機関の要求に応えることに注力され、システムの改善や有効な運用は二の次になりがちでした。

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本来、重要なのは「ISO認証を取る」事ではなく、有効なマネジメントシステムを構築し、業務品質の向上や環境保全への貢献を高める組織・運営管理体制を作ることだったはずです。

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当時、前任者から引き継いだ際には、内部監査員は全体で30名を超えており、2名チームで、年間通じて、30カ所程度の監査を実施し、会議も年間5回以上開催していました。

また、内部監査員育成のために、高い費用をかけて、外部講師を招き、2日間の研修を実施しながら、研修レポートを見ると、内容が全く理解できていない実態にありました。

監査の成果物の質は当然低く、「重箱の隅をつつくような指摘事項」と「とってつけたような是正」「再発防止策の有効性がない改善策」が羅列されているにも拘らず、監査報告書では「規格への適合性と有効性は確認された」という監査所見が堂々と報告されるものでした。

内部監査員本人たちさえ、形式的で表面的な監査にうんざりしているのは明らかでした。

認証を得るために、次々に文書が作られ、日常マネジメントとは遊離したような運用ルール(マニュアル)が出来上がり、表面的なチェックに基づく監査に労力を使う事になってしまっていました。

これは、最も誤った方向ではないかと思います。

もし、皆さんの生協でも、同様の傾向が見られるのであれば、内部監査として、ISOの間違った運用による無駄なコストと労力をかけていることをトップに強く進言してください。

くれぐれも誤解のないようにしていただきたいのですが、私は、ISO規格とそれに基づく監査を否定するものではありません。

ISO規格は、マネジメントの考え方としては非常に優れています。ただ、「認証」という仕組みが、ISOが意図した運用を歪めてしまっているという事なのです。極論を言えば、外部認証機関の力量不足が招いた問題だという事です。

規格が求めるマネジメントシステムを構築し、適切に監査することで、品質と環境の領域の改善・向上は確実になるはずなのです。しかし、それを正しく深く理解するにはかなりの努力が必要です。


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