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有効な監査指摘と改善提案③(20180405) [5-監査事例]

もう一つ、監査指摘事例を取り上げてみましょう。

店舗業務監査のケースです。
新店開設からちょうど1年を経過した、売り場面積350坪程度の中規模店舗です。

現場点検作業で、店内を回ったところ、店内とバックヤードに6カ所の消火栓が設置されていました。うち3か所(売り場)で、消火栓の前に商品ゴンドラが置かれおり、すぐに使用できない状態でした。
該当箇所の売り場担当に確認したところ、「消火栓で売り場が切れてしまっているため、商品ゴンドラを置いている。消火栓を使うことはなく、使用方法も知らないので問題ないと思っている。」との返答を得ました。

店内配置図を見ると、12カ所に「粉末消火器」が設置されているはずですが、カウンター周辺の3か所で見当たらず、青果加工場に4本がまとめておかれているのが判りました。
青果担当に確認したところ、「先月、カウンターの配置変更を行った時、消火器の置き場がなくなり、まとめて置いていても問題ないと店長から指示があった」との回答を得ました。

これらの点を踏まえ、店長ヒアリングを行ったところ、「開設当初、消防署の検査を受け合格していた。その後、売り場の手直しを行った時、不都合な部分はあるのは認識しているが、日常的に問題ないと考えていた。」との回答を得た。

追加質問で、店舗の消防計画を確認したところ、年2回(春と秋)に消防訓練(通報・避難・消火)を行う事としているが、これまで一度も実施していないことが判った。
実施に関して所管する総務部からの指導を確認したが、店長からは「これまで一度も問い合わせもなかった」との回答を得た。
改めて、防火管理についてリスク認識を確認したところ、「消防訓練は必要だとは思っているが、営業時間内の実施は、混乱の不安もあり、具体化できてない。火元の不安がある、惣菜加工場やベーカリーには消火器も設置しており、売場が火元の火災の心配はないと思っている。」との返答があった。

このケースでが、何を問題とすべきなのでしょうか?
もちろん、消防法への不適合は明らかです。現状で、消防署の立ち入り検査があれば、是正指導がなされるはずです。したがって、法令違反(指摘指導)の状態は速やかに是正する必要はあります。
では、「消火栓・消火器の適正使用状態の確保」を指摘し、是正要求すれば済む問題でしょうか?
また、「早急な消防訓練の実施」を要求すれば済む問題でしょうか?

防火管理規程(内部規程)では、事業所管理者が、防火管理者であり、全ての責任を負っています。それぞれの部門(バックヤードや加工場)には、火元責任者を置き、防火に関する教育訓練を日常に実施する事、防火意識を高める事などが求められています。
この店長は、火災に対するリスク認識が極めて甘いと判断されます。まず、その点を問題とすべきでしょう。来店者の安全確保を最優先とした、早期通報・避難誘導と初期消火を全ての従業員が混乱なく実施できるようにすることは容易な事ではありません。まず、そのリスク認識についてじっくりヒアリング(ディスカッション)で深めていく必要があります。

その上で、何が重要なのかを整理して指摘する事が必要です。

〇基準
・消防法(適用)・防火管理規程
〇発見した問題
・売り場内の消火栓(3か所)で商品ゴンドラのために使用が難しい状態にあった。また、カウンター周辺の消火器が適切に配置されていなかった。いずれも消防法に定められた、防火設備要件を満たしていないと判断された。
・年2回実施が義務付けられている「消防訓練」が開設以来一度も実施されていなかった。
・該当箇所の担当者へのヒアリングで、消火器や消火栓・防火管理の意識が低く、現状では火災発生時に対応できないと判断された。
・店長の危機管理意識も低く、また、法令順守の意識も低いと判断された。
   (かなり厳しい表現です)
〇想定されるリスク
・火災による被害発生リスク・法令違反リスク
〇改善提案
・まず、店長自ら、消防法及び防火管理規程に定められた内容を把握し、現状の問題点を整理して下さい。
・その上で、消防訓練を早急に実施し、実施報告を所管する消防署へ提出してください。
・また、消火設備の適正化を行ない、定期的に点検する仕組み(実施サイクル・実施者・実施記録)を作って下さい。

これが個別監査所見書での指摘事項となるでしょう。
しかし、この問題は根が深いと考えます。
店長が回答したように、「営業時間内の訓練実施の不安」は十分理解できます。ただ、他の同規模店舗では営業時間内でも実施している事例はあります。おそらく、そういた実例を共有できていれば、すぐにも着手できたはずです。
また、開設以降、消防訓練が未実施でも、所管する総務部からの問い合わせさえなかった事も大きな問題です。消防法対応はもちろん現場管理者の責務ですが、全体を統括するための管理部門(総務部)が機能を果たしていないことも問う必要があります。「消防訓練」の実例共有も、管理する部署からの情報提供や指導が速やかに行われていれば問題なかったはずです。
したがって、代表理事への報告では、生協組織全体として、防火管理体制が機能していない問題を挙げておく必要があります。所管する総務部の課題であり、内部統制委員会の検討課題にもなるはずです。

結局、現場へ丸投げになっていると、業務優先になりがちで、法令違反や対策不備が生じやすくなり、組織全体としての重大なリスクが高まることに繋がります。この点を経営陣にしっかり理解いただき、必要な指示を出してもらう事が重要でしょう。

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